湖の女たちのレビュー・感想・評価
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西湖畔のサイコパスたち
端的に言って、意味が分からなかった。
濱中と佳代の関係はドSとドMのそれでしかなく、濱中がどこでM性を確信したかも不明。
徹底的に濱中が気持ち悪いし、湖畔の砂利に倒れ込んで慟哭する伊佐美も異常。
強引な取り調べが問題になってるのにスーパーで張り付き、自ら手帳を出すとか炎上じゃ済まんよ。
池田も、あの程度の根拠で家にまで突撃するのは阿呆。
薬害事件と介護施設の事件に関連性も感じないし、どこに焦点が当たってるかがハッキリせず。
カットの繋ぎも最悪で、回想入りも分かりづらい。
車から降りた濱中が次の場面で運転してたり、濱中の投石を無視してた佳代が次の場面で松本と路上で会ったり…
編集で削ったせいなのだろうが、これでOKなのか。
事故をどう処理したかでも印象が変わるのに、そこはカット。
薬害事件関係は基本台詞のみの描写で不鮮明なのに、レベルの高過ぎる性癖描写は丹念。
佳代の父や濱中の妻子の必要性も感じないのだけど、どちらも一人暮らしではダメなの?
恐らく服部の孫たちが犯人でいいのだろうが、肉親の勤め先以外で機器や勤務体制知りようもないでしょ。
ミステリでは絶対ないし、人間ドラマとも呼べないし、撮ってる人や演者は理解してるのだろうか。
まとまりと繋がりがない
介護殺人とほの暗い男女関係が数奇な交わりで繋がって…?!的な展開かと思ったら別に何の関係もなかった。
何か被害者の身元が面倒な立場のせいで国を巻き込む大事件のように思えたが別にそうでもないかもみたいなサスペンスの横で、変態と変態がくっついて離れただけの話で、特に何も複雑怪奇でもなく問題も解決せず全員何がしたかったのか分からないまま終わってしまった。
耽美な雰囲気だけ味わいたいなら美味しく頂けるかもしれんがサスペンスを添えるな。
もしくはサスペンスにSM耽美を添えるな。
味分からんくなるわ。
松本さんが折れずに強かであり続けたのが嬉しかったです。
私はやってない!聴いてない!のシーンでガッツポーズしちゃうわよね。星おまけしちゃう。
所轄署無能すぎないか?
原作未読です。
大疑獄事件ともいえる隠蔽された薬害事件と施設におられた百歳の老人の不審死を絡めテーマにして雰囲気で押しきろうとした映画。
俳優たちの演技は極上で、松本まりかの被虐性をそそる演技、対になる福士蒼汰も剥き出しになる本性を見せる役の振り幅は新境地と言っていい。が、肝心の設定が残念過ぎる。
薬害事件の元凶が戦前の731部隊に求めるのは、無理に無理を重ね過ぎである。令和の今に731部隊って何年経っているんだよって突っ込みそうになりました。
その不審死した被害者が731部隊関係者でその妻が三田佳子。その731が活動した中国東北部の現地に駐在して行ったということは年齢は90以上くらいのはずで若すぎないかと違和感を持った。
そのうえ福士蒼汰の所属先の署が無能すぎて許容範囲を越えます。
ここには鑑識がいないのか。指紋や録画をチェックして物的証拠を上げようしない。目立つのは取り調べで怒鳴るだけであまりにも前時代的過ぎる取り調べを繰り返し被疑者に訴えられる始末。
一番興ざめだったのは介護施設経験者として知っているが、これくらいの施設なら至るところにカメラが配置されているはずでそれをチェックしなかったのか、見たら一発で事件解決です。
評価として星3つ、つけましたが見るべきものは俳優の演技だけでした。
様々な社会問題を提起した奥が深く、かなり見応えのある作品
原作未読。謎は多いけど、時間を忘れてしまうほど見応えのある作品と感じました。
この映画は「楽園」と同じように事件を解決していく物語ではなく、事件を捜査していく上で浮かび上がる社会問題を提起することを根本に置いているのだと思います。
個人的な感想なので、正確ではないかもしれませんが、具体的に感じた社会問題を列挙します。
①警察による自白強要・SM支配
②薬害問題の隠ぺい
③障害者の生産性のなさの指摘
④高齢労働者の重大な過失の発生
