「今の時代必要な映画」キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン багтазарさんの映画レビュー(感想・評価)
今の時代必要な映画
いくつかの点から面白かったので順に述べる。
まず、1920代のアメリカの田舎の生活。水は井戸から汲み、ウィスキーをがぶ飲みし、風呂にも恐らく入らず、毎日浮いた儲け話に興じ、邪魔者がいれば消す。この点だけでも観る価値はある。実写で撮れるところはギリギリまで撮ってるんじゃなかろうか。
コマが大物にいいように扱われる点。これは今の時代も変わらず、ディカプリオの間抜けさが、観客を緊張と共に引っ張るので、3時間を越える映画が、常にディカプリオと共にある。
インディアンの誇り高さと、土地に対する強い愛。同時に白人の愚かさと強欲さ。この映画では確実に白人が全員悪人であること。
更に、アメリカという土地に対する反省。アメリカは白人のものではなかったという事実。これは恐らくアメリカ人が忘れがちな事実であって、数年おきにこういう映画を放映する必要がある。特にスコセッシみたいな大物監督が取り扱うことに意味がある。
映画はエンターテイメントを遥か超えて、批判能力の高い文化装置である。このことがわかっていない人は「面白い」「面白くない」で判断したがるが、極めて底の浅い、無教養な批判である。
日本のごみみたいな人気俳優によるおちゃらけた映画を100本観てもなんの価値もないし勉強にもならないが、こう言う映画は100本みたら人生観が変わる。エンターテイメントを否定はしないが、限界がある、というだけの話である。
アメリカはひどい国だ、と突きつけることは、大事だ。自分達が最高だと思い込まないために。
同様に、日本もこのような映画をもっと作るべきである。同じ意味で。
この土地は、たくさんの人の血が染み込んでいる。その実感と理解が、明日を作る。知らない人には、できない。
面白いとか面白くないとかは、知らない。
だが、必要な映画だということは大声でいえる。