裸足になってのレビュー・感想・評価
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ゆっくりとしか変わらない世界
主人公・フーリアの再生の物語。
本編にはフーリアの母も含め、90年代の内戦やその後の混乱で傷ついた女性達が登場する。彼女達とフーリアの交流を追って行くと、傷を持つが故の混じり気のない優しさが伝わって来ると同時に、心の傷との付き合いは一生続くのだという事をまざまざと見せつけられる。
深い傷が癒える、もしくは寛解するには時間がかかり、フーリアたちの「生きにくい」社会もまた、一人の人間の営みに比べればゆっくりとしか変わらない。
本編で描かれるフーリアの再生は、あくまで「はじめの一歩」なのだ。それに気付いた時、本作が伝える「生き抜くこと」「支え合うこと」の難しさや大切さがより真に迫ったものとして響いてきた。
「逃げる」≠「解決」 強い女性たち
生まれ育った環境が異なるから、お国柄の違いを感じる部分もかなりあって(何故あの男はあそこまで主人公フーリア(あるいはフーリアのお金)に執着するのかであるとか、あの男は元テロ犯とは言いながら、それは被害を受けた国からの見方であって、アルジェリア国内の同じ思想を持った者たちからすれば英雄なのかもしれず、だから警察も積極的に動こうとはしないのだろうか?でるとか)、モヤモヤしてしまう部分が多いことは否めない。
しかも全てのストーリーが完結しないまま作品は終了してしまっているようで、その後の展開は観る者たちそれぞれの感情に任されている感じがして、完結しないまま無言でスクリーンを後にしてしまった。
とは言え、声を失った主人公が立ち上がり前へ進み、母親も含めた周囲の人たちの協力を得ながら成長して行く、自分を苦しめた相手にも真っ向立ち向かう姿勢を示す、そんな目力に圧倒されました。
現状に悲観しない、自分にやれるべきことは沢山あるのだよと、背中を押されるようなそんな作品でした。
ラストのダンスシーンは良かったけど・・・
アルジェリアの現実
冒頭から、アルジェリアの女性たちが直面する困難を実感させられる。
もともと男性至上的な家父長制がさらにイスラム的な戒律によって強化されてゆくような状況らしいアルジェリア社会において、今もなお過去の内戦が影を落としている。
そうした社会の被害者としての主人公と仲間の聾女性たち。彼女らが救いとして見出した踊りもまた権力によって奪われてゆくとは…
踊ることにかすかな喜びを見出すピクニックのシーンはあたたかく美しいが、ラストのあのささやかな、内々で披露された踊りを「希望」と思わなくてはならないのかと、そこに絶望してしまいそうになる。
が、それが現地の現実なんだろうな…
同監督の前作も、あまりにもなアルジェリアの現実を突きつけて、ほんの少しの希望を匂わせる程度だったので、現地のリアリティってものを見せつけられたんだったなと思い出した…
ダンス=意思表明
『パピチャ 未来へのランウェイ』の座組を引き継ぎ、製作総指揮としてトロイ・コッツァーが加わった本作品、楽しみにしていましたが、期待を裏切らないアップデートだと思います。
最近(と言うか、私がようやく気付いただけかもしれませんが)、割と多く見られる「説明シーンを端折って、むしろ速いテンポでシーンを切り替えていく」ような作品性ですが、特に前半の「事が起こるまで」は観ていて状況をつかみにくいと思います。そして、いかがわしい雰囲気たっぷりの中で見せられる「闘ヤギ」では、解りやすく趣味の悪いリングネームが山羊たちの側面にスプレーで「直書きゼッケン」されていて、まさに品のない「男性性」が丸出しです。
ですが、そこからモードが変わり「事が起きた後」は対照的。ムニア・メドゥール監督の真骨頂でもある感じがしますが、光、特に自然光の使い方が素晴らしく、そこに映し出される女性たちが皆さん神々しく美しい。更には、風、波、木々などの自然のさざめきと、彼女たちの呼吸(息遣い)が相まって強い生命力を想わせます。
それでも暴力や権力に物を言わせる相手にくじけそうになり、さらに追い打ちをかける残酷な出来事、もう立ち上がれなりそうな状況に抗うフーリア(自由の意)と、彼女と強い絆で結ばれる女性たちのパフォーマンスである「言葉以上の表現手段である手話」を取り入れた「ダンス=意思表明」が強烈で、トロイ・コッツァーの本気を感じます。
