高野豆腐店の春のレビュー・感想・評価
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ほのぼのとしたいい映画
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豆腐店経営の藤竜也。妻と死別し、店では出戻りの娘が働いてた。
自身の健康状態があまり良くないことを知り、娘を心配する。
で近所の友人達と共謀し、会社経営のイケてる男を紹介する。
駅前スーパーの担当者は藤の豆腐を世界で売りたいと思ってた。
でも藤は、それで常連客が買えないことを嫌がり、断ってた。
そして娘が再婚相手として連れて来たのは、何とその男だった。
藤は全く相手にせず失礼な態度をとり、怒った娘は家を出て行く。
藤は同世代の独身女性と親しかったが、その人は近々手術をする。
その遺産目当てで手術失敗を祈る親類に藤がキレて警察沙汰に。
身元引受人として娘と婚約者が来て、藤は先日の件を謝った。
娘は戻って来た。そこに上記女性が今から手術との連絡を受ける。
戸惑う藤の背中を娘が押し、急いで病院まで行き、励ませた。
1年後、2人は互いを励まし合う、さらにいい関係になってた。
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近所の映画館が台風の影響で長らく休んでおり、遠くまで行って見た作品。
久々の映画ってせいもあるだろうが、何ともいい映画やったな。
藤は職人気質だが、もうちょっと柔軟に生きればいいのにな。
でも歳をとってから簡単に変わるなんてできないんだろう。
ならば自分らしく生きていれば、それでいいと思う。
独身女性との関係は最高。私も歳をとって1人なら、ああいう友達が欲しい。
あと広島弁ってタメ口でも全然偉そうさがなく、いい言葉やなと思ったな。
高野豆腐店のお豆腐、食べたい
ここのお豆腐はきっと、美味しいんだろうなあ、とずっと思いながら観ていた。
藤竜也と麻生久美子が好演。
頑固おやじと出戻り娘の、互いに向ける愛情の話で、ほぼ思った通りの展開。
昭和の頃からある頑固おやじモノは、親父がまるでモンスターで不快。
わがまま自己中なこどおじが周囲に気を使わせて盛大に甘やかされているだけにしか見えない。
この映画の親父もそうかと思ったら大分現代らしく、頑固だが唯我独尊で君臨するでなく、同年代の彼女からの指摘には耳を傾けるし反省もする。自分が悪いと思ったら謝るし、周囲への気遣いもある。思いやりのあるいいオトコ。働き者だし。
親父と娘に実は血の繋がりがないこと、お前が娘で良かった、お父さんの娘で良かった、ありがとうと言い合うところは、予想通りなのにやっぱりじわっとしてしまう。
出戻り娘は自分に合った相手を見つけて第二の幸せに踏み出し、親父自身もようやく「自分の恋愛」を楽しめるようになって、満ち足りた感じ。
人間、いくつになっても幸せになれるんだと思った。
高野豆腐店は結局、東京に進出とか海外から実習生を迎えるとかもなく、親父は彼女と「結婚」せず、大きく変わることもないがそこそこ幸せな日常が流れているのがとても良かった。
年齢いってからの恋愛は、なまじ結婚などしないで、互いに対等な関係をキープしながら続けるのが良いみたい。
事前面接とか、リハーサルとか、病院の喫茶室のいざこざとか、やりすぎ。
こういうのを省いてもう少し短くしたらよかったのに。
たっちゃんとその仲間たちもちょっとうるさい。
そういえば親父さん、手術は受けないの?
