「安藤サクラの人間力と2回目の観賞」BAD LANDS バッド・ランズ ユウさんの映画レビュー(感想・評価)
安藤サクラの人間力と2回目の観賞
一度見たラストはカッコいいと唸ってしまってこの監督の邦画のダサさがない
とことか宇崎竜童にしびれたとか
金髪の山田優かと思ったら
お初にお目にかかります。
サリングロックさんに惚れてしまったり
ストーリーも見せ場も山田涼介が男を見せるのも全て良かった
あとからじわじわきたのが生瀬さん
普段あんなに面白いのに
冷酷な悪人オーラを醸し出す
役者さんってすごいとしみじみ思った。
安藤サクラさんの今までの映画で一番魅力が溢れていた。
それは積み重ねた年齢と人間力を感じる
彼女の為だったら、普段どうしようもない
自分も皆一肌脱いじゃう
自然とそうしてしまう。そんな魅力。
この映画は詐欺師や悪党と呼ばれる人たちばかりが、警察以外は多いが、
この映画で善悪を問うのはナンセンスだろう。
ネリとジョーをはじめ、林田も選択肢のない生い立ちがあるから、
皆一様に何かを抱えてここにいる。
持てる者が持たざる者に何が言えるのか?
勿論全ての悪人に通じる訳ではないけれど
2回目の観賞で気が付いたのは
ネリとジョーがコーヒーの砂糖を溶かす場面がやたらと沢山あること。
ココアが飲みたいと泣く幼きジョーにネリは砂糖たくさん溶かして飲んだらうまいでと
慰めてた
多くは語られない
2人の切なく、おそらく悲惨すぎる過去
これみよがしでないのがよい
繰り返される
2人が一緒に俯いてスプーンをかき回す仕草を見るたびに
お互いしかいなかった過去
2人にしかわからない絆をひしひしと感じる
だからジョーの決断に説得力があり
姉であり、1人の女でもあるネリのために
まるで子供が不貞腐れたように、
寂しそうに
ゴヤへと近づいていくのがたまらない。
そして、それを知ってもネリは涙を流さない。
涙っていうのは余裕のある人間しか流さないからだ。
絶望という、ものを言葉でなく体現したことのある人間は
おそらく知っている。
渦中にいる時涙って案外出ないものだ。
涙がでるのはずっとあとだったりする。
だからネリの
代わりに余裕のある2回目観賞の自分は
スクリーンの前で阿呆のように涙を垂れ流すのだ。
一度見た時には感じなかった
表には出ないネリの悲しみがひしひしと
スクリーンから伝わってきた。
ジョーや曼陀羅と共に泥の上に咲く花のようなネリの幸福を願わずにはいられない。