①と②は映画を観れば分かると思います。
③は劇中の週刊誌の中で指摘されますが、障害者だけではなく、高齢者も生産性がなくなりますので、今回の老人死亡と絡めているのだと思います。
この映画の事件で、2人目の死亡した女性被害者はなぜか誰なのか明らかにされません。
ここがポイントなのでしょう。つまり、薬害問題は死亡事件に関係ないのだと思いました。
おそらく、女性記者が怪しいと感じた女子中学生の孫と一緒に住んでいる高齢の女性介護士が犯人の可能性が高いです。この介護士は孫と電話でやりとりしている時に、孫から日にちを間違えてぼけているのではと話します。
このことから、女性介護士の重大な過失による医療ミス(故意に人工呼吸器を外したのではない)と感じました。それで2人目の被害者の氏名が明らかにされないのであれば、整合性がつきます。これが④に該当します。
正確な感想ではないかもしれませんが、「楽園」と同じように事件解決ではなく、社会問題の提起を主眼としている映画と考えれば、多角的な考察ができ、面白い映画だと思います。
松本まりかがめっちゃエロい
湖畔に建つ介護施設で、100歳の老人生命維持装置が外れ亡くなった。殺人事件として捜査が進められ、担当する西湖署の若手刑事・濱中圭介とベテラン刑事・伊佐美佑は、施設関係者の中から無理矢理容疑者を挙げて、執拗に取り調べを行ない自白の強要まで行った。圭介は捜査で出会った介護士・豊田佳代に対して支配欲を抱くようになり、性的奴隷の対象とした。そして、事件を取材する週刊誌の記者・池田由季は、署が隠蔽してきた薬害事件が今回の殺人事件に関係していることを突き止めたが・・・さて犯人は?という話。
まず、刑事があんなクソみたいな恫喝、自白の強要などの取り調べして良いの?
そして731部隊の事と薬害被害を絡めるのはわかるが、裏事情が掴めた記者は何もしないの?
防犯カメラに中学生は映ってなかったのは伊佐美がウソをついてるのか?
濱中は佳代を最終的にどうしたかったのだろうか?
最初のシーン、佳代が湖畔で自慰するのが後に続くのはわかるが、父親からDV受けてたのが原因なの?
などなど、わからない事だらけ。
真犯人は誰?
なんかモヤモヤしたが、福士蒼汰や浅野忠信のクソ刑事ぶりや佳代役松本まりかのエロい表情など素晴らしかった。
三田佳子の若い時を演じた穂志もえかが色気があって美しかった。
論点が多すぎ何も回収されない作品
松本まりかが主演なので観たいと思い鑑賞しました。
100歳の老人が介護施設で殺害(かどうかも不明)され
たことを軸に物語が展開するかと思いきや、
いろいろと話が分岐していきます。
松本まりか演じる佳代の性癖。
福士蒼汰演じる濱中も同様に。
このあたりは『正欲』を思い出してしまう描写でした。
濱中と伊佐美(浅野忠信)の激しい審問
vs容疑者松本(財前直見)。
容疑者になったのも強引に。
松本は警察に絶望し自殺未遂をするまでに。
追って松本はリベンジします。
そした記者池田(福地桃子)vs国家権力。
冒頭の事件が実は第二次世界大戦下の日本軍による
人体実験とつながっていることを突き止めたがゆえに
押しつぶされてしまう。
同様のことで、かつて伊佐美もつぶされていたという
こともわかるんですね。
そして池田vs 服部の娘。
この娘が100歳老人殺人の犯人ではないかと池田は考えており、
というのも、対戦中の日本軍の凶行に類似しているから・・・なのですが
これも闇の中。
他にもあったかもしれませんが、だいたいこんな線が描き出されていき
回収されていかないので、???って感じなんです。
長尺の割には残尿感がすごくある、そして映画的興趣も感じられる余韻もないという
なかなかに手強い作品でした。
松本まりかがもっと体当たりで演技していたら、見方も変わったかもしれませんが
ちょっと風呂敷を広げすぎな感は否めませんでしたね。
これを観て何を感じるか、そこから何を得るか次第で評価も変わろうかと思います。
私はあまり得られるものはなかったです。
湖でナニしてたん!?微妙に何処をどう広げて、あれを魅せたいのか迷走している
湖の湖畔道って行ったことある?