みやちゃんみたいな噂好きのおばちゃん、いますね。
尾道ローカル感満載。
地域の人がふらっと寄れる喫茶店がある街って良いなと思う。
親父と彼女の年齢から、「戦争」「原爆」がふたりの共通体験になっており、風景や風情だけでなくその点でも尾道という設定に意味があったと思う。
高野豆腐店は混ぜ物なしの本来の豆腐を作り続けている豆腐屋さん。本物の豆腐を作り続ける父と、父の豆腐を多くの人に食べて欲しい娘。父娘ふたりをめぐる人の交流を描いたお話です。
地域発の作品はなるべく観てみたい方です。
そしてお話の舞台が「手作りの豆腐屋さん」。
豆腐は大好きです。 うん いいかも ♪・_・
というわけで、鑑賞してきました。
舞台は尾道市。
高野豆腐店。こうや ではなく たかの。
尾道といえば大林監督の尾道三部作が有名。
豆腐も名産なのか と検索してみましたが
これはそういう訳では無さそうでした(汗)
※ 尾道ラーメンが有名みたいです。
あとは海産物とか柑橘類とか。
で、高野豆腐店。
店主 兼 豆腐職人 高野辰雄(藤竜也)
店員 兼 職人見習 高野春 (麻生久美子)
父娘の二人で経営しています。
娘は一度結婚して東京に出たものの離婚。
尾道に戻って以降、豆腐作り修行中。
父は心臓に持病あり。奥さんとは死別。定期的に通院中。
娘は父の豆腐作りを広めたい。再婚の意志は「?」
そして豆腐屋の二人をとりまく人びと。
・床屋のオヤジ
・転職やのオヤジ
・タクシー運転手 etc
みんな、豆腐屋のオヤジの老後を心配しつつ
娘は再婚しないのか と気にかけています。
そんなある日
病院で心臓の検査結果を聞いた高野辰雄
心臓の血管が詰まっていると知らされる。さらに
手術しないと命に関わる… と告げられてしまう。…あらら
ふらふらと診察室を出る高野辰雄。
落とし物をしてしまうのだが、気付いて拾い上げ
声をかけてくれた老婦人と出会う。
その老婦人、名は 中野ふみえ(中村久美)
彼女も病気を抱えながら、清掃の仕事をして暮らしている。
偶然の出会いが続き、辰雄と親しく話をするようになる。
この二人の交流が、このお話の軸の一つ。
そして、心臓が良くない辰雄が、娘の再婚相手を探さねば と
仲間に声をかけ、ムコ探しをするようになるのですが
この婿探しに関わる話が、このお話の軸のもう一つ。
高野辰雄と高野春。
二人を巡る人間模様が細やかに描かれます。
◇
派手な演出もエピソードも無いストーリーですが
作品の根底を流れるテーマには重いものがあります。・_・
尾道といえば広島県。
ヒロシマといえば… です。
最初、高野辰雄は被爆二世なのか と思っていたのですが
劇中 ” あの雲を見た ” と本人が口にしていました。
あの雲 とは多分 キノコ雲。
当時5才くらいの子供なら、記憶に残っているかも。
この作品が2016年の話(※)だとして、1940年生まれ
(仮定ですが)の高野辰雄は76才。娘は40代半ば。
うーん、何となくそれっぽい感じかも。
(※ 商店街の横断幕に、2016年と書かれた物がありました)
春の離婚の原因も、そこ(春が被爆二世?)にありそうで
今なお付きまとう被害の実態(の一部)に、考え始めると
重苦しい感じになってしまうのですが…
それをどこかに吹き飛ばしてしまうのが
豆腐屋をめぐる「友人・知人」たちの明るさ。・-・
時に言い合いをしつつ、助け合う姿からは
「生きる」とはこういう事
そんなメッセージを受け取った気がします。
観て良かった。そう思える
昭和ノスタルジー感漂う人情身溢れるドラマ。
でした。
満足です。
◇あれこれ
■タイトルとエンドロールの背景は「豆腐」?
白地の背景の上に文字が表示されるので見易いなと
思っていたのですが、よく見ればこれ「豆腐」なのでしょうか?
