「題材と手法の融合」オオカミの家 Raspberryさんの映画レビュー(感想・評価)
題材と手法の融合
アニメ史に残る名作。
コロニアに支配され洗脳されてきたマリアは、脱走して自由の身になっても、支配的思考そのものが自身の内面(家)にこびり着いている。マリアはコロニアの権力者と同じ態度で、豚に対して「わたしたちは家族」「お世話してあげますよ」「ここは安全」と言いながら相手を閉じ込め、薬物を使い支配する。
そうした〝得体のしれない〟コロニアという題材と、部屋の細部が絶え間なく変化し観るものの視点や現実感を麻痺させる、〝得体のしれない〟アニメの手法がピタリとハマっていた。
窓枠を形作るシーンで、十字架がナチスのカギ十字に変化していた。コロニアがナチスの残党であることを想像させる。納得。
ラストで豚に食われてしまえ!と思ったところで、私は冒頭シーンを思い出した。本作はコロニア側が制作したプロパガンダを模した作品だ。胸がすくような気持ちにさせてはくれるはずかない。
胸のすくようなことなんてめったにないのが現実。これは決しておとぎ話じゃない。
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