「何も考えないで見るのが吉」カンダハル 突破せよ 正山小種さんの映画レビュー(感想・評価)
何も考えないで見るのが吉
核保有国であるアメリカのエージェントが、核を持とうとする国であるイランで破壊工作を行い、アフガニスタン経由で帰国しようとするも、途中で様々な障害に遭遇し、最後は追っ手がアメリカの兵器によって一掃され、母国に帰った英雄が家族との再会を喜ぶという、アメリカ万歳!、家族って最高!という、いかにもアメリカ映画って作品です。なにも考えず、作品の中に映されるアクションにハラハラドキドキするしかありません。非常に面白かったです。
ただ、舞台が舞台なだけにひげ面のオッサン率が高く、こいつ誰だっけと思うこともありました。もっとも、英語の訛り具合やペルシャ語、ダリー語、パシュトゥー語、ウルドゥー語(多分ウルドゥー語と思います)といった言語の違いから、イラン人役かアフガニスタン人役か、パキスタン人役かは分かるのですが、絵面は暑苦しいなと思いました。
セリフを聞けば何となく分かると書きましたが、最初のコムのシーンで革命防衛隊の若い隊員がペルシャ語を話した際には、かなりペルシャ語が聞き取りにくく、これはどうしたものかと思いました。コム辺りの方言なのか、役者が下手だったのか......。もっとも、途中から主人公を追いかけることになる、革命防衛隊のファルザード・アサディー大佐を始め、画面によく映る方々のペルシャ語は非常に聞き取りやすかったです。まあ、大佐を演じたバハードル・フーラーディーさんは3歳でご家族と共にスウェーデンに移られるまで、イランで過ごされていたイランが出自の方なので、まさに三つ子の魂、百までなのでしょう。
作品自体は何も考えないで楽しめるのですが、登場人物の名前の表記等、翻訳者の方にはもう少し頑張ってほしいと思いました。例えば、ラスールがラソールになっていたり、ハミードがイメードになっていたり、タイトルについても今どきカンダハルは不勉強ではないか、カンダハールにしてほしいと思ってしまいます。ただ、この表記も、英語様が一番偉い言語なのだから、他の国の地名や人名も英語様の読み方に従えば良いという英語至上主義が、作品のアメリカ至上主義と対をなすように訳しているのであれば、なかなか面白い試みだと思います。
最後に、作品とは関係ないことなのですが、コムの施設の爆発を伝えるイラン国内のニュース番組のテロップが文字化けというか、正しく文字が表示されていなかった気がします。テロップを表示させるのに使ったソフトが右から左に文字を書くのをサポートしていなかったのだろうかなどと、映画を見ながら、関係ないことを考えてしまいました。