劇場公開日 2023年8月25日

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「ある程度の知識を要する映画。予習してみていくのをお勧め。」エリザベート 1878 yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5ある程度の知識を要する映画。予習してみていくのをお勧め。

2023年8月27日
PCから投稿

今年287本目(合計937本目/今月(2023年8月度)26本目)。
(参考)前期214本目(合計865本目/今月(2023年6月度まで))。

 この映画を見ていろいろな感想はできると思うし、個々人のそれを否定するものではないですが、少なくとも「コルセットの是非」とかといったことを問うものではない、ということは明確に言えます。

 映画では明確に固有名詞が出てくる割に何の説明もないのでわかりにくいのですが、映画で描かれているのは、彼女と彼女の夫となるヨゼフ1世による、オーストラリア・ハンガリー二重帝国という特殊な成り立ちで成立した、「国王と国王の配偶者」というところが結構あり、この「二重帝国」に関してはかなりの知識が必要な映画です(映画内ではこれらの単語は1回しか出ないし、二重帝国についてそのあとの流れの説明もない)。

 ※ この説明がないのは、本映画はオーストラリア映画枠であり(より広く解しても、西洋一般程度)このことは常識扱いされているものと思われます。

 彼女の夫、つまりこの二重帝国の国王であったヨーゼフ1世は、この当時(1850~)の中では国王であった割に、当時、国王に一般的に求められていた「憲法成立」についてかなり後退した思想をお持ちの方で、「ドイツやフランスのような国民の権利を認めるのはけしからん」ということで、なんと300年も400年も前の「王権神授説」を持ち出して、19世紀中旬~の時代にはちょっとあり得ない憲法を制定させて国中が混乱させてしまった部分は確かにあります。

 これに対して映画内で描かれているエリザベートは「自由にさせるものは自由にさせればいいじゃない」という考え方であり、そもそも「性格が違っていた」のです。そう書くと、ヨーゼフ1世をはじめとする側近たち「だけ」がそういう思想だったのか?と思われるかもしれませんが、オーストリア・ハンガリー帝国(二重帝国)の特殊性故(世界史ではこのようなことを経験した(近現代の国は)ここがはじめてだった)から、「国王がそうお考えなら仕方なし」というのが多くの(宮廷内での)考え方で、そこでエリザベートが浮いてしまった点はどうしてもあげられます。映画内ではこの点明確な描写がないのですが(この憲法制定の話等出ないため)、エリザベートが心を病んだのは、「考え方が違う一人が宮廷内で取り残されてしまって誰に相談するのも難しかった」という部分は言えます。

 映画内ではこれらの説明が一切ないので、「150年ほどの近現代といえる40代女性の美しさ」「コルセットはありかなしか」というような行き方になってしまいそうなところ、映画ではその話は一切出ないので注意です。

 採点にあたっては、以下を考慮しています。

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 (減点0.3/高校世界史での当該部分を復習しておくのが前提になってしまう)

 ・ ここは復習が必要かな…という気がします(「オーストリア・ハンガリー二重帝国」という語句がわかる方には不要?)。一つの目安にどうぞ。

yukispica