劇場公開日 2023年10月27日

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「花子の映画作りを通して描く生き辛い社会と普遍的な家族愛」愛にイナズマ みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5花子の映画作りを通して描く生き辛い社会と普遍的な家族愛

2023年11月1日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

知的

難しい

高評価作品なので期待して鑑賞した。力感溢れる作品だと思っていたが、非常に個性的な作品だった。主演の松岡茉優を筆頭にして、芸達者揃いの俳優陣なので、個々の役者の演技は光っていてラストまで退屈することはなかった。作品としては家族愛が際立つが、まとまりに乏しいバラバラな印象だった。そこに作り手の意図を感じた。

本作の主人公は折村花子(松岡茉優)。彼女は小さい頃から夢だった映画監督デビューを目前にして充実した日々を過ごしていた。そんな状況のなかで、彼女は、魅力的ではあるが空気を読めない男・舘正夫(窪田正孝)と出会い恋に落ちる。彼女の人生にようやく春が来たと思いきや、狡猾なプロジューサー(MEGUMI)に騙され、監督を降板させられた上、作品企画も横取りされてしまう。絶望した彼女だったが、正夫に励まされ、10年以上音信不通だった、頼りない家族(父と兄二人)を訪ね、彼らの協力を得て、夢への再挑戦を始める・・・。

満天の星空のような作品だった。個々の星(役者)は輝いている。そんな役者達で構成される各エピソードは星を集めた星座のようであり観客が線を加えること(考察)をしなければ明確な形(エピソードからのメッセージ)は分からない。

観客が線を加えるのを怠れば、エピソードの形は分からず、ただ星がバラバラに点在しているだけになる。役者達がバラバラに演じているだけの散漫なエピソードになる。家族愛のエピソードは星座ではなく月である。星空の中で際立っている。月の形には満ち欠けがあり、本作で描いた家族愛を観客がどう感じたかで、満月にも新月にもなる。月の形は変わるが月の存在は普遍である。家族愛が普遍であるように。

本作は、観客に委ねるところが多く、考えながら観ないと演者達の演技の輝きしか見どころは無くなる。集中力を高めて鑑賞して欲しい。それにしても、最近、観客に委ねる作品が多い。本作のような作品を観ると、作り手の強いメッセージシャワーを浴びる作品が恋しくなる。

みかずき
かばこさんのコメント
2023年11月21日

共感をありがとうございます。

満月になったり、新月になったり、時には隠れて見えなくても、家族「愛」が月のように普遍である家族は、理想ですね。
怠らずに考えても、相性が良くない映画もあるかもしれません。
委ねられる映画、ということは、受け取る側の感性を認め、どう思うかはおまかせしますという、作り手の懐の深さが不可欠と思いました。

かばこ
ニコさんのコメント
2023年11月4日

コメントありがとうございます。
テーマの読み取り方が人によって違ってくるところも、映画の面白さのような気がしています。その作品について考えたくなるか、考えを怠るかは観た人との理屈以前の相性も大きいというのが個人的に感じていることです。あとは、楽しめた方がお得ということ、それだけです。
星座のように意味を見出せたのは素敵なことですね。

ニコ
Bacchusさんのコメント
2023年11月4日

今まであまり上手いと思ったことがない俳優さんまで上手く感じました。

Bacchus
グレシャムの法則さんのコメント
2023年11月3日

本当に難しい問題ですね。
ポケモンやドラえもん、ワンピース、鬼滅の刃、コナン等々。
こういう動員力のある映画が劇場興行を支えている現実は受け止めたうえで、一般受けしない映画も作られなければいけないし…
私も元気なうちはマナーを守りながら映画館通いを続けます。

グレシャムの法則
グレシャムの法則さんのコメント
2023年11月3日

こんばんは❗️
テレビ(録画)や配信は2倍速やら飲食やらでマイペースで観れるし、飽きたら途中で観るのをやめてしまう人もいる。
そんな中、映画館はある意味、みかじめ料(場所代)まで払って約2時間観続けることを義務?付けられる(払った以上は最後まで観るぞ❗️とほとんどの人は思いますよね)稀有な空間。
なので、劇場用作品を作る監督やスタッフもそういう人向けに作ることが許される。
そういう違いがあるのでしょうね。

グレシャムの法則
トミーさんのコメント
2023年11月1日

共感ありがとうございます。
後半カメラもよく壊れたりして、映画はどうなった? 父の余命と本質、母への電話、家族再生とポイントも多くて、この辺が観客に委ねてるんでしょうね。

トミー