一周を自転車などで周れて綺麗だよ。特に夕方、良いよね。
でも、あちこちで確かに車が微妙な間隔で止まってて・・・
なんでこんな山道にとか、ずっと停車してる車が気になってたけど。
さてナニをしているのやら。
今日はそんな「湖の女たち」を観ましたよ。
兎に角、介護師役-松本まりかさん、刑事役-福士蒼汰さん お二人の
怪しいいぃぃド変態振りな愛憎劇が観れますね。
もうね、綺麗な湖畔沿いで車止めてナニにしてんねん。おめ-らよ~。
絶対声上がりそう。
かつ、関西弁に成り切れんセリフが飛び交ってて
イントネ-ションが基本可笑し過ぎるやろ。そう思う。
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・介護養護施設 もみじ園での事件。ここで呼吸器外されて老人が死亡するのよ。
他殺か、自殺か。人工呼吸器のアラ-ムが鳴ってたか、無かったか。そこが争点なんだが 決して終始裁判の話でもない。
疑われる介護師。最後まで自分は遣ってないと主張し続ける。
介護師の言う事は 老人は聞かないが、看護師の言う事は聞く。この葛藤は良く分かったかな。そこは良かった。
・状況から担当介護師だと決めつけ、自白に持ち込もうとする 刑事二人。
見ていて コレはアカンやろ!!の自白強要。
湖畔の刑事アフォ丸出しやないけ。もうちょっとマシな描き方無いのかな。そう思う。現実乖離してるから胡散臭く見えてくるな。
・血液製剤認証疑惑とか、旧日本軍の満州人体実験やってた731部隊長 の話など実際の話をボカシ変えて入れて来てるが殆ど本事件に直接掠りもしない。
背景設定で捉えるならシッカリ入れて欲しいけどね。
・結局? 怪しい映像がネットで出て。学生犯行説で終わる気なの?
それって問題でしょ。調べれば良い訳で。それもしないし。
老人は亡くなれば良い?その行動定義の真意も正せていないと思う。
モヤモヤ感が爆発寸前。老人とはいえ人の命をなんだと思ってテーマ入れてるのさ。そう思うよ。
・結局、怪しい女と 先輩への抗議が煮え切らんダメダメ刑事との
アフォアフォ場面だけが時間結構割かれてて。
この纏まりの悪さ、何やネンと・・・この時間返せと思うわね。
折角、松本まりかさんが体当たりで脱いでたのに。。。。
あんな投げた演出ありきでは可哀想ですよ。
そりゃ女優業このままで良いのかって思いますよね。
湖の事件なら、他に旅行鞄に老いた母の死体を入れて
港に沈めた人の事件有ったでしょ。
そう言う事件展開を膨らませて問題提起とかの方が良かったと思うのだけどな。
ちょっと今作の展開は変な方向に迷走してて残念でしたね。
興味ある方は
劇場へ。
福士蒼汰さんが素敵でした、、、
見たことのないひんやりと美しい福士蒼汰さんでした!!!自然な演技にすっと作品に引き込まれて行きました。
抱え込んだ暗いモノは身近な弱者へと向かって行く。現実を抱えきれなった時に現れる自分。たまたま相手も同じ様で、引き合うものがあれば圭介と佳代の様な関係になってしまうのだろうか、、、。絶望的な関係のようで、、最後は湖が全てを受け止めてくれる。ラストのシーンのそれぞれの湖を見つめる表情には泣かされました。
激しい旋律の劇中の音楽と穏やかな湖の対比も素晴らしい。人間について考えさせられます。
福士蒼汰さんとまりかさんのそれぞれが自分の手で自分を癒やすシーンは必要だったのだろうか。。そこだけ少し理解し難いかも。特に福士蒼汰さんのあの場面は無くても…と思いました。表情すごく素敵でしたけどね!!!!
深い映画でとても良かったです。
規律と歪み
天職を見つけたはずなのに・・・
不器用な二人が出逢えたはずなのに・・・
愛に生きたいだけなのに・・・
四周を閉ざされた澄んだ水達は濁ってゆく・・・
俳優さんのネガティブ発言が気になって・・・
いやいやいやいや、まてまてまて!?
「怒り」の名演技の嵐を思い出しましたよ!!
ホント!!!
☆5です!!!
