「Gift」北極百貨店のコンシェルジュさん ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
Gift
原作は試し読みで読んだくらいですが、70分と手堅くまとめられているアニメ映画でした。
絶滅種ことV.I.Aの動物たちが買い物に集う北極百貨店、そこで働く事になった秋乃。右も左も分からない彼女は最初はミスばかりだけれど、そんな中で仕事のやりがいを見つけていき、自分のやり方を確立させる…といったど直球のお仕事ムービーです。
秋乃さんはおせっかい&そそっかしいというしっかり者だけれど、それが裏目に出るシーンが多いコンシェルジュ見習い。自分も接客業を生業にしていますし、そそっかしい部分があるので、最初から彼女に共感しっぱなしでした。
困っていそうだったら話しかけにいきたいし、でもなんか躊躇っちゃうというのも分かります。その度に助けてくれる先輩や上司がいてくれる事で心が軽くなる経験も大有りなので応援上映だったら秋乃さーん!と声を出して背中を押していたと思います。
ワライフクロウの夫婦とフェレットの営業マンのパートは秋乃さんがどこに目をつけるかというコンシェルジュとしての役割が強く描かれていたなと思いました。ワライフクロウの夫婦をもてなしたいのに、羽ぶりが良いから中々上手くもてなせないフェレットに起点を効かせて奥さんが買わなかった方を買い揃えて渡すという作戦に打って出て、それを成功させるとい見事な仕事っぷりでした。"お客さんをよく見る"を実践して、しっかり成果を持って帰って全員笑顔になっていたのがとても印象的でした。
ウミベミンクの親子には互いが必要であろうものを渡すために秋乃さんが百貨店内を駆け回るスピード感が楽しめます。こちらでもよく見るを実践して、お父さんには見やすい懐中時計を、娘さんにはバッサリ切った髪の毛を隠すためのストールをと、自然に振る舞って気遣いをするという仕事っぷりを披露してくれました。
ニホンオオカミのカップルのパートでは、奥手なニホンオオカミの彼のプロポーズの手助けとして前進する秋乃さんとレストランの面々が協力して成功させようとする様子が描かれます。
マンモスのモーリーさんに話を聞いてもらって心が軽くなり、モーリーさんの作品を元に氷の中から指輪を落としてのサプライズ演出で一押しと多くの人と関わって成功させるという秋乃さんがより成長したなというのが強く描かれていました。
バーバリライオンのカップルの悩み事では自分ではどうしようも無かったものをベテランが助けてくれるという人の情の厚さを知れるパートでした。
カリブモンクアザラシのパートでは名前と性格にかけてクレーマーに当たった時にどうするかが描かれていました。自分もたまーに理不尽なクレーマーに当たる事があるので、かなり心がキュートっとなりながら見ていましたし、土下座を強要するお客さんなんて神様でもなんでもないので、先輩の華麗な手捌きで追い出してくれたシーンはかなりスカッとしました。
マンモスのモーリーさんの作品の展示会のパートでは見習い画家のネコさんが誤って作品を壊してしまったため、どうにかしてモーリーさんを元気付けられないかという締めのパートに入っていきます。
代わりにはならないけれど、奥さんと並んでいる彫刻を見せられては思わずモーリーさんもホロリ…。ツダケンの声の優しさがこれでもかってくらい伝わってきて沁みました。
ゴクラクインコのお母さんの要望はワンコインでプレゼントできるものというかなりの難題。そこで今まで出会ってきたお客さんと協力して、エルルまで巻き込んでの壮大な館内ムービーを送るというノーコストながら喜ばれるものに仕上がっていて昂るものがありました。
立派なコンシェルジュさんになって今日も新たなお客さんを迎えていく!という爽やかなラストも良かったなと思いました。
漫画タッチの絵を崩さず、そのままの状態にアニメならではの躍動感を加えたアニメーションの完成度の高さには目を見張るものがあり、現実と遜色ない美麗さを突き詰めるアニメーションとはまた違う魅力がキラリと光っていました。動物たちのデザインも人間味がありつつ、それでいて特徴を失っていないというのもお見事だなと思いました。
秋乃さんは基本的にジタバタしているので、動きの切れ味が凄まじいのもあって観ているこちら側もアタフタしてしまいそうになるくらいでした。
1本の作品でまとまっているのも好印象でしたが、ぜひシリーズとして見たい作品にもなっていました。また北極百貨店の日常が見たいなとほっこりさせられる作品でとても幸せでした。
鑑賞日 10/21
鑑賞時間 14:25〜15:45
座席 C-12