「軽薄な男が何年経っても軽薄なまま…」四月になれば彼女は ころさんの映画レビュー(感想・評価)
軽薄な男が何年経っても軽薄なまま…
はじめに断っておきますと、佐藤健さんが「名優」かのように、鈴木亮平さんや神木隆之介さんあたりと同列で語られることに、私はそもそも疑問を感じています。
今作でも、随所に佐藤さんが「キムタク演技」的なものを発揮していた感は否めません。
ただ、それ以上に、原作でもそうなのかは未読なので分かりませんが、主人公・フジ(藤代俊)が、学生時代から現在、そして映画のラストにおいても、とにかく軽薄な男だったことに愕然としました。
ちょくちょく顔を出しているなじみのバーの店主から「安全地帯から、人のことをバカにしているだけ」と指摘され、ごく数回しか会ったことがないのであろう義妹(正確には、そうなる予定だった女性)から「結婚を決めたことがむしろ驚きなほど(愛情が感じられなかった)」と芯を食ったことを言われるフジ。
学生時代も、自分と同じように1人親という家庭環境の中、母親の役割を自らこなし、父親を非常に大切にしてきた彼女に対し、いとも簡単に「(自分と)一緒に暮らそう」と、彼女の父親に対する想い、父親の彼女に対する想いを置き去りにした提案をできてしまうフジ。
動物園の獣医である婚約者が想っていたことを理解しようとした証として出してきたのが、動物園にデカデカと張り出しているレベルの動物豆知識の披露。
根本的に、相手が何を考え、想い、自分のそばにいてくれたのかを感じとる能力が著しく欠けているように見えたので、業務的に精神科医はこなせたとしても、フジは誰かと共同生活をすることに決定的に向いてないように思いました。
ラストでは、再び婚約者とやり直す道へと進む感じになりましたが、数ヶ月、早ければ数日でまた別れを迎えるのではないかと。
作品全体としては、フジへのイライラ、もやもやが立ちすぎていて残念でしたが、それでも、登場シーンが少ないながらも仲野太賀さん、河合優実さんの圧倒的な存在感と説得力は一見の価値アリだと思います。
また、フジの学生時代の親友・ペンタックスは、中島歩さん史上、いちばん好きなキャラクターだったように個人的には感じました。