何も終わらない
主人公2人の澱んだ恋愛感情?を語るのかと思いきや殺人事件や昔の薬害事件も絡み相関図が広がりブレ始める。そのため2人を丁寧に描かず不思議なSM的なやり取りのみを観せられ結果的に歪な主従関係を築かれる。そして最後のボートでの2人の会話もなんだか不可解な展開を見せられた。
澄み切ったものに憧れた者たちもいつしかその心を何処かに忘れてしまい澱んだ心を薄暗闇の湖の水面の様になってしまうことを反映してるのだろうか。
ただ観てるものとして感情移入しづらいし、物語として誰も救われないし何も終わらない。
抑えられないムラムラな欲望。
湖近くに建つ介護施設にて100歳の老人が亡くなる事件が起こる、その施設で働く看護士と介護士とその事件を捜査する刑事達の話。
人工呼吸器を故意に停められ亡くなった老人、殺人事件と断定され刑事達の捜査が看護士、看護士に向くが…、その亡くなった時間に湖のほとりでアレをしてたと言えない豊田佳代と、その佳代にムラっとしちゃった濱中刑事のストーリー。
ごめんなさい!もう始まって早々に殺人事件どうこうでなく車内で始まる松本まりかのエロ描写を撮りたい監督のフェチ的な部分を感じてしまって(笑)
介護施設での事件、過去の50人近く亡くなってる事件を絡ませてるけど、結局まりかのエロ描写撮りたいんでしょ!しかも変態的に!と思ってしまった私。
上映時間140分ちょっとと長尺使うなら事件をハッキリさせるか、まりかの乳ぐらいは見たかった!もう1度書くが事件の解決より乳希望!(笑)
とりあえず本作、まりかのエロ描写があるから観れたけど、事件オンリーの話だったらちょっとキツかったかも!刑事達の取り調べはかなり違和感を感じたけどストーリー的にあんな感じだったんですね。
浅野忠信演じた刑事がかなりブラックだったけど彼のキャラは何か笑えたし、訴えられてるのになぜ余裕かます?福士蒼汰の蒼汰は作品とはいえどうだったのと気になるし、松本まりかさんの目、口、濡れ髪で出せる色気は凄いと思った。
(問題の核心部分に触れるのでネタバレ扱い)一人の法律系資格持ちの考察
今年190本目(合計1,282本目/今月(2024年5月度)24本目)。
(前の作品 「猿の惑星」→この作品「湖の女たち」→次の作品「碁盤切り」
※ 以下、検証、考察のために特定の固有名詞がでますが、それは検証・考察のものであり、特定個人や企業ほかを責めるものではないことを強く断っておきます。
さて、こちらの作品です。かなり難解なのではないかなといったところです。
多くの方にとって理解が難しいと思われる「薬害問題」「政治家の介入」「731部隊」ほかの論点に絞っていきたいと思います。
文字数がいくらあっても足りませんし、ストーリーについては他の方が書かれているので、考察の一助となればということでさっそく採点および考察に入ります。
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(減点0.8/「通達」の意味の誤用について)
・ 通達は、上級行政庁が下級行政庁に出すものであって、国民はそれに縛られることはありません(墓地埋葬事件)。 ※ 「編集部からの通達で~」のくだりのラストあたりの部分
(減点0.2/いかなる理解をするにしても複雑すぎる)
・ 以下の私の考察も一つの「こうではなかろうか」というもので正解とは限りません。ただ、おそらくそうではないかという筋のものですが、いずれにしてもここまでマニアックな内容は、映画を見ることを娯楽の一つとする一般的な立場では理解しがたいのでは…と思います。
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(減点なし/参考(考察)/この映画が述べる「薬害事件」「731」「圧力」などの意味についてのひとつの考察)
・ 以下は、行政書士試験合格者レベルの考察です(ある程度の基礎知識と文献調査が可能なレベル)。また最初にも書いた通り、考察のためのものであり、特定個人や企業を批判する趣旨のものではないことは強く断っておきます。
