「長いからこそ映画館で見る価値あり。今のアメリカを知る映画」キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン 七星 亜李さんの映画レビュー(感想・評価)
長いからこそ映画館で見る価値あり。今のアメリカを知る映画
マーティン・スコセッシ監督ということで、長いなーと思いながら、これは、後から家で観ると絶対途中で寝ちゃうかもしれないと思って、映画館で観ることを選択。
大正解だった。
まず、長いけれども、ストーリーに引き込まれていくので、体感的には、1時間半くらいの映画と変わらない感じ。
そして、風の音、虫の声をオーセージと同じように感じるには、映画館の音響が必要。
事前にアメリカ開拓史について、Coten Radioで聞いていたので、インディアンがどういう感覚で、土地や自然を捉えていたかを学んでいたことにより、理解が深まるように思った。
とにかく、アメリカ大陸に渡ってきた(ざっくりいうと)白人は、その土地に元々いた民族を大量殺戮して、その民族の文明や知識を彼らの尺度で遅れているとみなして、
潰してきたという事実をなかったことのようにしてはいけないと思う。
少なくともその事実は、ほんの300年くらい前のことで、日本で言うなら、江戸時代の初め頃のことなんだから、それほど大昔の話ではない。
この映画の事件に至っては、1920年ごろといえば、大正時代くらいの話。
現在のアメリカという国が、西洋人の欲望を人為的に都合のいいように作り出した国なのは、建国以来から今に至るまで、ずっと変わらないし、今も彼らの尺度で何が正しいかを決めて、その尺度にはまらないものを全て、自分たちの都合で搾取していくところは、ずっと変わらない。
ある意味、それを正義とか、アメリカンドリームと言い切って、善意として振る舞える図々しさは素晴らしいものがあると思う。
アメリカという国の歴史こそ、人の欲望をそのまま形にしているような気がしてならない。
アメリカは、好きだし、今の私たちの暮らしもその考え方をベースに物事を考えていっているように思うけれども、その大きなズレを気が付かないでいることは、間違った価値観で物事を判断していくようになってしまう気がする。
日本は、幸いにして、ペリーの黒船が来たときも、第2次世界大戦で負けた時も、アメリカに全てを奪いとられるというところまでは行かなくて済んだと思う。
それは、彼らの尺度で見たときに、そこまで遅れているとは見えずに、インディアンや黒人のような扱いまではならなかったのだと思う。
しかし、根底では、日本人に対しても、そして、アジア人に対しても、アラブ人に対しても自分たちの尺度で、劣っていると考えて、自分たちの都合で搾取をしてもいいと考えているところがあると思う。
日本人に差別をする気持ちがないとは、思わないけれど、アメリカが持っているような強引なまでの自分たちの欲望からくる正義と差別はないと信じたい。
むしろ、それに感化されてしまい、それがスタンダードだと考えてしまうような意志のなさを持ちたくないと思う。
オーセージの部族は、インディアン居住地区として、追いやられて、オクラホマの土地に移住させられた。
彼らは、何もない土地で作物も育たずに苦労した。しかし、その土地に何があるかは、わかっていた。だから、その土地で採れたものの全ての権利を得る契約を結んだ。
白人は、その契約を馬鹿にしていたが、後から、そこから石油が出ることがわかった。そして、自動車が普及したときに石油がどれだけのお金を産むかに気がついた。
インディアンの文明は、今の私たちの暮らしと比べれば、劣っているように見えるかもしれないが、1万年以上もの間、自然との均衡を保ち、争いをそれぞれの部族の長が治めて暮らし続けていたのだとすると、今、私たちが直面している地球温暖化やSDGsの問題は、彼らの文明と比べて、どちらが優れていると言えるのだろう。
この事実を昔話としてではなく、今、起きている事実と照らし合わせてみると、より深い考察ができるように思う。
共感ありがとうございます。
バッファローを狩り尽くしたら、石油が出なくなったら、現在の境遇に納得いかない、もっと金が欲しい・・どこかで踏み留まらなければ、と判らないんですかね?
こんにちは。共感ポチリありがとうございます。先住民が利権を持つオクラホマの油田は枯渇するまでどんどん採掘して、それまでに儲けなきゃなんて台詞がありました。アメリカは中東の石油が枯渇するまで自分のところの天然資源はなるべく温存する作戦なんでしょうね。その時には日本に高く吹っかけてくるんでしょう。天然資源は戦争の火種。Coten Radio視聴してみたいと思いました。
同じ白人の中でも、ヘイルとアーネストには絶対的な格差があり、又アーネストは汚れ仕事を下の人間を脅してやらせようとする。この辺りの傲慢と言うか滑稽さと言うか・・苦い気分になりますね。