「結局、観て良かった」キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン キレンジャーさんの映画レビュー(感想・評価)
結局、観て良かった
さすがにこの上映時間に尻込みして、鑑賞することになかなか踏み切れなかったのだが、他の方のレビューを見て、決心して観に行った。
結論から言うと、ほんとに観て良かった。
いや、もちろん長いよ。
「体感はあっという間でした」なんてとんでもない。
ちゃんと長いです。
ただ、中だるみはなく、眠くもならない、306分ちゃんと楽しませてくれた感じ。
そもそもネイティブアメリカンの人々について、不勉強な私は黒人と同じ様な差別構造のイメージを持っていたが、冒頭でここでは全然違うってことを知り、最初から興味を引かれた。
白人により搾取されるのは同じでも、本作のネイティブアメリカン達は石油によって手に入れたその巨万の富を狙われた、謂わば「ジェノサイド」の餌食。
そしてその搾取が当時は組織的・構造的に合法化されていたワケで。
「無能者です」ってのが後から効いてくる。
そして、やっぱりディカプリオですよ。
まあ、どうしようもないヤツ。
長いものにはちゃんと巻かれ、何となくその場のノリを受け入れてやり過ごすタイプの「小物」。
小さくて汚れた歯を見せながら笑うあの男を主役にしたっていうんだから、(で、ディカプリオはこの役を望んだっていうんだから)まあすごい。
そんな「小物」の何が良かったんだか、結婚しちゃって結局エライ目に合う奥さんモリー役のリリー・グラッドストーン。この人の存在感がまた抜群。
いろいろ映画賞もらいそう。
もちろんデ・ニーロはもう、まさにデ・ニーロでしたよ、はい。
そして、最後のシニカルなラジオショー。
実際この事件の解決に至る経緯も、そもそも連邦捜査局の立ち上げのためのプロパガンダの意味合いが大きかった様だし、この事件の顛末を、現代において白人監督がエンタメとして表現することを、このラジオショーそのものが象徴していて、決め手はここにスコセッシが登場して自身で語るという自虐。気が利いている。
…なんてことは、観た後にいろいろ解説を見聞きすることで手に入れた話。
でも、この長い映画の後に、そんな時代背景や楽屋事情、裏話に興味を持って調べたりするのは、間違いなく映画そのものに魅力があったから。
「面白い映画」って、いろいろ要素があるんだけど、観た後の帰り道や、その日の心の持ち様、もっと言うとその次の日以降の人生がほんの少しだけ豊かになる感じになる映画だと思っていて、そういう意味ではこの作品は間違いなく私にとっての「面白い映画」。
スコセッシの作品をたくさん観てきたワケではないけど、私は一番好きな作品になりました。
上映時間が長い分、配信で観ると絶対に途中で止めてしまいます。
この映画には、この長さで観ることにも意味があると思います。
ぜひ劇場で。