さて、多くの方はおそらくこの映画でいきなり出てくる「薬害事件」「731部隊」「厚労省からの圧力」といった、介護士の話とまるで違う話をいきなりはじめるこの映画は厳しかったのではないかと思いますが、個人的には以下のようにみました。
まず、「731部隊」は多くの方が知っている通り、第二次世界大戦中に存在した実在する部隊です。
ここで、この映画が指す「薬害事件」や「血液製剤」といった語が何を指すかは、映画内では明確にされていませんが、個人的には「ミドリ十字」(現在は廃業)ではなかろうかというのが見解です。
戦争終結とともに、731部隊の解散とともに日本は戦後復興していきますが、731部隊のおこなった「実験」はさておきも、そこで発達した医療の知識ほかは、戦後になっても一部、官民とわず活用はされています。実際に731部隊の元所属者が創立した製薬会社はいくつかありますし、厚労省(便宜上、現在の名称。以下全て同じ)の役人もまた、そうした知識をもっていました。実際問題、731部隊解散後に官民の「官」についた側も「医学知識の使い先」が問題になっていた(糾弾されるべき点)ことは知っていたはずです。
ところが、旧ミドリ十字のいわゆる薬害事件や血液製剤の事件は、会社側もいろいろ隠ぺいを図ったし、厚労省の役人もまた、一定程度の癒着があったことは薬害事件をめぐる裁判で明らかになっています(特定の会社を極端に優遇して他の会社の治験の審査を意図的に遅延させたり止めたりするようなことがあった)。そしてどちら(ミドリ十字や、他の類似する会社、官民の「官」の側)も裁判で裁かれたのはご存じの通りです。731部隊が発祥になる医療機関や医療機器メーカー、製薬業界の「すべて」が悪いのではないのですが、明確に知識を悪用したのがこのケースです。映画内では少し違った描写になっていますが、いずれにせよ血液製剤をめぐる薬害事件について厚労省やそのトップに近い立場の人が裁かれたのもはご存じの通り事実で、そこで問題になったのは単なる「口利き」や「わいろ」といった「ある意味」どうでもいいもの、あるいは「731部隊をお互い知っている中だからこそできたズブズブ関係でできた癒着」でもなく、「そうしたズブズブな関係をつづけた結果、被害者が拡大したこと」が問題になったわけです。
そして実史ではどちらもが裁かれ、実質的に国が被害者を救済する形となったことはご存じの通りですが、それは類似するケースでも参考にされたリーディングケースであり(B型肝炎訴訟ほか多数)、この事件は多くの方を傷つけた一方で、被害者に対してかなりの配慮がされた(補償金のほか、この事件が契機となって「免疫障害」という概念が内部障害の一つとして定まり一定の福祉制度(身体障がい者手帳の取得による税金の優遇ほか)がつくられた)経緯があり、今にいたります。および、これにより一定程度の救済が得られ「隠すべき存在」とされた薬害事件(というよりも、そこから発生した各種の感染症ほか)も、当事者が実名をあげて国会議員として立候補し、その後の薬害事件防止のため諸法律が整備されるように議員立法等で活躍したことは、誰しもがしることでしょう。
映画が述べている点はこうした部分ではなかろうかということはある程度の知識があれば推測がつきますが、ここまで求めるのは酷ではないのかな…といったところです。
期待度○鑑賞後の満足度◎ 80年の時を超えて満州と琵琶湖を結ぶインモラルな物語は731部隊の闇を孕んで人間の、否、日本人の原罪を問う。見事な映画化。吉田修一作品の映像化は大森立嗣監督に限るな。
《原作既読》
①吉田修一は好きな作家で、何作か読んでいるけれども、『湖の女たち』は盛り込んだ複数のテーマが上手く有機的に絡まっておらず(ケミストリーを形成していなくて)他の作品に比べ散漫な印象でやや残念な出来だというのか私の感想。
それが、映画にしたら逆に物語の輪郭がくっきりしたという不思議さ。文章で表現しきれなかったものが映像では表現出来たという面白さである。
原作の出来から余り期待していなかったが、映画が進むにつれ観入ってしまった。
②これまで観た吉田修一作品の映画化では、大森立嗣監督の『さよなら渓谷』が唯一感心できる出来で(次点は『横道世之介』かな)、後は余り感心したものがない(勿論、映画としてはどれも良くできているのだけれど)。
