「【“百合、生きてくれ。”と時を越えて出会った彼は、私に手紙を遺して大空に飛び立った。”今作は母との齟齬、進路が見えなかった女子高校生が、特攻隊員の意を継ぎ、自身の生きる道を見出す作品なのである。】」あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【“百合、生きてくれ。”と時を越えて出会った彼は、私に手紙を遺して大空に飛び立った。”今作は母との齟齬、進路が見えなかった女子高校生が、特攻隊員の意を継ぎ、自身の生きる道を見出す作品なのである。】
ー 分かってはいたが、後半は涙を堪えるのに必死だった作品である。-
■百合(福原遥)は母(中島朋子)との齟齬を抱え、自身が進む道も分からず悶々と生きる日々。ある日、トラックに撥ねられかけ、傍に在った洞窟に入ると気を失い、気づくとそこは昭和20年6月の敗戦濃厚な日本だった。
そして、彼女に手を差し伸べてくれた男、佐久間(水上恒司)は特攻隊員だった。
◆感想
・百合が過酷な状況下、生きている事の大切さ、有難さを学んでいく過程が上手く描かれている。更に、戦争に対し、警官(津田寛治)に異を唱える姿も。
ー 彼女が街中で戦災孤児に食べ物を分け与えていた時に”もうすぐ、戦争は終わるから。”と言った事を警官(津田寛治)に聞かれ、咎められるも、”戦争に意味があるんですか!”と命懸けで異を唱える姿。
現代に居た時には、TVの特攻隊特集を興味なさげに切っていた人とは思えない。彼女の成長の証であり、真なる心を持った女性であることも分かる。-
・特攻隊員の男(水上恒司)に介抱され、彼らが利用していた食堂“鶴”の女将(松坂慶子)の店で働くようになった百合が、男から”彰”と呼んでくれ。俺も百合と呼ぶから。”と言われ彼に心惹かれていく様や、同じ特攻隊員たち、石丸(伊藤健太郎)、板倉、寺岡、加藤とも親しくなっていく。そして、店に魚を運んでくる千代とも。
ー 特攻隊員たちは、生き神様として特別な扱いを受けていた。それは何時特攻に出るか分からないからであるが、今作でも隊員が言っているが、可なり精神的にキツカッタらしい。それはそうだろう。夫々、愛する人が居るにも関わらず、気丈に振る舞う特攻隊員たちの姿。今作は、特攻隊員たちの夫々のキャラが立っているのも良かった。特に坊主頭の伊藤健太郎が演じた石丸の明るいキャラかな。ー
・ある日、彰が百合を、百合が一面に咲きほこる丘に誘うシーン。彼は、自身の故郷や妹の話をし、その後”こんな世の中ではなかったら、教師になりたかった。”と告げるシーン。
■特攻が決まった日、板倉が脱走する。彼を見つけた佐久間と百合。そして、他の特攻隊員たち。親子三代陸軍だった加藤は激怒するが板倉が、”恋人の16歳の女性が家族全員が亡くなり、彼女も寝たきりになって、自ら死を選んだ。俺は彼女を支えて生きたい。”と涙ながらに行った時に、誰も異を唱えず彼を逃がすシーンは沁みた。
・石丸に密かに恋心を寄せる千代の姿。
・特攻に出る彰、石丸、寺岡、加藤。寺岡は未だ会っていない赤子と妻の写真を、石丸は千代から貰った千代に似た人形を、彰は白い百合と共に大空へ飛び立っていくシーンも沁みる。そして、百合は気を失い、現代へ戻るのである。
<現代に戻った百合が、特攻記念館で見つけた彰の”百合へ”と書かれた封筒の中に在った手紙のシーンは、涙を堪えるのが難しい。
そこには、彼の百合に対し、愛する想いが、綺麗な字で綴られていたのである。
泣き崩れる百合。
だが、彼女は翌日から明るい顔で、母の為に“鶴”で習った鯵フライを入れたお弁当を作り、大学に行きたいと自らの意志を示し、進路表にも彰の夢であった、教師になる事を記すのである。
今作は、反戦映画でもあり、且つ稀有な経験をした女子高生の成長物語でもあるのである。>
◼️追記
普段はこのような事は書かないのであるが、【映画は自分の判断で、観るモノである。】今作品は私も含めた戦争を知らない世代に観て欲しいと思った作品である。現況下、世界各地で戦争が行われているが、特に今後の日本を背負って行く若い方々に観て欲しいと思ったのである。若い方々は私が知る限り、殆どの方々が戦争に対し否定的な考えを持っていると思っているが、今作品は戦争が再び日本で起こらない為に何をすべきかを、メッセージとして発信していると思ったからである。重ねて記すが、聡明で、今の政治に疑問を持っている若人に観て欲しいのです。今作品は決してお涙頂戴映画ではないと、原作者の女性の方の素晴らしいインタビューをたった今、読んだので、敢えて記します。
仰る様に、主人公・百合は、太平洋戦争末期にタイムスリップしたことで成長します。彰との恋愛を通して、彰の仲間である特攻隊ん達の心情を知ることで、戦争の理不尽と不条理を知ります。戦争の愚かさを知ります。
我々も、今の平和を維持するために、本作のような作品を意識的に観続けて、太平洋戦争を忘れないことが大切だと強く思いました。
多くの人、特に若い人に観てもらいたい作品だと思います。
では、また共感作で。
ー以上ー