青いカフタンの仕立て屋のレビュー・感想・評価
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青き衣
モロッコの町にて仕立て屋を営む夫婦と1人の青年が織り成すドラマ作品。
とにかく夫婦仲の良いハリムとミナ。観ているこちらまで笑顔になってしまうような微笑ましさ。
う〜ん、いつまでも仲良しの夫婦…ワタクシも築けたらなぁ。。
さておき、そんなハリムには秘めたる想いが。そしてミナも病に倒れ…。
終始、BGMらしいものもなく静かな展開。絵面もあまり変わり映えしないものの、寂しくも美しいモロッコの雰囲気や登場人物たちの魅力で飽きが全くこない。
序盤から何となくそんな雰囲気が見え隠れし…でもそういう作品ではないだろうと思いつつも、ミナも最初から気づいていた…⁉
…からの、恐れないで、はグググッと来ましたね。なんやかんや、そんな想いにハリム自身もずっと迷いがあったのかな。背中を押すミナの心に涙。
いつまでも続く深い夫婦愛と悲哀、そして少しの希望を感じさせてくれるような作品だった。
この映画が伝えてくれたことは沢山あるけど、それを言葉にして説明するのが無粋に思えるほど、 静かで繊細で濃密な122分間だった…。
この映画が伝えてくれたことは沢山あるけど、それを言葉にして説明するのが無粋に思えるほど、
静かで繊細で濃密な122分間だった…。
妻として、夫として、それ以上に1人の人として、
好きな人を愛する自由を、だれもがもっている。
今年の忘れられない一作に違いない。
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夫婦が互いをどう労り、どう敬い、どう愛するのかということはやはり夫婦間しかわからないことだと思う。(夫婦という形に捉われないパートナーとしても。)
私は結婚して8年目ですが、また10年、20年後…40年後にこの映画を観ると感じ方が変わるかもしれない。
病気で余命わずかな妻ミナが、決して可哀想な存在としてではなく、凛とした強さと脆さの両面をもつ存在として、生き生きと描かれているのが本作の魅力のひとつでした。
自分の人生を誰のためでもなく、自分のために生き、自由を失わない。そして、夫を理解しているミナ。
それに反して自分のことを認められず苦悩する、夫のハリム。
常にミナに寄り添い続けたハリムが選んだ"あること"には胸を打たれました…。涙が止まらなかった🥲
美しいラストカットにしばらく立ち上がれなかったです。
また、愛情と性愛とが絶妙なバランスで、描かれていたのも印象的でした。リアリティありつつも過剰に見せすぎない。
監督曰くあえてセリフで書かず、あえて映さなかったことが多いとか。演出力すんごい…
同性愛が犯罪とされ、宗教色の濃いモロッコで自由に生きることの困難と希望を描いたとてつもなく尊い作品でした。
色とりどりのモロッコタイル、瑞々しいオレンジ、
砂っぽい土壁、大浴場の天井から差し込む光、
ぐつぐつ煮立ったタジン鍋の湯気。。
行ったことのないモロッコに思いを馳せ、守り続けてほしい伝統と、変わるべき因習を考えさせられる価値ある一作です。
青く美しいカフタン
カフタンって何?伝統服なんだ。とても綺麗で職人の技が生きている。モロッコってどこ?中近東あたり?いやいや、北アフリカ辺りだった!初めて知った!無知の知!いろいろ勉強になった。ミナの壮絶闘病の跡や痩せ細っていく背中、女の業をまざまざと見せつけられるのは、圧巻。
妻の大きな愛の話ってだけではない
同性愛が犯罪となる国で、夫がゲイであることをミナはいつから知ってたんだろう。ハリムがミナを人として愛しているのは本当だけど、ただ女として性的にみることができないからセックスのシーンはとても苦しそうで見ていてもつらかった…
もちろんミナの愛はすばらしいけど、美しい面だけではなくて嫉妬も妬みもするドロドロした感情も包み隠さず表現している点がよかったと思う。
