劇場公開日 2023年8月12日

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「裁判という名を冠した国家のプロパガンダ」キエフ裁判 ブログ「地政学への知性」さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0裁判という名を冠した国家のプロパガンダ

2025年1月12日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

知的

難しい

 映画は現ウクライナのあちこちで起きたナチスによる残虐行為を裁判という形で裁いたという記録が編集されているもの。最近のウクライナ戦争の報道で聞くようになった地名もあったが、ほとんどは多くの日本人が知らないであろう地域で起こった数々の残虐行為について語られている。
 あまりにも淡々と被告が語るので、何を見せられているのか監督の意図が理解に苦しんだ。ウクライナにおけるナチスのホロコーストから80年以上の年月が過ぎ、今やその事実は世界中で世代を越えて広く知れ渡っている。漠然と見ていれば、ウクライナでもホロコーストが遂行されたことを被告は語っているものの、ホロコーストの残忍さを伝えたいがために、発言の都合の良い部分だけを編集しているのかとさえ疑った。被告のドイツ人たちの態度は罪をほとんど全面的に認め、争う姿勢をほとんど見せておらず、こんなにドイツ人たちは潔いものなのかと妙に感心してしまったが、死を前にして本当にそのように全被告が潔く振る舞えるものなのか。
 公開絞首刑のシーンは圧巻であった。圧巻と表現しているのは絞首刑というより絞首刑を見に来ていた大勢の人々の姿の方だ。数万人か数十万人規模の観衆の動機はなんだろうか。3万人以上のウクライナ人が銃殺されたのだから、ナチスへの憎悪があって見に来ていた人は少ないくないはずだ。ただ、ウクライナでナチスの残虐行為の規模に対して公開処刑に来ている人の規模や態度が妥当なものなのか。それを評価する物差しを持っていないのでどう感じていいのか分からなかった。
 映画を見終わってもモヤモヤした気持ちを一掃してくれたのが上映後に開かれた守屋愛氏のトークショーであった。本映画の字幕翻訳を担当した彼女は4〜5枚のレジュメを準備して、この映画を見る人が持ちそうな疑問について語ってくれた。
 続きは(守屋愛氏のトークショーの概要)ブログ「地政学への知性」で公開しています。だ。ウクライナにおけるナチスのホロコーストから80年以上の年月が過ぎ、今やその事実は世界中で世代を越えて広く知れ渡っている。漠然と見ていれば、ウクライナでもホロコーストが遂行されたことを被告は語っているものの、ホロコーストの残忍さを伝えたいがために、発言の都合の良い部分だけを編集しているのかとさえ疑った。被告のドイツ人たちの態度は罪をほとんど全面的に認め、争う姿勢をほとんど見せておらず、こんなにドイツ人たちは潔いものなのかと妙に感心してしまったが、死を前にして本当にそのように全被告が潔く振る舞えるものなのか。
 公開絞首刑のシーンは圧巻であった。圧巻と表現しているのは絞首刑というより絞首刑を見に来ていた大勢の人々の姿の方だ。数万人か数十万人規模の観衆の動機はなんだろうか。3万人以上のウクライナ人が銃殺されたのだから、ナチスへの憎悪があって見に来ていた人は少ないくないはずだ。ただ、ウクライナでナチスの残虐行為の規模に対して公開処刑に来ている人の規模や態度が妥当なものなのか。それを評価する物差しを持っていないのでどう感じていいのか分からなかった。
 映画を見終わってもモヤモヤした気持ちを一掃してくれたのが上映後に開かれた守屋愛氏のトークショーであった。本映画の字幕翻訳を担当した彼女は4〜5枚のレジュメを準備して、この映画を見る人が持ちそうな疑問について語ってくれた。
 続き(守屋愛氏のトークショーの概要)はブログ「地政学への知性」で公開しています。

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