劇場公開日 2023年9月29日

「映画よりもドラマ向き」BAD LANDS バッド・ランズ TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5映画よりもドラマ向き

2023年10月1日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

たまたま巡り合わせがなかったのか、劇場でこの作品の予告を目にしなかったこともあり、公開前に劇場ホームページや映画.comの公開予定にある本作品のサムネイルを見ても「これは(劇場鑑賞するかの)当落線上」としていていました。ただ、「安藤サクラさんだしな」と思い直してサムネイルをクリックしてみて気づいた「監督/脚本/プロデュース:原田眞人」に「あら、これ観ないとダメなやつじゃん」と、日曜のファーストデイに109シネマズ木場で鑑賞です。とは言え、残念ながら客入りはあまり芳しくないですね。ま、作品性もありますが、東映さんも東宝さん(同日公開の『沈黙の艦隊』)くらいとは言わないまでももう少し宣伝に力入れては?
それで私の本作に関する感想ですが、残念ながら「映画よりもドラマ向き」な作品ではないかと思います。「オレ詐欺」と言う、現実社会において身近なのに闇深さを感じる犯罪を、説明するでもなく演技で見せてくれることで緊張感が伝わり、また組織の複雑な構造と関係性にいい意味で惹き込まれます。さらにそこで終わらせずに「フィクションならではの思い切ったギミック」を入れたり、「外連味溢れるキャラクター」を登場させることで、見たことのない世界観を堪能するできるのですが、残念ながらこの尺だとそれらが活かしきれていな気がします。
天童よしみさん演じる「新井ママ」やサリngROCKさん演じる「林田」らのキャラクターは、それだけでスピンオフが出来るであろうほどの魅力があるし、淵上泰史さん演じる「胡屋(こざ)に至っては単に「付き纏う過去」なだけで、仕舞にはオチが読めてしまうためむしろ作品にとってマイナスな印象です。映画として143分にまとめたこと自体は努力を感じるのですが、ここまでやるならじっくりドラマの方が面白いのではないかと思ってしまうくらい勿体ない気がします。
とは言え、俳優さんたちは皆素晴らしく、前述した方々以外も魅力たっぷりです。中でも目を引いたのが佐竹刑事を演じる吉原光夫さんが素晴らしい。どこかしらやんちゃ感を感じさせつつも後輩たちからの絶対の信頼感を思わせる佇まい。そして、刑事ならではの表情や目つきなど細かい仕草で、相手に取り入る場合や、有無を言わせない場合など、随所随所で堂に行ってます。そのせいか、この手のクライムサスペンスのジャンルにありがちな、警察側に対して感じてしまうフラストレーションがないどころか、(江口のりこさん含めた)警察チームもまた、もっと掘り下げて見てみたい魅力があります。
全般、相変わらずセリフの聴こえやすさよりも演技の流れを重視した場面があったり、よく見れば、一度では気づかない伏線も散りばめられていそうで、そんなところも紛れもなく昨今の「原田眞人作品」たる出来栄えで、全然悪くありません。

TWDera