「企画力と製作手法は邦画界も見習うべき」マッド・ハイジ 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)
企画力と製作手法は邦画界も見習うべき
当サイトの新作評論コーナーに寄稿したので、この枠では補足的なことを書いてみたい。
R18+指定なのでまず年齢的な制限があるのをはじめ、エロありグロありで観る人を選ぶ映画であるのは間違いないが、この手のジャンルのマニアでなくとも、過去の名作・話題作のオマージュやパロディがふんだんにあるので、そうした要素を探したり映画好き同士で答え合わせしたりするのも楽しそう。評論では字数の都合もあり「スターシップ・トゥルーパーズ」「スター・ウォーズ」「グラディエーター」の3つしか挙げなかったが、ほかに「ランボー」シリーズ(ボウガンで爆弾付きの矢を放ち人体破壊するシーン)や「007 死ぬのは奴らだ」(悪役が体内に異物を入れられ膨張して破裂)あたりが思い浮かんだ。なお、プレス資料中のディレクターズノートでは「マッドマックス」や日本の「修羅雪姫」などのタイトルも挙がっていた。
ほかに資料を読んで興味深く思った点として、クラウドファンディングで約2億9000万円を調達したことは評でも紹介したが、「資金の流れはブロックチェーン技術で透明化され、出資者は収益に応じて配当が得られる仕組み」だとか。新しい取り組みなので、きちんと出資者に分配されるかどうかは現時点で不明ながら、クラファンのリターンで配当がもらえるという利点は出資者と出資額の拡大につながるポイントだと思う。「マッド・ハイジ」のクラファンには19カ国538人が参加し、出資の最高額は10万スイスフラン(約1450万円)だったそう。日本発でも、世界的に知名度のある比較的古いキャラクターやアイテム(新しいものは知財の点でハードルが上がる)を使ってジャンル映画の企画をうまくアピールし、さらに魅力あるリターンを提案できたら、海外から数億円規模を調達することも夢ではないはず。音楽分野ではネット動画やソーシャルメディアを活用して世界的なヒットを飛ばす日本の若手アーティストも増えていることだし、邦画界でもそうした新しい成功事例が増えるといいなと期待する。