「最高傑作」哀れなるものたち 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
最高傑作
ヨルゴス監督のスーパーノヴァな才能を余すところなく見せつけられた傑作でした。
私はヨルゴス監督に尊敬と共に畏れを禁じ得ない。
このまま健康でアクシデントがなく映画制作を続ければ、
スタンブリー・キューブリックに匹敵する鬼才になり、
このまま進化すれば我々は更なる頂きを見る事になるだろう。
過去作「籠の中の乙女」「ロブスター」「聖なる鹿殺し」
「女王陛下のお気に入り」
その複雑な形態に不穏、不快、不条理などを感じたが、
この「哀れなるものたち」にも一筋縄ではいかない複雑な余韻を感じた。
ヨルゴスが「女王陛下のお気に入り」の成功により、
豊かな資金力と各階の才能を結集して、
エマ・ストーンという勇敢で才能ある女優の協力を得て、
現段階での「哀れなるものたち」という最高芸術が生み出された。
しかしこの映画は単なる女性賛歌ではあり得ない。
ラストのシーン。
自由を得たベラは、ゴッドの後継者たる解剖医になり、
ゴッドがベラに試したような人間改造を進めようとしている。
元夫の暴君のアルフィー将軍は犬のように4足歩行をして、舌で水を飲む
犬人間に成り下がっている。
この結末を喜べますか?
犬にされた人間は「あなたであり、私です」
題名の「哀れなるものたち」
諸説ありそうですが、人間という愚か者たち・・・
①ベラに生きていた胎児を脳に移植手術を施すゴッド(ウィレム・デフォー〕も、
②ベラに金と自由を与えて、進化を手助けしたものの、見事に捨てられる
………………ダンカン(マーク・ラファロ)も、
③ベラ(身投げする前はヴィクトリア)も幼児期から成人して娼館で身を売る経験を
…………………積むエマ・ストーンも。
④ヴィクトリア(身投げする元妻)を束縛・精神的に虐待したアルフィー将軍も、
アルフィー(クリストファー・アボット)は連れ戻したベラの
快楽器官をを切除しろと命じるサイコな男性。
人間は存在そのものが「哀れなるものたち」
そう告げているように私には思えるのです。
割と展開早い作品で、字幕がない分、時々はあ?と理解がついていけないこともありましたが、かなり深いテーマで、エマが特に女性に向けてメッセージを送ったのかと思える作品でした。また観たくなりました。
共感をありがとうございます。
琥珀糖さんが挙げられた「哀れなるもの」①~④、納得です。
で、思ったのですが、「哀れ」と思う感覚は、本人が感じることではなく、他人から見たものなんですね、客観的な視点から感じるもので、主観的には自分が「哀れ」なのがわからないと思います。哀れさと本人が感じている幸不幸は必ずしも一致してないのだとも思いました。
琥珀糖さんのレビューは、いつも深いものがあり、一歩踏み込んで考える機会を貰えてもらっています。
ベラは破竹の勢いで自身を成長させていて、無知で無垢な幼年期をすぎたら、思春期を迎えやがて社会性に気づき、「大人」として人が持つ負の感情も貪欲に獲得していってると思いました。アルフィー将軍に対するアレは、今後の被害を防ぐため、を超えて、ベラが今まで未経験だった報復と隠蔽工作、それをしようと思った感情ですよね。
ベラの「インサイド・ヘッド」で次々と新しい感情が現れてくるのが分かるようでした。
おはようございます。
私はヨルゴス監督作初めて見たのですが、いや~すごい作品でしたね。
何と言ったらいいのかとうまく書けなかったのですが、琥珀糖さんのレビュー、人間の哀れさ…うんうんとうなずきながら拝読しました。「女王陛下~」見てみたくなりました。