劇場公開日 2023年9月29日

「テンポのよいクライムサスペンスに引き込まれる」BAD LANDS バッド・ランズ おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5テンポのよいクライムサスペンスに引き込まれる

2023年10月1日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

興奮

難しい

予告の雰囲気に惹かれて、公開2日目に鑑賞してきました。

ストーリーは、大阪で特殊詐欺の受け子を束ねることを生業とするネリが、刑務所帰りの弟・ジョーがしでかした不始末をきっかけに、詐欺グループのまとめ役・高城から大金を奪うことになり、大阪府警の刑事・佐竹、ケツモチのヤクザ・新井、異常な性癖でネリを執拗に追い回す胡屋、賭場の胴元の林田らから狙われるというもの。

予告から、もっと痛快な特殊詐欺の話かと思ったら、全然違いました。思った以上に重いクライムサスペンスで、見応えのあるジャパニーズ・ノワールに仕上がっています。おまけにテンポが恐ろしくよくて、その世界観にぐいぐい引き込まれていきます。

まずは序盤、特殊詐欺の裏側や警察の地道な捜査の様子が描かれます。詐欺の役割の細分化やマニュアル化、巧妙な手口、安易に加担する若年層、やむにやまれぬ貧困層、罪悪感の欠如など、特殊詐欺の根深さが伝わってきます。それに起因する、警察による検挙の困難さ、それでもわずかな手がかりをたどって捜査する粘り強さもきちんと描かれていて、興味深かったです。

舞台が大阪ということで、関西弁で捲し立てる感じも本作にはよく合っていたと思います。ただ、テンポのよい怒涛の関西弁が聞き取りにくく、詐欺組織の入り組んだ構造、それゆえの登場人物の多さ、立ち位置の複雑さと相まって、細かい部分はよく理解できなかったです。

それでも、高城の殺害以降は、ネリの過去やジョーの服役理由が明らかになるとともに、ネリの逃亡に向けて収束し始め、すっきりしてきます。そんな中で、曼荼羅の生きざま、ネリを慕うジョーの思いが、熱く描かれ涙を誘います。明け方の街を疾走するネリの姿を描くラストも、余韻の残るよい締めくくりです。

また、原田眞人監督の他作関連のネタも楽しませてくれます。特に「燃えよ剣」を想起させる、池田屋セット再利用の賭場シーンと、そこに訪れた沖田総司役だった山田涼介くんの第一声、さらには岡田准一くんのゲスト出演と、ファンをニヤリとさせるサプライズがたまりません。天童よしみさんに言わせたセリフも完全に狙ってて笑えます。一方で、ハイスピードの方言演出も、原田監督らしさ全開なのですが、こちらは前述のとおりです。

主演は安藤サクラさんで、さすがの貫禄でネリを演じています。共演の山田涼介くんも、一皮剥けた感じでジョーを好演しています。他に、生瀬勝久さん、吉原光夫さん、淵上泰史さん、宇崎竜童さん、サリngROCKさんらが脇を固めます。中でも、宇崎竜童さんのいぶし銀の演技とサリngROCKさんの存在感が光ります。

おじゃる