「ストーリーを語らないセリフが秀逸」四月になれば彼女は 菜野 灯さんの映画レビュー(感想・評価)
ストーリーを語らないセリフが秀逸
長澤まさみ観たさに観たミーハーな動機だったけれど、脚本のセリフは特に含蓄があって、リアル。ストリーテリングとは関連のない言葉だけに揺さぶるものがあった。特に、弥生が動物と結婚した人の写真をみながら突然泣いてしまう場面はなぜ泣くの?という疑問の前に、こちらも泣きそうになった。幸せになるのが怖い、自分は幸せにはなれないと思い込んだような弥生のこころが溶けていくまでの転生の物語のように受け取った。
それは、春であったり、藤代であったり。人は結局、人に救われる、ということが今回の映画でもよく心に沁みた。この映画の秀逸だと思ったのはやはりセリフの含蓄さ。何もストーリに関連のない何気ない言葉がリアルで、思わせぶりでも、泣かせようとしているのでもないのがリアル。他者が聞けば、その人の心情とは時に何の関連もなさそうな言葉を聞かされることがあるから。
手紙というのは手書きの文字がその人の匂いや感情を生々しく伝えるもの。デジタルのLINEであったり、LINEの画像であったなら、あれほど伝わったかどうか。デジタル時代でも手紙は人に伝えるには有効なものだとこの映画を観ていて思った。なぜ藤代の現住所を知っていたのかな?っていう疑問が残るけれど、それは友達ツテに聞いたのかもしれない。
学生時代の友人ってかけがえのないものだなと。社会人になってからの出会いってなかなかピュアではなくなっているし、恋愛もこんな出会いであればいいなと思う。婚活ではこんな出会いはなかなか無いから。
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