三角関係のピリピリした状態が、ミナの病状の悪化により3人の関係が言葉で簡単には言い表せないほど深く強固なものになっていく過程がとても丁寧で、ミナのやせ細り変わり果てた姿を見て感情の行き場をなくして泣き崩れるユーセフの姿は胸にくるものがあった。3人で踊るシーン、本当に大好き。この瞬間が永遠に続けばいいのに、って初めてかみしめるように思った。
夫婦愛の結晶
モロッコの民族衣装カフタンの仕立職人ハリムとその妻ミナの夫婦愛を描くドラマ。
ハリムは実はゲイなのだがイスラム社会のモロッコではそれを大っぴらにすることができず、ずっと胸に秘めてきた。そんな2人の店に若い職人のユーセフが現れ、2人の関係が揺れ動くが……
ミナは重い病を患っているが、高額な治療費を嫌い、何もせずこれも神の御心と粛々と受け入れている。
夫はそんな妻を女性として傷つけてしまってきたことを悔やみつつも、献身的に看護し続ける。そんな静かな夫婦の形がじんわりと胸を打つ。
ミナはカフタン職人としての夫を尊敬していて、夫の仕事を安く買い叩こうとする客には毅然とした態度で追い返すことも。
そんな夫が心血を注いだ見事な青いカフタンの行方が、この作品のクライマックスでもある。見事な夫婦愛の結晶として結実する様は感無量。
色んな愛が感じられる仕立て屋を題材にした作品。 本年度ベスト級。
美しい映像を期待して鑑賞。
出だしの民族衣裳のカフタンの生地の美しさに引き込まれるものの、思ってもみない方向に進むストーリー。
終わってみれば愛に溢れた素晴らしい作品だった。
登場人物はカフタンの仕立て屋を営むミナとその妻のハリム。
その仕立て屋で働く事になるユーセフの3人。
この3人それぞれの愛が感じられる。
仕立て屋の妻、ハリム。
自分的にハリムは全ての事はお見通しだった感じが切ない。
仕立て屋の旦那、ミナの妻に対する献身的な行動も良かった。
この3人が仲の良さを表現する食事や、肩を動かすダンスのシーンが印象に残る。
ラストで3人だけで歩くシーン。
カフタンを着た姿に泣けた。
その後の本当のラストシーン。
これからどうなるのか?
気になります( ´∀`)
柔らかな色彩、カフタンの光沢
ミカンのオレンジ色、土色の街。
いろんな質感の中で、すべすべとしたカフタンの生地が美しく艶めく。
カフタンが丁寧に紡がれ、仕立て上げられていく時間と同じだけの時間をかけて、いろんな形の愛情が、絆が、穏やかに紡がれていくのをじっと見守っているような鑑賞時間。
ミナはどんどんやつれていくのに、笑顔が弾けるように明るくお茶目で、だんだん神々しく見えてくる。
自分ならどういう感情になるだろうかと、推測するしかできない描写に困惑し頭を巡らせていると、ふいに3人それぞれの決意と選択がまっすぐに伝わってくる。
理解する、ということそのものを追体験しているような気持ちになる。
笑顔は相手のためにできる最大限の愛の形なのかもしれない、と思った。
生々しくも美しい作品だった。
モロッコの片隅で
モロッコの生活の一部に、洋服の仕立て屋がありそこでの出来事100%の作品です。
主人公3人がほぼ映っているので、短時間でもこの三人への感情移入は、自然と入ります。
カフタンという伝統的なドレスの美しさと
どことなくローマ帝国にも似た雰囲気
そして、バート・レイノルズ風の主人公に会いたいようでしたら
おすすめです。
まだまだ世界は広い
自分では幅広く様々な作品に触れたいという気持ちはあるのだが、この歳になると見る映画がやはり偏る。
プロじゃないので見る本数は上映本数に比べ圧倒的に少ないし、その中で厳選していくと自分の好きなジャンルや監督などにどうしても偏っていく。これはまあ、誰しも仕方ない事ですよね。
