「レース史上世界一過酷な夢への挑戦を、スクリーンでリアルに描き尽くした驚きの実話」グランツーリスモ 山田晶子さんの映画レビュー(感想・評価)
レース史上世界一過酷な夢への挑戦を、スクリーンでリアルに描き尽くした驚きの実話
「ゲームのチャンピオンから本物のプロレーサーになった」というニュースを聞いたことはあったが、詳しいことを知らずに何年も経っていた。そして、本作でその想像を超える実話の実態を改めて見せつけられた。
日本発の人気ゲーム「グランツーリスモ」を生み出したプレイステーションと、日本が世界に誇る日産。2008年、彼らはゲームのトッププレイヤーを世界中から選抜し「本物のプロレーサー」を育成するドライバー発掘プラグラムを立ち上げた。その名は「GTアカデミー」。
「楽しんでいるゲームをそのままリアルにやるだけだから簡単? いやいや無理!」と誰もが考えるだろう。死と隣り合うリセットできないリアルなサーキットには、運動技術・体力・精神力をとことん鍛え上げても過酷な世界。無謀な挑戦と思われながらも、「GTアカデミー」に選ばれた者たちは、プロレーサーという夢に向かって選ばれるまで訓練し続ける。ゲーム内で自ら車の組み立てをし、ロードレースの感覚を脳や反射神経などで掴んでいる彼らには「無理」という発想がない。むしろ自信に満ち溢れている。
この夢のために全力を捧げたのは、ビジネスマン、元レーサーのエンジニア、そしてゲームのプレーヤーたち。実話だからこそ、それぞれの威信をかけた様々な人との繋がりと各々の挑戦が、見る者の心を揺さぶる。
過酷なレースの場面は、これまでの「レース映画」に劣らない迫力とアクション。そして本作のプロレーサーの並外れた才能の描写を目の当たりにし、見せ場のシーンの音楽の上手さも掛け合わせテンションが上がるのだ。
プロレーサーに選ばれる主人公の家族関係も所々に描かれていてヒューマンドラマの面もあり、レースファンでなくても心に響く要素が多い。
久しぶりに、地道で豪快な映画を見た気がする。それにしても、あのNISSANのレーシングスーツはカッコいい。選ばれた人しか着用できないところも尊い。
見ていただければわかるが、このハリウッド映画では、例えばオーランド・ブルームが日産本社に来たりと実際の日本のシーンも多く出てきて、日本人だからこそ反応できるシーンが多いのも見どころの1つである。