劇場公開日 2023年10月13日

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「「春画」はその後の官能へのとば口」春画先生 ジュン一さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5「春画」はその後の官能へのとば口

2023年10月14日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

単純

萌える

無修正の「春画」が画面に大写しになることから
「R15+」指定なのだと思っていた。

「永青文庫」で開催された”春画展”は観ていないものの、
例えば「藝大」での展覧会では「春画」もさりげなく並んでいたりする。
ほんの少しの注意を添えて。

もっとも、現代アートに於いて
例えば”会田誠展”では
囲われた一角の入り口に、その旨の注記があったりするのだが。

とは言え、本作、
ちゃんとカラミのシーンもあるので、
合わせ技での指定とのことか。

監督の『塩田明彦』は直近では〔さよならくちびる(2019年)〕が快作。
或いは〔黄泉がえり(2003年)〕がヒット作も、
助監を務めた〔神田川淫乱戦争(1983年)〕や
助手の〔ドレミファ娘の血は騒ぐ(1985年)〕あたりが本質ではないかとにらむ。

今回も多くの先達のコラージュをモノし、
時として{小津調}になるバーのシーンでは独り笑っていた。

『春画先生』と近隣でも変人と噂の
『芳賀(内野聖陽)』が喫茶店で『春野弓子(北香那)』にコナを掛けるところから物語りは始まる。

一瞬で「春画」の世界に引き込まれた『春野』だが、
一方で『芳賀』にも興味を持ち、次第にそれは愛情に変化。
また、その感情も捻じれた方向に。

中途から先生の弟子を自認する編集者『辻本(柄本佑)』も絡み、
ストーリーは更にあらぬ方向へ変転。

永く秘め事であった文化を、
江戸時代の大らかな性愛のカタチに戻す啓蒙をする
志しの高い一本と観ていたら、
中途からなんのことはないコメディに転調。

全くの艶笑噺は、しかし爆笑どころは皆無で
微苦笑がせいぜい。

すぱっと脱いだ『北香那』は立派だし、
眉を吊り上げ鞭を振るう『安達祐実』は境地も
全体としては、意気込みだけの空回りに見えてしまう。

「日本書紀」からの『イザナギ/イザナミ』の国造り神話の引用や
『円山応挙』の〔雪松図〕の解説は見事な取り込み。

それに感心していたら、いきなり梯子を外されたような
置いてきぼり感。

肩透かしを喰らったような流れ。

ジュン一