劇場公開日 2023年10月13日

「岩井俊二さんの作品を見たのは、この映画が始めてです。」キリエのうた あおさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0岩井俊二さんの作品を見たのは、この映画が始めてです。

2023年11月28日
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泣ける

悲しい

幸せ

岩井俊二さんの作品の世界観を知らなくて、始めて見たこの作品は、「楽しい」「嬉しい」など、眩しいような明るさはない作品で、こんな世界観なんだなぁーと、感じるものでした。

日常で感じるような「楽しさ」を感じることはあるものの、人の内側の醜さ、哀しさのようなものも同時に感じる作品でした。

岩井俊二さんの作品に触れるのはこの映画が始めてで、
後からキリエのうた、ラストレターと小説を読んだ上で思うのは、キリエのうたのテーマに震災があるからという事ではなくて、
岩井俊二さんの世界観が、少し重みのあるものなのかなと感じています。

心から叫んでいるように聴こえるアイナさんの歌は、特徴的な歌声で、被災を体験した女性の歌だと思いながら聴くとどこか、泣きたくなるような歌でした。
決して明るい映画ではなかったけれど、世界って楽しいだけではないので。登場人物から感じる人間らしさ、色んな人の物語がある中、どこかの誰かの一部の世界を見ているような世界観。
小説を先に読んでいた人とではまた、感じ方は違うのかもしれませんが、
小説で後から答え合わせが出来て良かったです。

夏彦との電話の最中、希(姉のキリエ)が風呂上がり服は着ていなくて、映画なのに何故?と感じつつ、震災や災害というものは予期せぬタイミングで起こるものだし、現実感を追求した結果なのかなと、感じもしたのですが、
いくら現実の世界のような雰囲気を感じる映画とはいえ、キリエは映画の中では妊婦の女性で、演じてるアイナさんは、妊婦ではない。
まじまじとお腹を眺める余裕などないような状況での映像ではあったものの、
もし現実感を追求した結果でのことだったとしても、お腹が見える描写をしてしまったら、「見た目での違和感」を、生み出さないかなと、映画を見ながらそこが少し気がかりだったので、
監督に、どういう理由での事だったのか、その部分に関しては少し聞いてみたくなりました。

※追記・・・
調べたら6つに割れた腹筋を、妊婦12週のお腹に見えるように映像の修正をしたという内容のものが出てきて
もう一度見て確認してみたくなりました・・・笑

映画の後、キリエのうた、ラストレターと読んで感じるのは、辛さ、重さもありつつ、人の温かさ優しさも感じる岩井俊二さんの世界観が、私はそこそこ好きみたいです。

あお