「五月蠅いハエが心に残る」キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン たあちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
五月蠅いハエが心に残る
マーティン・スコセッシが80歳にしてやはり80歳のロバート・デ・ニーロとレオナルド・ディカプリオを主役に100年前のアメリカ西部の先住民迫害虐殺の黒歴史を撮ったという所謂「話題作」なので嫌でも避けては通るわけにはいかなくて3時間26分という無駄に長い作品につきあった。折しも80歳のミック・ジャガー率いるローリング・ストーンズは18年ぶりにスタジオ録音のアルバムをリリースしたというのだ。巨匠の映画は誰も「短くしろ」と言えないので長くなる傾向があるけれどまあ「老害」であろう。タランティーノが撮るようなようなどうでもいいふざけた与太話にはつきあってもいいけれど、今作のような演技してまっせ感満載のデ・ニーロの顔芸は後半になるとさすがにもうええよ十分わかったよとゲップが出てあと20分削ってくれたら大絶賛しても良かった。中盤まではスコセッシならではのスケールが大きく重厚でテンポ良い「ザ・映画」が展開されて、特に病気や自殺を装って先住民が次々と殺されていくシーケンスやアーネストとモーリーが沈黙する嵐の夜のシーンは観ていて幸せなのだ。しかし明らかなアカデミー賞狙いで黒歴史暴露もうわべだけにしか見えず、きちんと先住民迫害の悲惨を描く気があるのかと、心から愛している奥さんに毒入りの注射を毎日打てるんか?とあきれてしまう。マーベルを散々けなしてさあこれが映画だよと、やっかみ半分だけれどちょい頭にくる。
沈黙の嵐、大変印象的でしたね。
モーリーの精神に宿るものがあそこにあった気がします。
結果として離婚への道をすすみますが、ダメ男に惚れられて結婚した時の彼女の覚悟、信じる気持ちで注射を打たれ続ける姿はあの祈りにつながっている気がします。