「ざわざわとした質感、ドイツ後とスペイン語の狭間」オオカミの家 redirさんの映画レビュー(感想・評価)
ざわざわとした質感、ドイツ後とスペイン語の狭間
短編 骨 がまず最初に上映された。フェイクの、人間の骨を使って作られた世界初、最も古いアニメみたいな設定でそのままそれ風にぼろぼろのフィルムという細工で進んでいくので、まんまとハメられる。プリミティブな少女の顔、墓場から掘り起こされた骨たちを操り肉体に戻す。最初はユーモラスで楽しげだがだんだんと固い意志が感じれ遊んでいるのではないなと思う。
一体の骨人間と愛し合っていたのだとわかる、婚姻届にサインをするがその後サインはバックワーズに消えていく。陰謀。
これはよほどチリの歴史、政治の闇の部分に詳しくないと理解できないだろうと、オオカミのパンフレットを見て思ったが、それを知らないとしても権力者であり強者である男たちに人生を破滅もしくは悲哀のものとされた女の物語とわかる。
オオカミの家、ナチス残党が多く住んでいる南米。チリもアルゼンチンも確か多いはず。軍事強権政治、独裁政権であったピノチェトとつるんで、様々な悪事、強制労働、虐待や虐殺、ピノチェトの手先、出先機関としての政治犯の処理などを行ったカルト宗教コロニアディグニタ尊厳のコロニー。
子豚を可愛がりコロニアの規則、労働に従えない少女マリア、子豚を逃げし自らも森の中の家に逃亡。オオカミが、教団が来ることを恐れながら自由を求め、次第に子豚たちを蜜により人間的な肉体に変え知性も知恵もないものにそれを教え込みそうすることで自らも教団コロニアにされたように子豚たちを支配してしまう。子守唄をドイツ語で歌うマリアが悲しかった。
ドイツ語の会話と、スペイン語の会話を聞き分けなければ、真意がわからないと思う。オオカミとの空くうの対話も状況と心理によりスペイン語であったりドイツ語であったりする。その部分がみていてとても疲れる。
逃亡当初、チリ人に助けを求めている。
コロニアの首謀者、元ナチス元ドイツのカルト教団設立者は、やがてコロニアの犯罪が発覚したが、今も宿泊施設などの形で運営が続いているという。
歴史の中の強者→敗者となったものがまた禍々しく強者となり戻ってくる厄災は日本の戦後から今に至る系譜にとあり、チリだけだはなく世界中にあるだろう。人はなぜ自由を求め、そこから道が曲がり人の自由を奪ったり不自由不寛容の選択肢にまた戻ってしまうのか。弱者が強者になれるかもなにか自分より弱いものを支配できるかという幻想妄想を抱かせるシステム。
アニメというより、絵巻物のように、絵画が開いて進行していく独特のディメンションがあり、この連続性がコロニアから逃れ得ないマリアこの世界のシステムから逃れ得ない私たちを閉じ込めていく。次々とあらわれるペイントされた空間、立体物、裁断された素材、、、最初は、これ作っていたら頭おかしくなりそうと思ったが二人組の製作者、ルールを作って楽しく製作されたようでおおらかな二人のインタビューに逆に感銘を受けた。アニメーションの独創性とクオリティだけでも必見。
自由を語る言葉
支配する言葉支配される言葉やがて支配する側になる言葉
個としての自分と集団性を持つ自分
孤独 恐怖 親愛 不安 支配。