「ファインダーを覗く春の瞳に映ったもの」四月になれば彼女は Uさんさんの映画レビュー(感想・評価)
ファインダーを覗く春の瞳に映ったもの
原作は未読です。
空と地、風と季節を包み込む映像の濃やかさと美しさに圧倒されて、しかしそれに比べて、この作品のテーマとなった愛への問いかけが、どうしても「作り物」にしか感じられなかった。
◉喪失までの儀式
過ぎ去った昔の恋と、消えようとしている今の恋が、哀しみの中で交錯する。と言うか、昔の恋が今の恋を侵食してきて、ところが煩悶は生まれても、明らかな争いにはならない。今の恋が昔の恋に寄り添ってしまう。海辺のホスピスで営まれる、人生を纏める儀式のような展開。
日が経って思えば、弥生(長澤まさみ)は、藤代(佐藤健)をこれほど深く愛した春(森七菜)に会わずにいられなかったと言う、衝動的だが、とても素直な心根によるものだったと理解できる。
◉あまりに虚無的な
室内も街角も全てのシーンに、影が満ちていたと思います。人生は光より影。幸せは壊れるけれど不幸せはもう壊れないから、愛が満ちそうになったら懐疑心を膨らませて、そこから逃げてしまおうと弥生は心に決める。「愛を終わらせない方法とは」と言う問いかけが、物語の一つのテーマになる。藤代と結ばれる直前で、黙って藤代の元を去る弥生。
しかし愛を失わないために、本当の愛を手に入れないと言うのは、ただの拗らせではないか。正直、あまり心地よいものではなかった。もう少し傷ついてからでも遅くない…と心中で叫んだりする。
◉叶わぬ恋を叶えようとした春の旅
最初に藤代と弥生の医療を通じた恋愛が描かれ、時を戻しながら春(森七菜)と藤代の写真を通じた恋愛が描かれた。
ファインダーを震えるような繊細さで覗く春の姿が瑞々しく、それが二人の恋の始まりと愛の深まりを語っていて、いや、私も思わずドキドキしてしまう。街路の樹々のそよぎや空から降る雨、時を経て湖や古都に向けられる、翳りに満ちた春の表情や語りの声が、胸に沁みました。話は哀し過ぎるのだけれど、そこに次第に安らぎに近づく過程は描かれたと思います。
森七菜さんの暗いけれど、絶望はしていない演技が非常に素敵だった。
もう一つの安息感。それはプロローグで結婚式場から帰る藤代と弥生の空気感、それからホスピスからマンションへ戻るエンディングの二人の雰囲気があまりに自然だったこと。
つまりいちいち問いかけなど発しなくても済む、目の前の関係に思い当たることが、愛に気がつくことなのかなどと、ふと思いました。
共感&コメントありがとうございます。
弥生と春の行動は、形こそ違えど、それぞれに必要なことだったのだと思います。共感しにくい部分はありますが、理解はできるなと思います。長澤まさみさんと森七菜の素敵な演技が、そこに説得力をもたせているように感じました。
Uさん
とても詩的で美しく、それなのに温かい気持ちの和む
レビューでした。素敵です。
エピローグとプロローグ。
2人は長年連れ添った夫婦の様ですものね。
あうんの呼吸で、無理がなくて、お似合いですよね。
長澤まさみが神経を病むようなタイプには
到底見えませんものね。
川村元気さん!!
時代を読むヒットプロデューサー。
本当に感動するラブストーリー(物語り)は、難病と神経症に
セックスレス(?)に精神科医に動物園の獣医(この設定がメチャ嘘くさい)
流行りもの全て入れてみました・・・みたいなヒットメーカーに
人の心を本当に動かせない・・・そこが全体に嘘くさいのだと思います。
でも若者の臆病な恋愛・・・少子化、晩婚化・・・など、やはり時代を掴んでるのかも知れませんね。悩ましい!!