劇場公開日 2024年1月26日

「今年の最高傑作かも」哀れなるものたち はっちさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0今年の最高傑作かも

2024年2月7日
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まだ1月なのに、今年のベストワンに出会ってしまったかも知れない。

物凄く新しい斬新な作品だけれども、同時に、古くから多くの才能のある作家達がチャレンジしてきたテーマも含まれており、斬新な作品と過去の名作との比較で、時代性を感じることもできる、本当に傑作だと思った。

過去の名作で、比較対象になるのは、まずは、黒澤清監督の「ドレミファ娘の血は騒ぐ」

さらに遡ると、サルトル•カミュの時代の無神論的実存主義。その時代の作品群。あの時代に影響を受けた学生たちが、性欲に突き動かされ、女の子に「自分の欲望を開放せよ。モノガミーなんて下らない」と言って口説いていたのが懐かしく思い出される。自分もその一人だった。今振り返ると恥ずかしい。

さらに、そのような口説き文句を真に受けて自由奔放に振る舞う女に対する谷崎文学。「痴人の愛」もこの系譜につらなるかもしれない。

ただし、この映画が新しいのが、上記の文学作品群が全て男視点だったのに対して、完全に主人公のベラ(エマ・ストーン)目線で描かれているところだ。しかしながら、現代においても、この作品が男性監督の手によるもので、女性監督ではなかった、というところが2020年代という時代の縛りを感じさせるものでもあり、新しい時代への流れも感じさせる。

はっち