でもたまには気分を変えて、一端の映画ファンを自称しているのだからと、ミニシアターで全く知らない監督の今まで見たこともない国の作品でも見てみようと本作を選びましたが、それでも事前にネットで予告編は見たし、2022年・第75回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に出品され、国際映画批評家連盟賞を受賞という情報だけは入れて臨みました。
で見た感想ですが、タイトル通りまだまだ世界は広く知らない才能に溢れているという事の確認だったように感じました。
予告編での映像タッチである程度の作風のトーンは予想できましたが、初めての監督作品に接する時の独特の緊張感が観終わるまで続き、それが映画好きにはタマラナイ感覚でもあるのですよね。
内容的には冒頭で私の苦手な恋愛映画であったり、今流行りのLGBT作品かなと思ってしまいましたが、そういう側面も含みつつ所謂そうした単純な恋愛映画やLGBT作品とは一線を画す作品に仕上げられていたので驚かされました。さすが「ある視点」部門に出品されるに値する、既存概念を越えた作品だったと思います。
冒頭にモロッコという国は、戒律でも法律でも異性愛は禁じられているというテロップが入っていて、その国での生活状況が想像でき、それが主人公の生き方を縛り付け、ラストに喪服に対する戒律を破る行為そのものが、本作の核となるテーマになっていて、恋愛やLGBTを超えた“純愛”(人間愛)を描いた作品に昇華されていました。
本作は全編美しいのだが、特に(だからこそ)本作の主人公三人が窓辺で外から流れる音楽に合わせ踊るシーンは至福の美しさでした。
共に歩む
予告編を見て抱いたのはハリムとユセフのめくるめく世界を描くのかな?だったのですが、良い方向に裏切られました。ミナとハリムの関係をどう言えばよいのだろうと考えたのですが、共に「過ごす」でも「暮らす」でもない。かと言って「生きる」もちょっと違うような、二人の間に愛は存在しているのですが、互いに心の中にしまっている何かがあって、それをぶちまけてしまうと破綻してしまうから言わずにいる、それでもリスペクトし、いたわり合う。
そして、今までは頑なに若い弟子が入ってきても「すぐに出て行ってしまうよ」と告げていたミナですが、ユセフの飾らない真っ直ぐな人間性に気付き、ハリムがこれから共に歩む相手と認めたところから3人がとても素敵な間柄になり得たように思いました。
最後まで台詞が少ないままでしたが、メインの3人は瞳に誠実さ・優しさが表れていて(時には失意や怒りも)善き人がそこに立っているのだということがビンビン伝わってきました。
それにしてもカフタンのなんと美しいこと!生地からして美しいのに、そこに人の手が入るともう宝石のようです。ペルシャ絨毯もそうですが、彼の地方の手仕事は素晴らしいですね、まさに一生モノ、一度はこの目でそして手に触れてみたい。
カフタンを作るハリムとユセフの手の動きや所作も綺麗でしたが、ミナが祈りを唱えるときに動く人差し指はまるで宙にあるカフタンに刺繍を施しているかのようで印象的でした。
人生独りじゃないよ、共に歩む人の存在は心を豊かにしてくれるのだよと再認識させらられる、そんな良作に巡り会えました。
仕立て屋の1cm
モロッコでアラブの伝統衣装のカフタンの仕立て屋を営む夫婦とそこで働き始めた青年ユーセフの話。
父親の後を継ぎ手縫いに拘りカフタンを仕立てる無口ではないけど言葉数の少ないハリム。
夫を信頼し昔ながらの駆け引きの様な会話で接客をする妻ミナ。
働き始めたばかりだけど素質のありそうなユーセフ。
ユーセフにちょっと尖った様な態度をみせることもあるミナだったけれど…もしかしてとは頭の片隅にはあったけれど、そういう話しですか…イスラムの国だけど。
しかしながらそんな背景がありつつも病に伏せるミナと献身的に寄り添うハリム、そして店や2人への気遣いをみせるユーセフの関係や機微をみせていくドラマがとても温かく優しく素晴らしかった。