『悪人』は女優陣の演技は良かった(特に深津絵里の演技は素晴らしかった)けれども、妻夫木聡は熱演ではあったけれどミスキャスト。
『怒り』も、豪華なキャストが逆に作品の焦点を簿かしてしまったように思う。妻夫木聡がゲイに扮したパートだけが印象に残ったし、私が吉田修一作品の中で今までで一番好きなキャラクターである「愛子」も、宮崎あおいは好演ではあったけれど、「愛子」像を上手く血肉化出来ていたとは言えない。
③それに比べると、『さよなら渓谷』のヒロインは実写にすると説得力を持って具象化するのはかなり難しい女性である。
それをやり遂げた真木よう子はやはり凄い女優だと思う。
そして、本作の豊田佳代もそれに負けないほど説得力を持って血肉化する難しい役である。
それを松本まりかはよく演じていたと思う。
また、湖に飛び込む直前の松本まりかは大変に美しい。もともと美しいということではなく、映画の中のある一瞬映像の中でとてつもなく美しくなるのだ。(こういう瞬間に女優は女神になる。)
④731部隊が行ったことはナチスも行ったし、戦争の時はどの国も行うことかもしれない。
しかし、日本人も過去にこのような酷い行いをしたということは、日本人として忘れてはならない、と思う。
また、実験という名目の下で他人の命を弄ぶ神経(人間ではなく実験材料と思って自分の中の倫理観に蓋をするインモラルさ)、大人のやっていることは自分達もやっていいと思う子供のある種のずる賢さ、自分の所属する社会で不要だと思えば(敵もそうだし、生産性がないと見なす人間もそう)平気で排除・除外する人間のもつ原罪。
そういうものが、支配し支配されることでしか生を感じることが出来ない一組の男女を巡って万華鏡のように展開する。
⑤人間の醜さを見てしまった人間(自分の中の醜さも含め)は、もはや世界を美しいものとは思えなく又見えなくなってしまうのだろうか。
⑥若手に混じってのベテラン陣の好演も特筆すべきものがある。
浅野忠信は原作のイメージからするとミスキャストかと思ったし、関西弁はやや微妙だが、演技の迫力・腹芸がそれを忘れさせた。
大変屈折した役に説得力を与えている。
すっかりオバサンになった財前直見も大好演。
⑦三田佳子は、実年齢より老け役のせいもあるだろうが、すっかりお婆さんになって感慨無量。
だが、罪の意識を背負って70年間生きてきた老婆の年輪を感じさせる存在感で物語を締めている。
眠るように凍死している日本人少年とロシア人少女の絵は、自分の罪を忘れないために持ち続けていたのだろう。ささやかな贖罪として。
⑧大人の真似をして実験と称して自分と年嵩の変わらない少年少女を凍死させた(殺した)かっての少年は、数十年後日本医薬界の重鎮として君臨し自分に及ぶスキャンダルを圧力を掛けて闇に葬る程の悪であり続ける不条理さ。
731部隊に関係し、恐らく満州での凍死事件をうやむやにした軍人は数十年後に要介護老人として入所していた介護施設にて、数十年前に満州で行われた殺人と同じようにこの初会に不必要だと思い込む少年少女によってこの世から旅立たされる皮肉。
こういう形でしか罪が裁かれることが出来ないこの世の闇を吉田修一は描きたかったのだろうか。
それを湖面のような静けさでより分かりやすい形で告発したのが、この映画の存在価値かと思う。
世の中の不条理さ?本作をミステリーとしてすっきりとした犯人解明を求めるのは筋違いだと感じました。
自分は,原作を読んでいないので,原作勢の方たちとは少し感じ方が違っていたかもしれない。
本作は,
①刑事と介護士の恋の話
②介護施設でおこる連続殺人事件
③731の話
④警察の雑な捜査
の4つほどに分かれて,話が展開されていたと感じた。
それぞれの話が進んでいく中で,介護士と看護師の対応の違いによる世の中の不条理さ、生産性のない人間はいらないといった考えによる殺人など,一見綺麗に見える世の中は美しくない。考えに基づく答えの違う色々な事実が混在している。現代と重なるものを感じました。
最後は,映画を見ている人に問いかけるような形で幕を閉じ,考察型ホラーなどとはまた違う映画の形があるのだなと感じました。個人的には,感じ方が違うため,難しいですが,またまあだったかなと感じました。
最後はそれぞれの感じ方?
