「担い手の才能・努力と享受者の存在が必要な伝統。守るべき伝統ならその伝統の中に不幸な人を作ってはならない」青いカフタンの仕立て屋 talismanさんの映画レビュー(感想・評価)
担い手の才能・努力と享受者の存在が必要な伝統。守るべき伝統ならその伝統の中に不幸な人を作ってはならない
美しい布と糸と刺繍、縫う手指の動きをカメラが丁寧にアップで追う。私もタフタの布を触っている。みかんの香りと味と瑞々しさを私もミアと味わう。潮騒をハリム、ユーセフと一緒に私も聞く。
強く頼もしい仕事仲間である妻のミアを見つめるハリムの眼には、美しく複雑な悲しみがある。深く広いミアの愛は全てを受け止めて背中を押してくれた。
オープニングとエンディングのチェロの音色が美しい。映画の中で聞こえる子ども達の声、子どもを叱る親の声、街のざわめき、賑やかな市場。通りから流れてくる音楽。家の中の水の音。少ない台詞、説明しない台詞。全体をほとんど映さず細部を映す。静かに寡黙に大切なことをたくさん語ってくれる映画だった。
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ニコラスさんのコメント
2023年6月22日
コメントありがとうございます!ミカンを剥くハリムの指先に優しさを感じました。
それと窓の外から聞こえてくる音、おっしゃるとおり良かったです。生きている息吹を感じました。