野球ユーチューバー有矢のレビュー・感想・評価
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野球好きの野球好きによる野球好きのための映画
わたしは野球は見るだけの人ですが、野球観戦では絶対観られない、選手かぶりつきのアングル、打者目線で空に向かって飛んでいく打球、土を蹴る音、川べりの練習場の鳥の声に至るまで、臨場感あふれる草野球のシーンは、まさにスクリーンで堪能するにふさわしいと思いました。試合後の打ち上げの居酒屋や、実家の蕎麦屋のシーンも雰囲気がありました。劇伴もよかったです。
一方、ストーリーと人物造形は、素材の味が生かされすぎで、もうちょっと調理してほしかったです。テンポはよかったですが、主人公のキャラの振れ幅が大きすぎて、途中でちょっと置いていかれた感もあります。タイトルにユーチューバーとあるのに、映画人から見たユーチューバーたちに対する冷ややかな感情が滲み出ているようにも受け取れました。ただ、長年磨いたプロの技と思い入れを投入して作った動画が、シロウトのポンコツ動画になぜか圧倒的な差で負けてしまうのは理不尽だし、悔しくて情けなくなる気持ちはすごく共感できました。個人的にはラストにどんでん返しが欲しかったです。
夢追人の行方
自分はスポーツ音痴で、この映画の野球のレベルを語るセンスを恥ずかしながら、持っておりません…
が、野球に興味が無い自分でも十分、楽しめる映画でした。
若い頃、やれなかった野球を中年になって、やり始める大谷。ネットで仲間を募り、強豪チームになっていくという。これだけでもかなり羨ましいと思いました。学生時代と違って、大人になるとなかなか仲間というものは出来ません。好きな事をやり、いい仲間が出来、しかも強いチームになって、いくという。ここから大谷は野球を職業に出来ないかと考え、YouTuberを思いつく訳ですが。これもかなり共感出来ました。誰だって、好きな事でメシを食って行きたいです。
映画の中で好きなセリフは大谷が有矢に
「人生、そううまく行かないさ、ただ、一生懸命、やっていれば、仲間はついてくるもんなんだよ」と言うところです。
この映画を見て、やりたい事は迷ってないで、やろうと思いました。好きな事がある、やっている、続けている という事は人生を凄く有意義にするはずです。
俳優さん達は野球を数年どころか、十年以上、やってらした方ばかりだそうで、そんな方達が演じている映画だから、自分はそんな風に思えたんだと思います。
タイトルなし(ネタバレ)
「高校球児のその後」を描いたヒューマンドラマでもありました。
高校球児の多くは野球の魅力から離れられず大学野球や草野球へと移っていくのでしょう。その中で、自分を大きく見せたかったり、人を信じたり裏切られたり…いろんなことがあるのでしょう。劇中の「僕の野球、いつ終わったらいいんだろ…」が印象的でした。野球ユーチューバーになるのも選択肢として示しつつ、「アフター高校球児」が描かれていたように思います。
また、野球のプレーの質が高く、野球経験者からオーディションしたと知って、納得。
今までの野球ドラマに感じていた違和感を感じることなく、「高校球児だった人が草野球をやっている」という設定どおりの野球のプレーを見ることができました。選手のすぐ近くから”水平に”撮影しているアングルが何回かあって、特にサードで捕球→ファーストへスローのシーンは自分がサード選手になったかのような臨場感で、かなり高揚しました。
スクリーンの中で俳優さんたちは、演技でなく普通に野球をしているように見え、彼らが持つ「野球」というスキルをいかんなく発揮できていたように思います。演技力はあまり高くないのかもしれませんが、その分「等身大」を十分感じられました。
更に、主演「有矢」を演じる侑真さんの、新人であるがゆえの過去の役柄に影響されない無垢さと彼が持つ透明感が相まって、多くの方は自分または自分の身近な”高校球児”を投影できるでしょう。
W主演の監督を演じるKいちさんの、年齢の割に自信なく生きる姿に、多くの中高年の方は共感できるでしょう。
20代の方も、40~50代の方も気負わずに「等身大のアフター高校球児」を感じられるのではないでしょうか。
多くの「もと高校球児」に見てほしい、そんな映画でした。
欲を言えば…
大変わかりやすく「敵」として設定されていたクーマンさんにもう少し感情設定があると人物像が膨らんだかなと残念に思うのと、時系列がわかりにくかったかなと思うので、次作に期待です!
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