裸足になってのレビュー・感想・評価
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アルジェリアの現実
冒頭から、アルジェリアの女性たちが直面する困難を実感させられる。
もともと男性至上的な家父長制がさらにイスラム的な戒律によって強化されてゆくような状況らしいアルジェリア社会において、今もなお過去の内戦が影を落としている。
そうした社会の被害者としての主人公と仲間の聾女性たち。彼女らが救いとして見出した踊りもまた権力によって奪われてゆくとは…
踊ることにかすかな喜びを見出すピクニックのシーンはあたたかく美しいが、ラストのあのささやかな、内々で披露された踊りを「希望」と思わなくてはならないのかと、そこに絶望してしまいそうになる。
が、それが現地の現実なんだろうな…
同監督の前作も、あまりにもなアルジェリアの現実を突きつけて、ほんの少しの希望を匂わせる程度だったので、現地のリアリティってものを見せつけられたんだったなと思い出した…
ダンス=意思表明
『パピチャ 未来へのランウェイ』の座組を引き継ぎ、製作総指揮としてトロイ・コッツァーが加わった本作品、楽しみにしていましたが、期待を裏切らないアップデートだと思います。
最近(と言うか、私がようやく気付いただけかもしれませんが)、割と多く見られる「説明シーンを端折って、むしろ速いテンポでシーンを切り替えていく」ような作品性ですが、特に前半の「事が起こるまで」は観ていて状況をつかみにくいと思います。そして、いかがわしい雰囲気たっぷりの中で見せられる「闘ヤギ」では、解りやすく趣味の悪いリングネームが山羊たちの側面にスプレーで「直書きゼッケン」されていて、まさに品のない「男性性」が丸出しです。
ですが、そこからモードが変わり「事が起きた後」は対照的。ムニア・メドゥール監督の真骨頂でもある感じがしますが、光、特に自然光の使い方が素晴らしく、そこに映し出される女性たちが皆さん神々しく美しい。更には、風、波、木々などの自然のさざめきと、彼女たちの呼吸(息遣い)が相まって強い生命力を想わせます。
それでも暴力や権力に物を言わせる相手にくじけそうになり、さらに追い打ちをかける残酷な出来事、もう立ち上がれなりそうな状況に抗うフーリア(自由の意)と、彼女と強い絆で結ばれる女性たちのパフォーマンスである「言葉以上の表現手段である手話」を取り入れた「ダンス=意思表明」が強烈で、トロイ・コッツァーの本気を感じます。
「希望のために踊る、人生のために踊る、けして立ち止まらない」という歌詞と、惹き込まれるリナ・クードリのダンスパフォーマンスは一見の価値ありですが、公開週のサービスデイ夜の回のシネスイッチ銀座はあまりに寂しい客入り。こういう映画に「負けない心」を思い出させてくれるって悪くないと思いますよ。
ダンスシーンが素晴らしい
彼女の強く鋭い眼差しが、焼き付いて離れない。
私たちの日常とそう変わらない、等身大の女性たちの生活。でも、日常の中にテロリストなどのイスラム圏の問題が根付いていることにハッとさせられた。
テロリストの捕虜にされていた(つまりレイプされていたということ)自閉症の姉妹、息子をテロリストに殺されたろう者の母等々…。
そして、自由を胸に他国へ羽ばたこうとした親友は、自由をその目で見ることなく、散ってしまった。
映画の中では、そんな暗い部分だけではなく、女性たちが楽しく暖かく触れ合い過ごす時間も描いている。いろんな女性がいるので皆で会話をしててもどこかチグハグだけど、本当に素敵なやり取りたち。とても愛おしい時間だった。
普段あまり見られない、アルジェリアでの生活が垣間見れたのもおもしろかった。
アルジェリアの料理だったり、闘羊の様子だったり、新たな知見を得られてよかった。
映画は亡き親友へ捧げるダンスで幕を下ろす。
彼女の強く鋭い眼差しが、脳裏に焼き付いて離れない。
*
パンフレットに、現代アルジェリアの社会・料理・音楽・ダンス等々について分かりやすく解説しているので、そちらも必見!
