劇場公開日 2024年2月16日

「主人公は死なない」ボーはおそれている 町谷東光さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5主人公は死なない

2024年2月21日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

笑える

怖い

毎度のことながら、事前情報はほとんどないまま映画を見た。
4年前に見て(あのころは映画館の席を半分にして回してたね)、奇妙だが記憶に残った「ミッドサマー」を撮った監督の作品で、主人公が「ジョーカー」を演じた役者…というくらい。新聞の映画評をいくつか読んではいて、尺が179分という長さに腰が引けたが、面白そうに感じたので映画館に足を運んだ。

飲み会の席では15分おきにトイレに行くこともある頻尿のおっちゃんである。
2時間程度の映画でもトイレに行きやすいように、出口に近い席に座るようにしている。
本作も、途中で席を立つ可能性が高いので、事前にトイレに入ってペーパーをクルクルと丸めて自前の尿取りパッドを作ってチ〇コにあてがって座席に座った…。
平日昼前の都心のシネコン。客入りは2割に満たない印象である。マニアックな映画である。広い劇場の真ん中近いいい位置に座り、周りに客もおらず伸び伸びと鑑賞できた。

さて本編だが…。
トイレに立つこともなく、3時間の映像劇を楽しんだ、楽しめた。
序盤から中盤にかけての、主人公が目まぐるしくピンチな状態に巻き込まれる展開が面白く、尿意を忘れるほどの面白さがあった――。

見終わってパンフレットを買おうか、と思って売店の棚を見るとサイズが小さい上に価格が1100円もしたので見せてもらうこともなく(見せてくれ、と言えばだいたい見せてくれる)買うのをやめた。
売店には映画雑誌FLIXの特集号が置かれていて、それを立ち読みした。それを買ったほうがおトクだろう…、それも買わなかったけど。
その雑誌の中で映画ライターが書いていたレビュー記事の見出しに「母の呪縛が招く不条理な地獄めぐり」とあった。
大富豪の母親と、母親と別れニューヨークのスラムのポルノショップが入る汚いアパートに住む息子…。なぜそんな親子関係になったのか、映画を見ながら想像するしかないのだが、このライターがいう(プレスからそのまま取っているみたいだが…)のも一面の真理。

まあ、そういう親子関係、母子関係との切り口で見るのも見方としては正解だろう。

ぼくは、この映画の設定含めて、全体の雰囲気がテリー・ギリアムの「未来世紀ブラジル」(1986年公開)に似ていると思った。僕のベスト1に推している映画。
未見の人は、こちらも比較で見てほしい。
アリ・アスター監督が生まれた年の公開作品なので、彼はもちろん後年見ているんだろうが。

主人公は瀕死の重傷を負い、なんどもピンチになるのだが、そこはアメリカ映画。死なないのです…。

★5つにしたいところだが、やや長いので半分減らしておく。

町谷東光