「独創的かつ超個性派エッジ集団「A24」の呪縛に囚われなければオッケーな作品です♪」インスペクション ここで生きる 松王○さんの映画レビュー(感想・評価)
独創的かつ超個性派エッジ集団「A24」の呪縛に囚われなければオッケーな作品です♪
以前から興味があった作品で観た人の評価がやたらと高いこともあり、やっと鑑賞しました。
で、感想はと言うと…正直まあまあ。
個人的にはもう少しいろんな部分でハードでも良かったかなと。
観る前からハードルを上げていたのとあの独創的かつ骨太で尖った作品を輩出し続ける「A24」が制作しているとあれば、おのずの期待値も上がるし、ハードルを上げてしまうのはしょうがない訳で。
だからこそ、もうちょい理不尽で不条理でハードコアであっても良かったかな~
ゲイであることから母親に捨てられ海兵隊に入隊した青年が自らのアイデンティティを貫こうとする姿を描かれてますが、母親に見捨てられて10年間1人で生き、ホームレスになってしまうまでの考察と言うか葛藤がはしょられていて、何故こうなった?感が強い。
息子と言えど、ゲイとしては理解と受け入れられないのは致し方無しとしてもそこにフレンチが反発して家を飛び出してしまう点が描かれてないから、単にスレ違いだけに見えてしまう。現に家に出生届の件で訪ねたときでもとりあえず家に入れている点で“ん?見捨てられていたんだよね??”と思ってしまうんですよね。
自身のアイデンティティと現状からの脱却から一念発起して海兵隊に志願するが、ふとしたことからゲイであることがバレてしまい、周囲の差別が巻き起こるが、個人的にそんなにゲイであることがこの時代(2005年)で珍しいのか?と考えた。
入隊直前で同性愛者か?と問われた時点で同性愛者の入隊はある程度トラブルの種になると思われることは予測できるが、今の時代程のLGBTQに寛容で無くても、全く無い訳でないと思うので、直接的なトラブルが起こらない限りここまで差別が起こるのか?と考えてしまう。
海軍よりも遥かに厳しい海兵隊たがらこそと言われればそうなのかも知れないが、だからこそもっと直接的なトラブルやそうなる過程や前例なんかを入れた方が良かったのでは。
監督のエレガンス・ブラットンの自伝的な物語の為、そういうものと言われればそうなのかも知れないけど、昨今のLGBTQに対しての理解ともっとエゲつない差別が描かれた作品があるだけに、描写的にはそれほどでもないかなと感じてしまうし、フレンチのちょっとした行動や妄想を鑑みるとちょっと全部肯定的には見れないんですよね。
海兵隊の訓練や上官の命令も思っていた程酷く感じなかったのはいろんな作品でもっとえげつないのを観てるかなのかな?と考えてしまう。
ただ、必要以上にハッピーエンドや過剰なドラマ性を組み込まなかったのは、A24のらしくないと言えばらしくないw
人間の闇の部分をこれでもかと組み込むことに長けているだけにw、ちょっと意外だけど個人的には評価も出来ます。
フレンチを演じるジェレミー・ポープの演技が光る作品でこれだけの内容を95分でまとめたのも良い。
単にゲイを腫れ物を触る様に扱うのは今の時代にそぐわないし、今から約18年前の設定でもちょっと違和感が感じる。
もちろんLGBTQの全てを知っている訳ではないけど、1人前の海兵隊員に育て上げる行程とLGBTQ問題をどう上手く組み合わせるかを悩んだと思いますが、自伝的作品なので落としどころが難しい。
あと、フレンチが海兵隊入隊前に同じセクシャルマイノリティの老人から送られた言葉とラストの上官の言葉は上官としてフレンチを見てきた言葉としてベストな言葉選びでどちらも印象深い。
母親を認めて欲しいがゲイの息子は受け入れられない。だが海兵隊に入った息子は認めてる。
母親の葛藤もフレンチの葛藤も簡単に答えが出る訳ではないだけにこのラストがモヤッしながらもA24っぽくて良いw
A24らしくないけど、ちゃんとA24している。
ツッコミどころもありますが、A24の呪縛に囚われなければきちんと評価出来るかと思いますw