「見応えたっぷりなスコセッシの大作、エンドロールの音に耳を澄まそう」キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン pekeさんの映画レビュー(感想・評価)
見応えたっぷりなスコセッシの大作、エンドロールの音に耳を澄まそう
名匠スコセッシの大作。とても見応えのある作品でした。
「見応えたっぷり」という表現は日本語としてはおかしいのかもしれないけれど、そんな言葉が頭に浮かびました。
この映画、たしかに長い。けれども、冗長さは感じなかった。必要だと思わせる、納得のいく長さだった。約3時間半、スクリーンに映し出された物語は吸引力を失わなかった。
本作の重要な要素は、「欲望」です。
人間は欲望によって成長もすれば、破滅もする……。
何度か登場する「蠅」は、欲望の対象に群がる人間たちの象徴であるとともに、欲望の犠牲となった者たちの死を連想させるためのメタファーでもあるのか。
そして、エンドロールの自然界の音が、やけにこころに響き、沁みました。何だかそれまでの長い物語が序文で、このエンドロールこそが本文ではないかという感じがしたほどです。
同じく人種問題を扱った『それでも夜は明ける』に似たムードと内容を予想して鑑賞したのですが、本作のほうがエンターテインメント性が強くあらわれており、陰惨・悲痛な出来事もその素材の一部になっている印象を受け、史実としての「重み」はだいぶん薄らいでいるように僕には見えました。
とはいえ、優れた作品にはちがいない。
欲をいうと、終盤にもう少しエモーショナルな盛りあがりと見せ場があってもよかったんじゃないかという気もしましたが、どうでしょう。
まあとにかく、名優たちの名演をたっぷりと堪能できた。それだけでも観る価値はじゅうぶんにありました。
追記
本作の予告編をはじめて見たときから「ひどいタイトルだなぁ」と思っていましたが、やっぱり何のひねりもないこの題名がベストなのかなぁ。
いや、でももうちょっと気の利いた邦題をつけられなかったのだろうか。『12 YEARS A SLAVE』を『それでも夜は明ける』としたように。『花殺し月の殺人』じゃ、お客さんは入らないだろうし。むずかしいところですね。