小さな黒いツブが見えるのは、豆腐表面の気泡みたいに見えます。
最後列の座席で観たので、詳細が確認できませんでした。
■「○○屋」という表現
「豆腐屋」に「床屋」に「電気屋」…etc
いかにも昭和的な表現に感じられました。
頭に「場所」がつけば、もう立派に「固有名詞」です。・_・
「駅前の豆腐屋」
「商店街入口の電気屋」
「三丁目の風呂屋」 …etc
■気になるその後
・財産目当てでオバに接近してきた姪夫婦
→ 「1カ月以内にハンコをつかせる」とか何とか、とにかく
穏やかでない発言をしていたのでその後が気になってます。
・ニガリを入れ損なった豆腐
→ ぼーっとしていて藤竜也がしくじった「あの豆腐」
丸々無駄にしたのかなぁ。
それとも救済する手段があったのか…。うーん。
◇最後に
昭和の中頃、豆腐は近所の豆腐屋さんで買ってました。
水に沈んでいる豆腐を掬いあげ、持参した鍋に入れてもらい
その鍋を落とさないよう、慎重に家まで持ち帰るのが
子供のお仕事でした。はい。
そのお店で豆腐を作っていたのかまでは覚えていませんが
瓶のラムネも売っていたような記憶がうっすらと…。
だんだんと昭和も遠くなりつつあるようです。
☆映画の感想は人さまざまかとは思いますが、このように感じた映画ファンもいるということで。
豆腐愛
昔気質で新しい事には関心が無いガンコ親父と、豆腐の可能性を広げたい娘。二人とも、豆腐作りに関しては考えが一致していて、大豆とニガリだけで作る方法にこだわっています。気候に合わせて豆を選び、ニガリを投入するタイミングを見極める。真摯に豆腐に向き合い、出来立ての豆乳をじっくり味わう。その二人に恋の予感が……
豆腐作りに懸ける親子の物語としてはとても良い映画と思いました。
ただ、辰雄の悪友たちとのコメディ部分のセンスが古くて、安心して観れる一方で若い人には受けないかもしれません。
50手前の娘の結婚相手にアンチ巨人とかどうでもいいです。麻生久美子さんは綺麗なんだから、40手前の設定にすれば、縁談の話も、販路拡大の夢もしっくり来たと思います。
春が実の娘ではないとか、被爆の話を入れる為に2015年の設定にしたのは、要らなかったように思います。
【”儂の娘でおってくれて有難う。”頑固だが自らの気持ちに正直に生きる男の姿を周囲の温かき人達の姿と絡めて描いた作品。”日本人として、決して忘れてはいけない事”を裏テーマとして描いている作品でもある。】
ー 今作は前半は高野豆腐店を営む頑固で不器用な男、辰雄(藤達也)と娘、春(麻生久美子)を中心に、彼の長年の悪友たちとの関係性をコミカルに、後半はスーパーの清掃係の女性ふみえさん(中村久美)との関係を、”日本人として、決して忘れてはいけない事”を裏テーマとして描いている。ー
◆感想
・前半は、結婚して直ぐに離婚した春の再婚話で、辰雄と、彼の長年の暇な悪友たち(理髪店店主:徳井優、定食屋店主:菅原大吉、タクシー運転手:山田雅人、英語ペラペラの少しチャラい男:日向丈)は見合い相手の写真を多数揃えたり(で、辰雄はイロイロと難癖をつける。)昼間っから寺の境内で、何故か見合いの練習をしたり・・。
ー おバカで暇なオジサン達である。
だが、春が何故に直ぐに離婚したかが後半分かるのである。
又、辰雄と春の真なる関係も。巧い脚本であると思う。-
・で、イケメンで好青年のイタリアンシェフ村上(小林且弥)と春がお付き合いする事を期待していたオジサン達。(含む、辰雄。)
だが、春が選んだのは駅ナカのスーパーに赴任して来た“ちんちくりん(桂やまと)By辰雄”で、皆ビックリ。
ー 春が”お父さん、話があるの・・。”と切り出した途端に逃げる辰雄。分かるなあ。私も娘から一番言われたくない言葉である。
で、3人の気まずい料亭での食事。“ちんちくりん”が巨人ファンと分かり憮然たる辰雄。
可なり、大人げないです・・。で、春は怒って家を出てしまうのである。-
■辰雄は狭心症であり、病院に通ってステント施術を促されるが、拒否。そこで知り合った女性で、独り暮らしの”病気持ちの”ふみえさんと距離を縮めていく。
ー 中村久美さんが、品のある女性を好演している。そりゃ、辰雄の気持ちも傾くよねえ。-
・ふみえさんから手術前に電話を貰った辰雄が仕事着のまま病院に駆けつけるシーンや、ふみえさんの姪夫婦が、彼女の財産目当てで病院にやって来るシーンも印象的である。
休憩所で二人の”いっそ、死んじゃえば良いのに。”と言う言葉を聞いた辰雄がブチ切れるシーンでの辰雄の啖呵。
”一生懸命、生きようとしている人に対し、何だその言葉は!”スカッとしたぞ!
