劇場公開日 2023年7月28日

「All Things Must Pass」コンサート・フォー・ジョージ 珍念さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0All Things Must Pass

2023年8月31日
PCから投稿

泣ける

楽しい

Disney+で公開されている「GetBack」ドキュメンタリーとセットで見ると至上の感動が得られます。「GetBack」では、ジョージが様々な提案してもポールがまるで相手にせず、二人の軋轢が周囲をどんどん険悪にして行く様子が描かれています。ジョージの連れてきた若きオルガン奏者のビリー・プレストンが加わると、セッションの雰囲気は和やかになり、なんとかレコーディングは続けられるようになります。そして、数年ぶりのライブ演奏として自社ビルの屋上でビートルズはライブを強行します。急拵えで観客もいないライブでありながら、彼らは青春の最後の光のような輝きの演奏を披露し、ドキュメンタリーの幕を閉じます。

それから30年あまりを経て開催されたこのトリビュート・コンサートでは、ポールがジョージの曲を歌います。それも「All Things Must Pass」。GetBackセッションでジョージが作曲するも結局ビートルズでは取り上げられず、その後最初のソロアルバムのタイトル曲となった名曲です。崩壊しそうなバンドにGetBackと呼びかけるポールに対して、All Things Must Passと答えバンドを去っていったジョージ。
どんな思いを胸にポールはこの曲を歌ったのでしょう。ジョージもジョンもこの世になく、セッションの現場でいつも写真を撮っていた愛妻リンダもすでに旅立ちました。傍らではまさにGetBackセッションの頃のジョージに生き写しのダニー・ハリソンがギターを弾いています。
曲の最後、ポールはダニーの方を見つめながら、エンディングのフレーズの合図を送りますが、ダニーはギターの方ばかりを見ていてポールの合図に気が付きません。またしてもすれ違ってしまう二人に、どうしようもない皮肉のようなものを感じてしまいました。

珍念