「20世紀初頭の物語。 ある時、天才外科医ゴッドウィン・バクスター(...」哀れなるものたち りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
20世紀初頭の物語。 ある時、天才外科医ゴッドウィン・バクスター(...
20世紀初頭の物語。
ある時、天才外科医ゴッドウィン・バクスター(ウィレム・デフォー)は出産間近の妊婦の死体を手に入れた。
母親は死んでしまったが、胎児はまだ生きている様子。
ゴッドウィンは、胎児の脳を母親に移植し、電気ショックで蘇らせることとし、手術を敢行。
女性は蘇生し、ベラ(エマ・ストーン)と名付けられた・・・
といったところからはじまる物語は、『フランケンシュタイン』の怪物のバリエーション。
幼児脳のベラがゴッドウィンの屋敷内で奇異な行動する前半はモノクロで、怪奇映画っぽい雰囲気が漂います。
その後、放蕩者弁護士のダンカン(マーク・ラファロ)に誘われて世界に飛び出してからはカラー。
つくり込まれた美術の豪華さなどに目が惹かれます。
ベラの脳は急速に発達するも社会規範を身につけるまでには至らず、本能と欲望が底辺にありつつも、男性優位の社会規範に対して本能的に否定的忌避的行動をします。
そのうちのひとつが性衝動で、ベラはそれを隠すことをしません。
船上で出逢った進歩的老婦人の助言で本を読むようになったベラは、まさに啓蒙され(蒙を啓かれ)、彼女なりの論理的行動をとるようになる。
が男性優位主義の権化のようなダンカンは、ベラの論理的行動を非倫理的と受け取り、赦すことができない・・・
と後半になると、旧弊な男性優位主義対進歩的な女性意識という主題がはっきりしだし、その分、笑いのツボも増えてきます。
(前半も、ベラの奇異な行動を笑うことはできるのですが、いかんせん笑っていいものかどうか、観ている側としては躊躇せざるをえない)
ただ笑えるようになる分、主題の浅さも同時に感じるため、逆にちょっとツマラナイ、とも言えるでしょう。
さて、冒険旅行の果てに今際の際のゴッドウィンの屋敷に戻ったベラは、かねてからの婚約者、ゴッドウィンの助手の青年と結婚と相成るのですが、そこへ現れたのが生前のベラの夫の軍人。
彼がダンカン以上の男性優位主義者で・・・
この後は書かないことにしますが、へへへ、そういうオチね。
って感じ。
馬鹿は死ななきゃ治らない、いやいや、死んでも心は入れ替えられない、ならば・・・
豪奢な美術、エマ・ストーンの演技、魚眼レンズを使った異化効果のある撮影など見どころは多いのですが、後半、主題が立ち上がってからは、むかしから怪奇映画を見慣れた身としては幾分失速かな。
『フランケンシュタイン』の怪物のバリエーションではあるのでが、思い出した映画は次の2本。
ダニエル・キイスの『アルジャーノンに花束を』を映画化した『まごころを君に』と、女性の胎児に成長促進剤を投与する怪奇劇『エンブリヨ』。
どちらもラルフ・ネルソン監督作品。
前者は引き合いに出される機会もあるかと思いますが、後者『エンブリヨ』は口端に上ることも少ないだろうから、ここに記しておきます。