辰雄は口は悪いが、一本気で情の厚い筋の通った男なのである事が良く分かる。で、姪の旦那を投げ飛ばし警察へ・・。
・実は、中野さんは広島の被爆者であった。そして、春の本当の両親も・・。
ー この辺りから、物語は観る側に様々な真実を明かしてくるのである。
春の本当の父親が辰雄と同じ造船所で働いていて、不慮の事故で亡くなり辰雄が二人を引き取った事。
春の母が放射線による血液の病で40歳で亡くなってしまった事。
春が結婚した際に、相手の姑が春の血も汚染されているのではないかと懸念し、春が離婚した事。ー
・その後、反省した辰雄は、春と“ちんちくりん”じゃなかった婚約者に”あの時は済まなかった。と詫びるのである。
・和解した二人はいつものように、朝から豆腐を作る。辰雄は初めて春に”やってみないか”と言い、にがりを投入する作業を任せる。そして、ナレーションで春は辰雄の豆腐が如何に大豆の香りをキチンと残していて美味いかを語る。
そして、出来た豆腐を見ながら、辰雄は春に
”儂の娘でおってくれて有難う。”
と深々と頭を下げるのである。すると春は辰雄に抱き付いて号泣するのである。
ー 観ている方も、涙を堪えるのが大変なシーンである。-
■そんな事を中野さんに話しながら、瀬戸内の海を見る辰雄。
春の瀬戸内の海は穏やかだ。
桜も、キチンと咲いてくれるのである。
辰雄と中野さんは商店街の中のテーブルに座って、慣れない手つきで電話番号を交換する。
そして辰雄は、中野さんが且つて持っていたピアノリサイタルのチラシを懐から出しながら、”ピアノ、弾いてくれんかね。”と頼むのである。
ここは、私の勝手な解釈だが、あのストリートピアノは平和の象徴である”被曝ピアノ”ではないかと私は思ったのである。
そして、中野さんは、ストリートピアノを軽やかに弾くのである。
<今作は前半はコミカルに、後半は且つて原爆の影響で大変な目に遭った辰雄や中野さん達が、慎ましい生活を送りながらも真面目に手を抜かずに仕事をし、毎日を生きる姿を描くことで、人間の矜持を貫く姿が印象的な作品である。
それにしても、三原監督って良いオリジナル脚本を書くなあ。>
広島先行上映、藤竜也さんの魅力満載
尾道が舞台の本作、広島での先行上映かつ
三原光尋監督と主演の藤竜也さんが
舞台挨拶で登壇されました。
「たかのとうふてん」を何度も「こうやどうふてん」と
仰るユニークな藤さん😊
クールな印象のある藤竜也さんでしたが、なんとも
ユニークでちょっとシャイで失礼ながら
可愛らしさを感じてしまいました😊
見慣れた尾道の街並み
寂れゆく昔ながらの商店街を守る人々
不器用で頑固な父と娘
老いらくの恋
おじさんたちのまるでコントのようなやり取りには
劇場全体が笑いに包まれ
父娘の深い絆と葛藤には涙を誘う。
温かく、優しさを感じる素敵な作品でした。
2023年8月18日(金)公開です。
監督が「劇場で見て頂ける喜び幸せ」と仰ってました。
ぜひ劇場でご覧下さい。
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