「P以外になれば川村は」四月になれば彼女は 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
P以外になれば川村は
川村元気はプロデューサーとしては現在邦画屈指かもしれないが、監督・小説家・原作者となると…。
小説デビュー作及びその映像化『世界から猫が消えたなら』はピンと来ず。監督デビュー作『百花』は初見時は採点4付けたが、今思うと…(キャストの熱演に助けられた)。脚本担当したドラえもん映画も悪くはなかったが…。
人それぞれの好みかもしれないが、これと言った秀でた作品に欠ける。
川村元気が“恋愛なき時代”に向けたベストセラー恋愛小説。その映画化。
恋人との結婚を控えた精神科医の藤代。
彼の元に送られてきた学生時代の恋人・春からの手紙。当時伝えられなかった想いが綴られ、藤代もまた思いを馳せる。
そんな時、今の恋人・弥生が姿を消す。彼女との新しい愛の日々にも思いを馳せ…。
かつての愛。今の愛。
二つの愛の間で思い悩む。美しい思い出か、悲しい想いか、痛々しくもある今か。幸せな日々も。
愛の喪失、苦しみ、尊さを、リリカルな演出、美しい映像で紡いでいく。
佐藤健、長澤まさみ、森七菜の好演。
情感たっぷりのラブストーリーだが、しかし本作もまた個人的に想いが伝わって来なかった。
これまでの原作作品や監督作品も、自分の感性に酔ってる気がする。
岩井俊二や新海誠も感性光る映画作家だが、それらとは決定的に何かが違う。
見る者を引き込ませる世界観と言うか演出力と言うかストーリーテリングと言うか魅力と言うか、それらに欠ける。
監督とプロデューサーの力量かもしれないが、川村元気だって映画製作に携わるプロなのだが…。
愛に悩む佐藤健。ファンには萌えポイントだろうが、演じた役柄はただの煮え切らないネガティブ男にしか見えない。
愛にさ迷うが、そもそも愛に真に向き合っているのか…?
人物的にも感情的にも薄っぺらい男が自分を悲壮的に見せてるにしか見えず、全く感情移入も…。
姿を消した恋人を探す。もっと自分から躍起になって行動するのかと思いきや、終盤旧友から教えられ会いに行くってのも…。
なので自ずとかつての恋人と現在の恋人、二人のヒロインに頼るしかないのだが…。
長澤まさみも森七菜も魅力と好演を魅せてくれる。が、やはりキャラ描写に疑問符を拭えない点も…。
学生時代の写真部の後輩だった春。彼女との日々は輝き煌めき、儚く…。
二人で海外旅行を約束するも、突然キャンセル。そして別れ…。
その後久しくして今届いた手紙。春の想い、その後の彼女の事。何となく予想は付いたが…。
本作のキーとも言えるポジションだが、しかしどうも心情が分からず…。それに過去とは言え、佐藤健と恋人役というのもいまいち釣り合わず…。
長澤まさみとだったら年齢的にも合う。現在の恋人・弥生。獣医。動物と結婚するんじゃないかというくらい動物好き。
人に対しては不信感。ある事が原因で不眠症に。それがきっかけで通院、藤代が担当医に。
何処か似た所や通じ合う所を感じる。やがて付き合うように。彼女との日々はしっとりと寄り添い合うかのように。
愛とは不思議なもので、関係が深まると心が離れていく事も。すれ違いが多くなっていく。
彼女の言葉。愛を終わらせない方法。一人でいる孤独より、二人でいる孤独。ハッとさせられた。
そして姿を消した。
弥生が姿を消した理由。春の秘密。
本作一番のハイライトであろうが、何て事無かった。伏線とか意外な驚きも何も無かった。
ホスピスに入った春。それを知り、弥生は会いに行っただけ。
この時の心情こそ見せ場なのだろうが、ここも…。う~ん…。
お互い素性を知り、不甲斐ない男にしっぺ返し!…だったら面白くなったろうが、さすがに別の内容になってしまうか…。
最後も予定調和のハッピーエンド。
三者三様の愛の迷いを描くも、結局何だったの…?
海外も必要あった…?
タイトルの意味も。四月になれば彼女は…何だったの??
物語も各心情も何もかも。
全く伝わるものも魅せられるものも無かった。
感性の違いなんてもんじゃない。
ただ単に、川村元気とはプロデュース以外とは合わないだけかもしれない。
自分をみつめることを避けていた2人がはじめて動き出す。
それをみるまでは、確かにずっともやもやしました。
余命を意識した春の行動がもしなかったら彼らはずっと別の道にいたでしょう。
かと言って、その後はどうなるのか
わからない感じも残りました。