福士さん好きで観に行きました。
最初はどんな内容なのか、ハラハラしながら鑑賞しました。
内容的には重いものでしたが、どのシーンも眠くなる事なく、引き込まれました。
記者の池田さんのシーンが唯一、安心して見れる所でした。
昔も今も日本のどこかで、見えない所で、支配されたり、正しい事が曲げられたり、消されたり、支配に耐えられなくなりおかしくなったり、があっているんだろう、と。
途中からは人事じゃない、と思いながら観ていました。
三田佳子さんが出てこられた辺りから、ただ一つの事件じゃなく、人生を通して、歴史まで考えさせられる内容になっていき、ますます引き込まれ、
最後は犯人はもしや?と思いながらも曖昧な形で終わり、、あれ?と思いながら、劇場を出ましたが、
帰りながら泣きそうになった自分がいました。
観終えた時の感情に似た作品だと、だいぶ昔の
中居正広さん主演の私は貝になりたい、
を思い出しました。
最後のスキっとした顔のけいすけ、命の大事さを伝えたく子供にビンタしたかよ、意味深な顔の池田、これは世界は良い報告へ向かっているよ、そうしていこうよ、という訴えなのかと私は感じました。
最後の朝日の湖、綺麗でした。
海、じゃなくて湖なのが納得。
夜の湖に身を投げる佳代・・・まりかさん、美しかった!!
サスペンスとしてもミステリーとしても、出来が良くない。
ラブストリートしては、福士蒼汰は異常だけれど、その異常さを
受け入れる佳代にも、観客を納得させる映像が無いので、
松本まりかはなんで濱中刑事に翻弄され
支配されるのか?
理解は難しいです。
女性が男性に支配されるとか縛られる・・・
それって男性に愛(性愛)を感じて、
彼が歓びを与えてくれるからでしょう?
ならば佳代と濱中はどうしたって絶対にSEXする筈だし、
性愛表現がないのは、あまりにもおかしい。
だから切なさが浮かんで来ないのだと思います。
綺麗で可愛いまりかさんは介護施設の同僚や通ってくる薬品関係の会社の人とか、
幾らでも選択肢があるのに、なんで濱中なんだろう。
いい男ってだけでは、めちゃ分からない。
マイナーな映画だけれど、どうしても初日に観たかったんですよ。
原作・吉田修一。
監督・大森立嗣。
大好きな2人。この組み合わせ。外す訳にはいかない。
舞台挨拶を動画で見て期待値はマックスに盛り上がっていました。
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ここからはネタバレ全開で行きますので、観てない方は読まないことを
お勧めします。
湖畔に建っている介護施設で夜明けに100歳のお年寄りが殺された。
人工呼吸器のスイッチを誰かが切り、アラームが最大音量で鳴った直後に
誰かがアラームを止めたのだ。
その日に宿直だった介護士の松本(財前直美)が第一容疑者になり、
刑事の濱中(福士蒼汰)と先輩刑事の伊佐美(浅野忠信)から執拗に責められ、
自白を強要され調書にサインを迫られる。
この事件は証拠が、ない、
目撃者が、いない、
捜査は杜撰、
殺害の動機もない、
(看護師と介護士の待遇の違い?が原因とかいうが、看護師なんて
出てこないし)
ないないづくしで、こりゃあミステリーの要件を全く満たしません。
そこで犯行の日に同じく当直していた介護士の豊田佳代(松本まりか)にも
嫌疑がかかる。
警察上層部は疑わしい者は「誰でもいい犯人にしろ!!」と、
圧力をかけるし、浅野忠信は後輩の福士蒼汰を恫喝して頭を何度も
何度もこずく。
容疑者を怒鳴る・・・脅迫する・・・
この話、《いつの時代の話しなんだ!!》
今や捜査室の可視化とか、コンプライアンスの重視で、
捜査は録画されたり、
容疑者はまず弁護士を付けるのでは?
と“はてなマーク“で頭の中は一杯になる。
そして福士蒼汰は異常行動を連発。
佳代の家を夜中に訪れて、
「会いたかったと言え!!」
とか、
マイカーの中で佳代を裸にしてスマホで撮影したり、
(この映画、Gです、R15+ですらない、全くエロは期待しないで)
それでも佳代は濱中にに支配されて、
「私が殺しました」と自白までする。
一方で週刊誌記者の池田由季(福地桃子)は、50人が薬害エイズ事件で
亡くなった事件を
追っている。
この事件は以前・伊佐美刑事が追っていた事件で、
立件されないと聞いた伊佐美は
自殺を思い詰めるほどだった。
伊佐美の人柄がガラッと変わったのは、それかららしい。
これが伏線ね!!
