劇場公開日 2025年2月14日

「エリザベス1世を育てた聡明で勇敢な女性」ファイアーブランド ヘンリー8世最後の妻 ゆり。さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0エリザベス1世を育てた聡明で勇敢な女性

2025年2月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

ヘンリー8世って名前だけは聞いた事あるなと思ったら、シェイクスピアの戯曲でした。読んだことはありませんが、それだけ有名な人物という事なんですね(恥)
歴史に疎いので調べたら、16世紀イングランドテューダー朝の君主。後継者はエドワード6世、メアリ1世、エリザベス1世で、そこでテューダー家は途絶えます。

ヘンリーは暴君と呼ばれ、6回の結婚のうち2人の妻は斬首されています。本作は6番目の妻キャサリン・パーの夫との命がけの駆け引きがスリリングでとても面白かったです。キャサリンは最後まで人生を諦めずに自らの手で運命を切り拓きました。

ヘンリーは国内の勢力争いや周辺国との覇権争いにより、確固たる地位を築く為には男子の世継ぎが必要と考え、結婚・離婚を繰り返し、ローマ教会と対立してイングランド国教会を創設しました。豪奢な生活を好み、インテリであったそうですが、金の使い過ぎで国は窮乏、晩年は非常に好色、足を怪我した後は暴飲暴食で肥満体になり、独善的で側近を何人も処刑し、次第に孤立していきました。
ジュード・ロウの熱演が見事で、暴君になり切り、体重増加のほかに、足が腐っていく状態を、臭い液を付けて演じました。周囲の人間が息を止めている様子がリアルです。
アリシア・ビカンダーも中世の絵のように美しく、過酷な状況で気丈に振舞う妃を演じています。

本作は史実を基に想像を膨らませて創作したものです。当時の女性の立場が非常に弱く、常に男に蹂躙されていた中で、運命に抗って未来を勝ち取った女性がいた事を訴えています。

ただ、ヘンリーが暴君だった事は間違いないですが、特に女性を物のように扱ったのかは分かりません。メアリの母は夫と対立して追放され、エリザベスの母は政治に介入しすぎて処刑され、エドワードの母は出産後に死亡しています。協議離婚した人もいます。
キャサリン・パーは継子のエリザベスとエドワードを可愛がり、立派に育て上げた人物として尊敬されているそうです。

ゆり。