「大阪弁の軽妙なやり取りが魅力なクライムサスペンス」BAD LANDS バッド・ランズ 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)
大阪弁の軽妙なやり取りが魅力なクライムサスペンス
大阪・西成周辺を舞台にしたクライムサスペンスでした。原田眞人監督の作品と言うと、「関ヶ原」(2017年公開)、「燃えよ剣」(2021年公開)、「ヘルドッグス」(2022年公開)に続いて4作目の鑑賞となりましたが、過去3作はいずれも岡田准一が主演でした。対する本作は安藤サクラが主演でしたが、世界観的には「ヘルドッグス」で描かれた現代日本のアングラ社会に生きる人間の、もがきながら懸命に生きる姿を描いた作品であり、すんなりと没入出来ました。
原作小説の「勁草」では、主人公が男性だったそうで、これを女性にするということでシナリオもそれに合わせて手を入れたとのこと。原作未読の私としては、主人公が男性という設定の方が想像出来ないほど、徹頭徹尾練られたストーリーになっていました。
そんな主人公を演じた安藤サクラですが、途轍もなくカッコ良く、ファンとしては大満足でした。また、原田作品の常連である岡田准一もカメオ出演でカッコ良さが際立っており、こちらも満足。さらには「ヘルドッグス」でヤクザ役ながらイタリア歌曲で美声を披露した吉原光夫が本作では刑事役で登場し、熱血漢ながらもユーモラスな刑事の演技を魅せてくれました。謎の女・林田を演じたサリngROCKは初見でしたが、不気味でありつつもなんか憎めない感じで非常に印象的でした。
このように、総じて俳優陣に良い印象を持ったのですが、これは大阪弁のお陰なのかなと思ったところ。登場人物のやり取りもボケとツッコミという役割分担があり、アングラ社会とか警察官という、普段あまり関わらない人たちの会話でも、大阪弁というツールによってかなりフンワリとした感じになるんだと改めて感じました。そういう意味で、本作の成功は大阪弁にあるのではないかなと思いました。
逆に唯一標準語を使った敵役の胡屋(淵上泰史)は、やってることもクズそのものである上、ボケとツッコミというようなやり取りもないため、一切感情移入できない仕掛けがしてあり、悪者感が強調されていました。この辺りのキャラクター設定も、非常に良かったように思います。
そんな訳で、徹底的に練られたストーリーだけでなく、エグイことをやりつつも大阪弁の軽妙なやり取りのバランスが絶妙だったことも合わせて、評価は★4.5としたいと思います。
私もあの東京の悪魔だけは感情移入出来ず、嫌なというか、この映画の世界観の中で浮いてるなと思ってましたが、敢えてだったんですね。ジョーが有無を言わせず落とし前をつけたシーンは泣けました。
黒川博行の小説は、内容はリアルな犯罪物なんですが、登場人物の関西弁のやりとりが漫才みたいで面白いですよ。