「希望のために踊る、人生のために踊る、けして立ち止まらない」という歌詞と、惹き込まれるリナ・クードリのダンスパフォーマンスは一見の価値ありですが、公開週のサービスデイ夜の回のシネスイッチ銀座はあまりに寂しい客入り。こういう映画に「負けない心」を思い出させてくれるって悪くないと思いますよ。
ダンスシーンが素晴らしい
彼女の強く鋭い眼差しが、焼き付いて離れない。
私たちの日常とそう変わらない、等身大の女性たちの生活。でも、日常の中にテロリストなどのイスラム圏の問題が根付いていることにハッとさせられた。
テロリストの捕虜にされていた(つまりレイプされていたということ)自閉症の姉妹、息子をテロリストに殺されたろう者の母等々…。
そして、自由を胸に他国へ羽ばたこうとした親友は、自由をその目で見ることなく、散ってしまった。
映画の中では、そんな暗い部分だけではなく、女性たちが楽しく暖かく触れ合い過ごす時間も描いている。いろんな女性がいるので皆で会話をしててもどこかチグハグだけど、本当に素敵なやり取りたち。とても愛おしい時間だった。
普段あまり見られない、アルジェリアでの生活が垣間見れたのもおもしろかった。
アルジェリアの料理だったり、闘羊の様子だったり、新たな知見を得られてよかった。
映画は亡き親友へ捧げるダンスで幕を下ろす。
彼女の強く鋭い眼差しが、脳裏に焼き付いて離れない。
*
パンフレットに、現代アルジェリアの社会・料理・音楽・ダンス等々について分かりやすく解説しているので、そちらも必見!
コラムページも読みがいのあるものだった。
私はアルジェリア情勢に詳しくないので、劇中で度々でてくる「恩赦」がなにを指しているのかいまいち分かっていなかったけど、
以下パンフレットより引用
”「暗黒の十年」と呼ばれる90年代は、一般市民を巻き込む形でイスラーム過激派と政府軍の間で戦闘が行われ、国中でテロが横行して20万人が犠牲となった。”
”この戦争状態を収めるため、1999年の「市民協約」以来、ブーテフリカ大統領が進めた施策が、作中でも言及されているテロリストへの「恩赦」であり、治安回復と引き換えに膨大なテロ事件の責任は曖味にされ、20年が経っても依然として癒えない傷、悲しみと恐怖が人々の心に隠されている。”
と、のこと。
誰かの参考になれば嬉しい。
考えるな!感じろ!的な作品。 本年度ベスト級。
3.2予告で期待値あげてしまった😅
喪失と再生の物語ではあるけれど……
必要とされる喜び
素人っぽい俳優、退屈、映画らしくない…
命と引き換えにしなければ得られない希望
映画に出てくる女性たちは皆、顔まで覆うブルカや髪だけ隠すヒジャブ(スカーフ)をしていなかったので、アルジェリアでは、宗教的な戒律が少なくとも女性の服装にまで厳しくは及んでいないようです。
だからというわけではありませんが、イスラム圏だから、というよりは北アフリカにある発展途上国のひとつの現実(危険を承知でも祖国を捨てることが希望となる人がいる)として捉えたほうがテーマが普遍性を持つと思います。
旧宗主国の言語であるフランス語が実質的に公用語のように使われているし、サッカーのジダンもアルジェリアからの移民。
北アフリカは、古くは古代ローマ、近世でもトルコやアラブの支配や影響を受けているし、我々にはなかなか文化的な背景や歴史的な理解が難しい。
でも、リハビリに関連する施設や職員の雰囲気は他のフランス語圏の映画と雰囲気が似ているように感じました。
たとえば、『最強のふたり』『スペシャルズ』など。
本作はコメディ要素抜きでシリアスな現実を浮き彫りにしていくので、被害者に寄り添わない警察も描かれますが、怒りの感情よりも、途上国の制度的限界、という理解のほうが先に刷り込まれ、重くて辛くなります。
言葉では伝えきれないけれど、どうしても伝えたい大切なこと。
フーリアにとって、その手段はダンスであったし、そういう強い思いは、周囲の人たちにも少なからず好影響をもたらす。
ジンワリと沁みてくる作品です。
海の向こうに憧れる
コンセプトはよかったんだけど…😥
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