「有名な社会的事件を短絡的につなぎ合わせてでっち上げただけの無内容な映画」湖の女たち 徒然草枕さんの映画レビュー(感想・評価)
有名な社会的事件を短絡的につなぎ合わせてでっち上げただけの無内容な映画
吉田修一の原作映画は何本か見ているのだが、おおまかな特徴としては大きなエピックとなった社会的事件を題材とする、いわゆる社会派の作家らしい。ただ、それらエピックが短絡的に結び付けられるだけで、ストーリーとして煮詰められていない気がする。気がする、というのは彼の小説を読んでおらず、確かなことが言えないからだ。何故、読まないかと言えば、単純にアホらしくて読む気にならないからであるw
今回の作品はその特徴が顕著で、ざっと数えただけでも、①旧日本軍731部隊の人体実験、②薬害エイズ事件、③湖東記念病院人工呼吸器事件、④障害者施設やまゆり園大量虐殺事件、⑤LGBTの社会的受容の可否問題、⑥自白偏重で出鱈目な刑事司法、⑦重大事件に対する政治家の圧力による捜査妨害、⑧メディア弾圧――が題材に使われている。
それに加え何故か、刑事と容疑者の濃厚なSM的関係がたっぷりと描かれていて、はっきり言って何が何だかわからない、というのが正直なことこだ。
一応、ストーリーらしきものはあるが、何しろ無関係な話題と話題を短絡的に、必然性もないまま繋げただけなので、それを追っても無意味である。
また、こうしたトンデモ話を担うキャラクターも、やはりトンデモとしか言いようがない。
福士演ずる刑事は妊娠した妻がいるのに、こともあろうに殺人事件の容疑者である女性介護士とSM的なドロドロの恋愛関係にのめり込み、何と取調室で濡れ場まで演じてしまう。こういう映画は初めて見たw
浅野演ずる先輩刑事は、ろくに捜査もしないで福士のケツを叩きながら容疑者に自白させることばかり考えている。
週刊誌記者らしい福地は、終始モゴモゴした話しぶりで、主張も何もなく、記者らしさゼロで、ある意味圧倒的に無意味な役割に、唖然とさせられる。
こういう素材だけを玩具のように組み合わせて、適当にダラダラ描くだけの小説や映画に、果たしてどんな意味があるのか、小生にはまったく分からない。あるいは、全体の中で一つか二つ、強烈なシーンが印象に残ればいい、という発想なのかもしれない。