コラムページも読みがいのあるものだった。
私はアルジェリア情勢に詳しくないので、劇中で度々でてくる「恩赦」がなにを指しているのかいまいち分かっていなかったけど、
以下パンフレットより引用
”「暗黒の十年」と呼ばれる90年代は、一般市民を巻き込む形でイスラーム過激派と政府軍の間で戦闘が行われ、国中でテロが横行して20万人が犠牲となった。”
”この戦争状態を収めるため、1999年の「市民協約」以来、ブーテフリカ大統領が進めた施策が、作中でも言及されているテロリストへの「恩赦」であり、治安回復と引き換えに膨大なテロ事件の責任は曖味にされ、20年が経っても依然として癒えない傷、悲しみと恐怖が人々の心に隠されている。”
と、のこと。
誰かの参考になれば嬉しい。
考えるな!感じろ!的な作品。 本年度ベスト級。
3.2予告で期待値あげてしまった😅
喪失と再生の物語ではあるけれど……
必要とされる喜び
素人っぽい俳優、退屈、映画らしくない…
命と引き換えにしなければ得られない希望
映画に出てくる女性たちは皆、顔まで覆うブルカや髪だけ隠すヒジャブ(スカーフ)をしていなかったので、アルジェリアでは、宗教的な戒律が少なくとも女性の服装にまで厳しくは及んでいないようです。
だからというわけではありませんが、イスラム圏だから、というよりは北アフリカにある発展途上国のひとつの現実(危険を承知でも祖国を捨てることが希望となる人がいる)として捉えたほうがテーマが普遍性を持つと思います。
旧宗主国の言語であるフランス語が実質的に公用語のように使われているし、サッカーのジダンもアルジェリアからの移民。
北アフリカは、古くは古代ローマ、近世でもトルコやアラブの支配や影響を受けているし、我々にはなかなか文化的な背景や歴史的な理解が難しい。
でも、リハビリに関連する施設や職員の雰囲気は他のフランス語圏の映画と雰囲気が似ているように感じました。
たとえば、『最強のふたり』『スペシャルズ』など。
本作はコメディ要素抜きでシリアスな現実を浮き彫りにしていくので、被害者に寄り添わない警察も描かれますが、怒りの感情よりも、途上国の制度的限界、という理解のほうが先に刷り込まれ、重くて辛くなります。
言葉では伝えきれないけれど、どうしても伝えたい大切なこと。
フーリアにとって、その手段はダンスであったし、そういう強い思いは、周囲の人たちにも少なからず好影響をもたらす。
ジンワリと沁みてくる作品です。
海の向こうに憧れる
コンセプトはよかったんだけど…😥
良作
今週は大作があるが、個人的には裏本命枠。ただ惜しい点も。
今年249本目(合計900本目/今月(2023年7月度)35本目)。
(参考)前期214本目(合計865本目/今月(2023年6月度まで))。
第3金曜日は有休促進デーということでこちらを含めて3本です。
一流?のバレリーナが、ある事故に巻き込まれ、文化も環境も違う「別の舞台でも」バレエの環境してなじんていくという趣旨の映画です。
よく人名には何らか(どの言語でも)何らか意味があるとされますが「フーリア」という女性名は「自由」というところからくるのですね(フランス語圏では同じである模様)。
展開はかなりわかりやすく、いろいろ考えさせる問題提起型の映画ということになるとう思います。アフリカの国の中では比較的国として栄えているとされるアルジェリア(南アフリカの8割くらいと言われる)の中でも、ろう者といった比較的「社会的弱者」に対する配慮があったりなかったりという妙なちぐはぐさは、宗教分離はよく言われるところの宗教的な部分(ダンス・バレエを踊るのはけしからん、みたいな考え?)からきているのかな、とは思います。
この手の手話もの(ろう者を扱った映画)は、コーダ・あいのうたやほか、多くの賞を取ったこともあり高く評価されるとは思いますが、一方で「ろう者を扱わないと高得点にもならない」という「逆差別」が起きることがないこと「だけ」は留意してほしいな、と思います(身障者の障害区分の中でも一区分に過ぎないため)。
採点に関しては、明確に気になったのが下記です。
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(減点0.3/いわゆるバリアフリー上映でないことの意義が何ら見出せない)
・ 映画の展開的に90%以上がろう者との交流パートになりますが、日本での手話は、韓国・台湾手話とは一定の互換性がありますが(統治時代の関係)、当然アメリカやフランス、アルジェリアのそれとは何らの互換性もありません。
そしてこの映画の趣旨的にバリアフリー上映であってしかるべきものでもあります。
もちろん今は色々「過渡期」であろうと思いますが、映画の趣旨として「当然に」バリアフリー上映であるべきものがそうなっていないのは、「映画側の」やはり落ち度というか、配慮不足という点は否めないのではなかろうか、というところです。
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この終わり方はずるい!
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