「恋愛を「考える」のは難しい」四月になれば彼女は R41さんの映画レビュー(感想・評価)
恋愛を「考える」のは難しい
少々難解な恋愛作品
冒頭 若者の結婚観に対する調査報告の数字がやよいのセリフで提示される。
これこそがこの物語の言いたかったことではないのかなと思った。
「誰しも」という言葉が通用しなくなってきた昨今の恋愛事情
恋愛経験がない若者の数の方が多くなっているのかもしれない。
そんな若者たちに向け、恋愛を恐れるなという意味がこの作品に込められているような気がした。
恋愛とは、片思いであってもその終焉は「死」と同等の苦しみや悲しみが伴う。
その恋愛感情が本物であればそれだけ傷つき具合も大きい。
でも、経験していない場合、そんなものは経験したくないというのが今どきの若者の想いなのかもしれない。
ハナ
この恋は本物で、永遠的なものに違いないと信じた。
ハナはいつ自分の病気を知ったのだろう?
それがきっかけで世界旅行へ出かけた。
物語は彼女の手紙がナレーションのようになって進行する。
ある日母が誰か好きな人と一緒に家を出ていったこと。
母代わりになって父を支えてきたこと
その父に、ハナと一緒に海外旅行へ出かけてもいいかとお願いした藤代
父が見せた暗室の写真
たくさんの姉妹の写真
父の語らない思いは、決して言葉では表現できない娘たちへの愛情 そして「苦しみ」
「どっちも選べなかった」
ハナの言葉は、別れでもあった。
恋愛関係において、ハナがしたことは確かにそうなってしまうように思う。
ハナはやがて自身の病気を知る。
そして、やよい
獣医である彼女は、おそらく不眠症というのか絶えず逃げている自分自身を内面を知りたくて精神科にかかっていた。
そこで出会った二人
やよいの中にあった闇
「愛を終わらせない方法とは?」
刹那的思考が強いやよい
ハナが出掛けた海外から藤代へと送付した手紙
そこにしたためた思い。
やよいはハナの気持ちに共感したのだろうか?
それともハナとの違いを感じ、どうしてもその根源を知りたくなったのだろうか?
手紙からハナの居場所を突き止めて出かけていった。
やよいの話したように、それは自分自身を知りたかったから。
「自分の心がわからない」
これがテーマだろうか?
恋愛は自分に嘘がつけなくなってしまうが、嘘をつくことは可能だ。
1番目に好きな人 次に好きな人 あまり気にしたことがなかった人
それぞれと恋愛することは可能だ。
それが、自分自身に嘘をついているのかどうかは、あまり関係ない。
むしろ付き合い始めてから発展するまでの過程に「嘘」があるように思う。
興味のなかった場所へ行ってみたら結構良かったという感じだろうか?
ハナもやよいも、自分自身の本心を探し続けていた。
ハナはそれを「あの頃の自分探し」と呼び、やよいは「愛を終わらせない方法」と呼んだ。
最後にやよいは藤代に発見されるが逃げようとした。
やよいによって「愛を終わらでない方法」は、「愛を手にいれないこと」だとずっと思って生きてきた。
しかし、ハナの手紙によってその考え方は正しくないかもしれないと思ったのだろう。
結婚式場を探すという二人にとって一番楽しい時期に、やよいのナーバスは最高潮に達した。
この幸せの絶頂期で切ってしまうことで、それが永遠となる。などと思ったのだろうか?
ハナの手紙
ハナは死に場所を選んだ。
そこに家族の姿はなかった。
ハナにとって家族は一般的な家族であるに違いない。
ハナは自分の死に際し、端然と選択したのだろう。
あの選択できなかった自分は、一人で出かけた海外旅行で克服した。
ハナが家族と一緒に過ごさななかったのは、自分自身の中に見つけた本心
大好きな写真を仕事にしたい夢
サーフィンに挑戦したいこと
そして、恋愛という自分を動かす原動力に出会えたことで、また新しい恋愛をしたいと思えたこと。
妹が話したハナ
「姉は幸せが怖い人」
幸せだったと思っていた家族
当然いなくなった母
簡単に壊れてしまう「幸せ」
あんなにも簡単に壊れてしまうなら、最初からなくていい。
ハナはそう思って生きていたのかもしれない。
だから、「選べない」
選ぶと、その選んだ方が壊れてしまうと思ってしまうから。
余命
それが伝えた真実
あの頃の私 藤代を好きだった私 それに迷いはなかった私 迷ったのは「選べなくなってしまった」から
そして壊れた恋愛 それがもたらした別れ 余命宣告
いつか藤代と一緒に行くはずだった世界旅行
その夢を具現化させた藤代に対し「選べない」と言ったこと。
そうして永遠が一瞬で消えていったこと。
恋愛は誰かによって壊されるんじゃなく、自分自身で壊してしまうこと。
恋愛していたころの自分の輝き
心躍る毎日
この躍動感
やよいもまた、自分自身の躍動感に目を背けたくなったのだろう。
その根源を探しに出かけた先が、ハナのいる場所だった。
やよいもまた自分探しのためにハナを訪ねた。
ハナの話を聞き、夢を聞き、そこに自分自身を重ねて見た。
恋愛に対する抵抗感
傷つきたくないから、いつも本心を逸らそうとする。
壊れるのが怖いから、先に逃げてしまう。
さて、
藤代
なんとなく親の背中を見て医者になった。
「医者なのに、自分のことはわからない」
同僚は「やよいを救った」と言ったが、それはやよいの心のこと。
救われた心が、その救いから逃げ出した。
藤代も、女心がわからない。
「端然と恋愛できない」理由がわからない。
幸せになるのは、恐怖を伴うのだろうか?
ハナの形見として受け取ったカメラ
その中にあったやよいの写真
海辺でやよいを見つけ追いかける藤代
ハナのナレーションは「変わっていくことで寄り添っていける」と言っていた。
そしてこのタイトル
昔から誕生日が嫌いだったやよい
どうしてもナーバスになってしまう時期なのだろう。
そこに合わせて起きた結婚 そして過去
やよいの精神的な苦悶は4月になれば呼び起こされるように始まる。
恋愛を考えるのは難しい。
人それぞれの恋愛観の違いがある。
でも逃げていては経験できない。
恋愛とは自分に嘘を付けなくなってしまうものだ。
だから別れ、時にストーカーのようなことまで起きる。
そのネガティブなことが先行して思い浮かぶかもしれないが、誰かに「好き」と思われることの幸せ感は素晴らしい。
恋愛を経験しないことは、人生のほとんどを捨てたようなものだろう。
この物語はきっとそんなことを言いたかったのだろう。
こんばんは。
R41さんは原作既読ですか??
とても素晴らしい映画の観方(見方)ですね!!
こんな風に感じられる感性が素敵過ぎます!
ワタクシは。。。映画の観方も人間としても未熟者なので、本作の上辺だけしか見れず、あまり響かず残念でした。
でも、R41さんのレビューを拝見して、この作品の良さを分かった気がしてきました。
ありがとうございます♪
こんばんは✩︎⡱手に入れなければ失う悲しみも知る事なく終わらせずに穏やかに生きていけるのかも知れませんが、やよいと藤代が終わらせない方向に一歩踏み出してじんわりと心に響いた作品でした。また観たくなりました(^-^)