ちなみに、モロッコは一夫多妻婚OKでしたよね…ってことで、そういう意味での倫理観は問わないように。
担い手の才能・努力と享受者の存在が必要な伝統。守るべき伝統ならその伝統の中に不幸な人を作ってはならない
美しい布と糸と刺繍、縫う手指の動きをカメラが丁寧にアップで追う。私もタフタの布を触っている。みかんの香りと味と瑞々しさを私もミアと味わう。潮騒をハリム、ユーセフと一緒に私も聞く。
強く頼もしい仕事仲間である妻のミアを見つめるハリムの眼には、美しく複雑な悲しみがある。深く広いミアの愛は全てを受け止めて背中を押してくれた。
オープニングとエンディングのチェロの音色が美しい。映画の中で聞こえる子ども達の声、子どもを叱る親の声、街のざわめき、賑やかな市場。通りから流れてくる音楽。家の中の水の音。少ない台詞、説明しない台詞。全体をほとんど映さず細部を映す。静かに寡黙に大切なことをたくさん語ってくれる映画だった。
だからカンヌ作品は観逃せない
私が現在のように映画鑑賞を「趣味」にしたのは2014年くらいからです。当時はまだ監督はおろか、俳優すら知識が殆どなく、海外の映画を観ていて「キャストの見分けがついてない」ことすらありました。それが徐々に認識して名前を覚え、興味を持ち、調べるようになると映画のデータベースやレビューサイトにもアクセスするようになり、ジャンルだけでなく、製作国などにも興味の幅が広がって、行き着けば映画祭・映画賞の受賞作品などに触れる機会が増えてきます。
ただ、その中でも「カンヌ」にはしばらく苦手意識があった気がします。おそらくそれは、観慣れない国が舞台のことが多く、言葉・文化・宗教など多くの解らないことに触れて「自分レベル」と卑下するふりをして逃げていたのだと思います。ところが、慣れてくると「知らない世界」を観られる楽しみに気づいたり、解らないと思っていた先入観を捨てるだけで、映画の中の登場人物が自分と同じようなことを悩んだり、幸せだと思っていることに共感でき、そして喜びを感じることが出来ます。
今作の舞台はモロッコ。モロッコは大西洋と地中海に面した北アフリカの国で、ベルベル文化、アラブ文化、ヨーロッパ文化が融合していることで有名です。(ただ、観ている最中は正直途中までトルコかどこか?と思っていましたw)そして、題名にもある「カフタン」とはゆったりとした丈の長い衣服のことで、 近東諸国やイスラム文化圏で着用されていた民族衣装に由来します。
モロッコで結婚式衣装としても用いられるような「複雑で美しい手刺繍」を施したカフタンドレスの仕立て屋を営む夫婦ハリムとミナ。最初のうちは観ていて二人にやや「とっつきにくさ」を感じますが、そう感じるのは二人ともに言葉数が少ないから。ただ、観ているうちに気づくのは、二人ともしゃべらずとも目は雄弁に語っていて、お互いが敢えて言葉にしないだけで相手を強く想っていることが感じられます。さらに、二人の店に使用人として関わりはじめるユーセフがまた真面目さ、誠実さ、優しさなどが強く感じられる人物で、その魅力に強く惹かれる気持ちが解ります。
反面、特にミナの「議論さながらの接客」は、彼女の負けず嫌いさを感じ、観進めて後半における「彼女が闘ってきたもの」と「乗り越えて赦してきたもの」を知ることで、なるほどと頷けます。特に彼女の華奢な背中、そしてその「背中を向ける意味」に驚愕するのです。
そして、後半から最後の展開にみるハリムの行動は「そうなるだろう」と思って観ていますが、改めて魅せられるミナの美しさと、ハリムの決意の顔が忘れられません。
以前は解らなかったカンヌも、今はある程度多くの映画を観てそれなりに理解できるようになると、若干通ぶってるかもしれませんが「だからカンヌ作品は観逃せない」と思ってしまいます。心洗われます。
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