この薬害事件をもみ消したのは厚生労働大臣で、その大臣も殺された老人も
1940頃の731部隊の人体実験に関わっていたらしい・・・
のだが、
これって本当に吉田修一の原作なのか?不安になった。
731部隊って80年も前だし、その関係者ってもう殆ど生きてないでしょ!
薬害事件も中途半端、
なんだこれ!!
大森立嗣監督もポロッと舞台挨拶で本音を漏らしていました。
なんで「国宝」の話が来なくて「湖の女たち」だったんだ・・・って。
松本まりかさんは、福士蒼汰や浅野忠信と隔離されていて、
会話も制限されていたとのこと。
6畳一間に寝泊まりしてて、優しい言葉もかけてもらえなかったとのことです。
同性として同情します。ある意味で精神的に追い詰められていたのね。
福士蒼汰さんは、脳みそ全部入れ替えるほどの体験をした・・・
と、言ってましたが、
残念ながら効果は限定的みたいですね。
狂気のカケラとか微塵もない、プラスアルファーの無い役者だ。
原作を大幅に改訂してみたらどうだったのだろう。
もっと濃厚なキスシーンとか欲しいと思った。
湖に佳代が身を投げるシーン。
ここはショッキングで、ちょっと良かったです。
夜の海とまりかさん、綺麗だった。
ここだけだ。いいシーンは!!
あと、介護士(根岸敏江)の孫の生物部の生徒が、
生産性のない老人には生きている意味がない・・・
その子供たちこそ、実は?なのですが、
この辺は、かなり分かりづらいですね。
BGMとして大音量で流れるチェロの無伴奏組曲。
ちょっととってつけたような芸術風味でした。
難しい ※めちゃくちゃネタバレしてます
舞台挨拶付き先行上映会で鑑賞しました。
上映より先に舞台挨拶がありましたが、出演者も監督も「言葉にするのが非常に難しい作品」「ラストのシーンはこういう風に考えて観てもらえると少し理解ができる、分かりやすいかもしれない」と、ご自身たちもこの作品と向き合うのがすごく難しかったんだろうな、という言葉を述べられていました。
松本まりかさんがインスタである役柄についてめちゃくちゃ悩まれていたことがあり、「彼女は何を考えているんだろう」「私には分からない、でも向き合わなければ」といった内容をアップされていましたが、この撮影中だったんだろうなと思っています(どこかで明かされていたり、別の作品だったらすみません)。
実際、ストーリーとしては「理解に苦しむ」とか「なんでそうなる!?」の連続です。
フィクションでなければ成立しない世界。ただ、でも、こういうものを内に抱えた人は世の中に溢れているんだろうな…とも思いました。
主要二人の出会いと関係性を植え付けたとも言える、佳代の肩にお灸をするシーン。男性が目の前にいるのに佳代の肩を平気でバ〜ン!と見せる服部さん(根岸季衣)がぶっ飛びすぎていて引いてしまった。(全体的にはぶっ飛んだ作品なので観ているうちに「まぁ序の口か…」となっていくけど。)
一つ大きな声で言いたいのが、松本まりかさんの役柄(の宣伝)。「容疑者として疑われる豊田佳代」として宣伝されていますが、あんまり容疑者じゃなくない…???明らかな容疑者は別にいるし、佳代を疑うのは他でもない濱中(福士蒼汰)だけなので、なんかもうちょっとうまい宣伝を考えてほしかった。
あと、最初に濱中が佳代の家に行ったとき、福士くんの足元に緑色のちょろちょろ動く謎の物体があります。虫にしちゃでかいけど、やけに光るので気になってしまって。物語のはちゃめちゃな流れに押されすぎて、「佳代が仕組んだカメラとかか!?」なんて思いましたが、ただああ映っただけのものだったようです。あれの正体がわかる方いたら教えてほしい……
「何を思った?あなたならどう結論づける?」みたいな終わり方でしたが、妻子がいるのにあそこまで佳代にのめり込んでいく・感情を一切隠すことなく佳代にぶつけていく濱中がただただ怖かった。こちらもきちんと(?)感情が揺さぶられはしたものの、あれでもその内妻子のいる家に普通に帰るんだよな…と考えると、「気持ち悪いなぁ」の一言で終わってしまいました。
出演者・スタッフのみなさんはものすごく大変だったと思います。本当にお疲れ様でした…!
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