「生理的欲求を満たすことと愛情は別」青いカフタンの仕立て屋 かばこさんの映画レビュー(感想・評価)
生理的欲求を満たすことと愛情は別
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手作業でひとつひとつ丁寧に刺繍を入れる美しいカフタン。
生地を行き来する指がなまめかしく息遣いが聞こえそう。
映画は艶めかしさに満ちているが嫌らしさがない
ミナとハリム夫妻に子がいないのはそれか。
でも、愛し合っているからお互いに折り合いつけて生きているのでしょう。
夫が肉体的な欲望を満たすのは生理的なもので、妻への愛情に取って代わるものではないと分かっているから夫のハッテンバ通いも妻は見てないふりをする。
そこに若い美男子の弟子が加わって、妻がヤキモチ焼いたりするが、結局彼が善良で誠実な人間であることが分かり、自分亡き後の夫を託すに相応しいと決めて、3人で「家族」になろうとする。
彼らは血は繋がっていないが同質の魂を持っていると思う。
モロッコは戒律が緩いのだろうか、女性がヒジャブを着けずに外出できるし、男性ばかりのスポーツパブに入っても大丈夫。ミナだからかもですが。そして男性同性愛者も、公衆浴場が男性同性愛者のハッテンバになっていたり。
こんなのが着たかったと言った妻の希望を汲んで、発注した客が支払いせず引き渡しを止めた極上の青いカフタンを着せてやる夫だが、婚礼は無理だったがせめて葬列では美しい高価な衣装を纏わせてあげたかったんでしょうけど、死んでからでは遅いよ。
男二人が愛情深く思いやりがあるのは、幼い頃から苦労して他人の機微が分かるからかも。苦労は人を悪くもするが、深くもすると思う。
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