「戦争は人類にとって一番愚かな行為」あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。 bunmei21さんの映画レビュー(感想・評価)
戦争は人類にとって一番愚かな行為
汐見夏衛の同名小説を昨年、映画化された作品。現代の女子高生が、太平洋戦争末期の日本にタイムスリップして、そこで知り合った特攻隊員の青年に恋をする切ないラブ・ストーリー。
自分の命を投げうってでも、敵を倒すことを美徳とし、軍人として生き延びることは非国民とみなされていた軍国主義の日本。戦争末期の世の中で、食料も底をつき、決して口にできない戦争への不満の中、それでも敵艦へと特攻作戦を続ける軍国主義に翻弄される若者達。そんな彼らの本音と建前で鬩ぎ合う心の葛藤を描いている。
高校3年生の百合は、母子家庭の環境から進路や母への不満を抱え、母と喧嘩して家を飛び出し、嘗ての防空壕の跡地で一夜を過ごす。朝起きると、そこは1945年6月の戦争末期の日本へとタイムスリップしていた。置かれた状況が分からないまま、街を彷徨う中で、一人の青年・彰に助けられ、軍の指定食堂に連れていかれる。そこで、女将の手伝いをしながら、世話になることになる。
次第に、戦時下での生活も慣れる中、百合を助けてくれた彰が特別な存在へとなっていく。そして、それは彰にとっても同様で、百合が心の支えとなっていく。しかし、彰は特攻隊員で、終戦間近に控える中、いよいよ特攻の指令がくだり、百合は悲嘆にくれて彼を見送る。
こうした、タイムスリップによるラブ・ストーリーは、これまでも多く映像化されたし、それほどのサプライズや展開の面白さはなく、戦争と特攻隊員をモチーフにして、オーソドックスな悲恋物語として描かれている。また、現代で不満だらけの女子高校生が、戦時下の生活に馴染むまでの過程も、、あまりにすんなりと馴染んでいくのは違和感を感じた。また、特攻隊員同士の会話も、どこかワザとらしく、自然体な演技としては映らなかった。ただ、あの百合の丘が、我が郷土の可睡斎ユリ園で撮影されたのは、郷土自慢となった。
「戦争は、人類にとって最も愚かな行為だ」と誰かが言ったのを聞いたことがあるが、私達はこれまで、多くの戦争による黒歴史を重ねてきている。にも拘らず、今も尚ウクライナやガザ地区で、こうした戦争が起きていることに、人類の愚かさを感じる。戦争とは無縁の現代の日本の若い人達には、本作で平和を考え直す機会になったのであろうが、やはり戦争と恋愛を美化した内容でまとめ、本当の惨さや悲惨さが伝えきれてないのは残念だ。