「哀れなる“もの”たち」哀れなるものたち shironさんの映画レビュー(感想・評価)
哀れなる“もの”たち
まれにみる完璧な映画
瞬きするのがもったいないほど!
造形、アングル、衣装、演技、ストーリー、音楽、照明…
映画を構成している要素は数えきれないほど沢山ありますが
ワンシーンワンシーンが完璧で刺激的で、貪るように観ました。
とくに『メトロポリス』『カリガリ博士』テリー・ギリアム監督好きはハマると思います。
あくまでも個人的な好みの問題ですが
『籠の中の乙女』でぶっ飛んで
『ロブスター』でハマり
『聖なる鹿殺し』に心酔した私にとって、
実は『女王陛下のお気に入り』は、さほど刺さる映画ではありませんでした。
『哀れなるものたち』は、エマ・ストーンとの再タッグということもあり、あまり期待していませんでしたが、自分で観ずに勝手な判断をするのはいけません。
私的にはヨルゴス・ランティモス監督最高傑作!
こんな映画を作ってしまって、次の作品が撮れるのか?と心配になるほど。(←大きなお世話)
『哀れなる“もの”たち』平仮名なのがミソ。
さて、気になるオスカーの行方は??
エマ・ストーンは既に『ラ・ラ・ランド』で主演女優賞をもらっていますが、この演技は無視出来ない!
少しでも子育てに関わった人ならわかるでしょうが、赤ちゃんは可愛い悪魔です。
好奇心の塊ゆえに、残酷でもある。
おっぱいをあげてたらふいに乳首を噛まれて、「痛っ」と顔をしかめたらニヤリと笑われた…なんてことも、あるあるですよね。
一粒の水滴が起こす波紋のように、自分の起こしたワンアクションが他のものに影響を与えて変化が起きるのが楽しくて仕方ない。
飽きるまで繰り返して、周囲を怒らせたり悲しませたりして、徐々に社会性を身につけていく。
常識や道徳に囚われない、見事な演技でした。
自己中心だった赤ちゃんは、様々なことを感じて、観察して、吸収していきますが、人間として一番大切なのはイマジネーションだと感じました。
自分ではない他者の存在を知り、立場や気持ちを想像できること。
戦争だの弾圧だの、人間が起こす不幸な行為は全て、自己中心の赤ちゃんのまま体だけ大人になった人たちがやらかしている。
そして、想像できる心は新たなものを創造する原動力にもなる!
でも、この映画の本当にすごいところは、決して他者にはなれない隔たりと、知的好奇心の残酷さをしっかり盛り込んでいるところ。ものすごいジレンマに、心が掻き乱されて悶絶しました。
女性の“商品価値”についても考えさせられます。
嫉妬や束縛など、その人を独り占めにしたい気持ちはとてもわかりますが…それって本人の主観や人格を無視した所有欲なのかも?
『Poor Things』『哀れなる“もの”たち』
平仮名に調理したシェフを呼べ〜!