「Bitter&Sweet」BAD LANDS バッド・ランズ ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
Bitter&Sweet
予告から伝わる渋い感じ、こういう感じの邦画を待っていた!と同時にスタートミスったら結構キツイかもな…という不安を携えながら鑑賞。
いやもう最高‥!どのシーンでも役者陣がギラギラしたオーラを纏って全開のワルを演じ切っており、特殊詐欺という一見地味に映ってしまうかもしれない内容をここまで魅惑的に映すのかと舌を巻きまくりました。
濃密な人間ドラマも見応えがありました。裏社会という遮断された場所で生きる人間たちの葛藤や渇望がこれでもかってくらい描かれていてとても良かったです。
前線で詐欺を働くために身を粉にして動く者もいれば、受け子たちを操って戦略を練る者、ひたすらに業務のように詐欺を働く子分たちなどなど、それぞれの視点でこの世界をどう生きるのか、選択の数々をこなしていく姿が鮮明に映されていました。
アクションシーン自体はそこまで多くありませんが、狭いフィールドでの銃撃戦のリアルさは最高です。脳天をぶち抜いたり、足を撃って機動力を奪ったり、トラップとして使ったりとハンドガンのみでもバリエーション豊富で凄まじかったです。
ジョーが東京まで出向いてネリを犯した胡屋に弾丸をぶっ放して始末をつけて、そのまま自分も追ってきた警官に撃たれて死亡、悲しいシーンのはずなのにやるべき事をやって死んだという決着をつけてくれたお陰かなぜだかスッキリした気分になれました。
最後の金銭の取引のシーンもここまで眼光がバチバチぶつかり合うと静かなはずなのに、見応えマシマシになっていて良かったです。
ネリがラストシーンで纏ったものを取っ払って街中を駆け抜けるシーンなんか最高のラストショットだったなと思いました。
役者陣はもう文句なし、それぞれの最高値を叩き出していました。
安藤サクラさんのやさぐれた仕事人の雰囲気がたまらないくらい好きです。飄々と物事をこなしつつも、裏社会からの脱却を目論んで目の前の仕事をこなす姿が風貌も合わさってギラギラしていました。安藤さんにかかればセリフの聞き取りづらさ(関西弁のアクが強いのもありますが)も感じずに、スッと会話が入ってきてとても良かったです。
山田くんはベビーフェイス×サイコパス×姉思いと属性もりもりでしたが、情けなさ全開のコメディリリーフとしての役目を果たしつつも、胸熱なシーンは彼が全部持っていった激ヤバキャラでした。本当にいそうな胡散臭さも堪らないですし、原田監督と何作も組んでいるからこその信頼関係が見て取れるナイス好演でした。
生瀬さんのTHE・悪役が最高でした。超高速喋りもあってセリフの聞き取りづらさは1番でしたが、いつもの生瀬さんが演じるキャラとは全然違う底無しの悪にゾワゾワさせられました。
宇崎竜童さんの厳つさも今作をよりディープなものに際立たせてくれる役割を強く果たしていたなと思いました。
サリngROCKさんの風貌、言動、行動、どれを取っても後について行きたくなるくらい魅力的に映っていました。この人が主人公のスピンオフが観たくなると思うぐらい好きになりました。
原田監督作品常連の岡田くんも友情出演でチンピラ役として出演していますが、存在感がもう目立ちすぎててこのままタイマンしたらこの人勝っちゃうよなってくらいの存在感が面白かったです。
メタ的発言も面白く、「燃えよ剣」で沖田総司を演じた山田くんが全く同じロケ地に訪れて「懐かしいな」と言わせるシーンとかファンサービスとはいえ、こんな角度からのファンサービスを繰り出してくるとはと驚きと同時に笑いも起こりました。
やはり懸念点だったセリフの聞き取りづらさに序盤は頭を抱えていましたが、慣れてしまったらそれも味だなと思い楽しめました。序盤だけでも字幕が欲しかったのは本音ですが笑
原田監督の唯一無二の世界観を築き上げる力、それに応える役者陣の好演、邦画の中でも群を抜いた完成度に痺れまくりました。是非ともこのテイストで名作を作り続けて欲しいです。
鑑賞日 10/3
鑑賞時間 15:25〜18:00
座席 B-6