「魂の解放」春画先生 唐揚げさんの映画レビュー(感想・評価)
魂の解放
喫茶店で働く春野弓子は退屈な毎日を過ごしていたある日、“春画先生”こと春画研究者の芳賀一郎に出会い、奥深い春画の世界に心を奪われる。
春画に没頭するうちに芳賀自身にも惹かれるようになり、編集者の辻村や芳賀の元妻の姉・一葉を巻き込んで弓子の性が解放されていく。
これぞ偏愛映画。最高だった。
弓子が芳賀の家で最初の手解きを受けるシーン。
あの少しの説明だけで一気に春画の魅力的な世界に引き込まれる。
「後半春画関係ないじゃん」って意見が多いのも分かるんだけど、この映画は春画を通して性と愛の根元に辿り着く現代の春画。
春画が時代に応じて変化していったように、性のカタチも変幻自在。
ラストの怒涛の展開?はそういった性に対する監督なりのアンサーと感じた。
「春画をただの猥褻物と思っていないか」
というような問いから始まるこの映画だが、私は今まで春画は江戸の芸術だと思って来た。
ただこの映画を通して春画は芸術的な側面だけではないということに気付かされた。
何もカッコつけることはない。
春画は紛れもなくエロなのだ。
ただし、そのエロは特別で猥雑なものではないあくまで日常。
当時の江戸の人々の生き様をありのままに描いたものなのだと知ることができた。
ある意味、伝統工芸品みたいなものなのかもしれない。
そして特に印象的だったのが、「笑い絵」とも呼ばれるように老若男女が大勢で見ながら楽しむ娯楽的なもの存在であったこと。
江戸の性文化がどんなものだったかは断片的にしか知らないが、コンプラだの猥雑だのとやたら閉塞的な現代日本ももっと性をオープンにしても良いのではないかと強く思う。もっと己に忠実に性を楽しめば良いのだ。
そして、特筆すべきはなっと言ってもヒロインの北香那。
鑑賞動機の一つでもあった彼女は最高にカッコ良くて最高に可愛くて、セクシーで知性的。
そういう役だとは知らなかったためかなり衝撃的ではあったが、それをあたかも何もないかのように自然に演じていることの方がより驚きだった。
喜怒哀楽を出し切り、エロスを体現する姿はまさに春画的とも言える。
好きな俳優の新境地が見れて、さらに彼女が好きになった。
これで気になった人は是非バイプレイヤーズのジャスミンも全然違うので見てみて欲しい。
性は日常、愛は狂気。
その2つが重なった時とんでもないエネルギーが人間を人間たるものにする。
性について言いたいこと全部言ってくれていた。
人は選ぶ作品だがとても好き。
今度は春画を現物で見てみたい。