「迷ったら負け、真実はカラフルなインコだけが知っている」ファイアーブランド ヘンリー8世最後の妻 Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
迷ったら負け、真実はカラフルなインコだけが知っている
2025.2.18 字幕 TOHOシネマズ二条
2023年のイギリス映画(120分、R15+)
原作はエリザベス・フリーマントルの書籍『Queen‘s Gambit』
実在の人物キャサリン・パーのヘンリー8世との結婚時代を描いた伝記映画
監督はカリン・アイヌーズ
脚本はヘンリエッタ・アシュワース&ジェシカ・アシュワース&ロサンヌ・フリン
原題の『Firebrand』は「扇動者」「火付け役」という意味で、原作の「Gambit」は「優位に立つための先手」という意味
物語の舞台は、16世紀のイングランド・テューダー朝
暴君として名高いヘンリー8世(ジュード・ロウ)は、これまでに5人の妻を追放、処刑などを行なって、次々に取り替えていた
1番目の妻との間にできた長女メアリー(パッツィ・フェラン)、2番目の妻との間にできた次女エリザベス(ジュニア・リース)、3番目の妻との間にできた長男エドワード(パトリック・バックリー)は侍女たちに支えられてきたが、6番目の妻キャサリン(アリシア・ヴィキャンデル)が来たことによって、彼女が面倒を見ることになった
キャサリンはプロテスタントで、カトリック教会の司教ガーディナー(サイモン・ラッセル・ビール)は快く思っておらず、彼女自身もトマス・シーモア(サム・ライリー)と言う恋人がいて、この結婚は不本意なものだった
ある日のこと、ヘンリーが出かけている隙を見て郊外に出たキャサリンは、そこで旧友のアン・アスキュー(エリン・ドハティ)と会うことになった
アンは急進派と呼ばれる宗教家で、ラテン語の聖書を英語に翻訳して、誰もが直に聖書とふれあえるようにしたいと考えていた
神と自分の間に人が入ることで、それは純粋な神の言葉ではないと考えていて、それは教会を貶める思想だと思われていた
司教はアンとキャサリンの関係を疑っていて、宮廷内にもその思想を持ち込むのではと恐れていたのである
映画は、ヘンリー8世の横暴ぶりを強調し、それに耐える妻と言う構図になっていた
これまでの前妻への所業を考えれば、いつどんな理由で殺されるかわからない
そんな折、トマスとキャサリンの関係がヘンリー8世の耳に入り、「身籠った子どもは誰の子だ!」と激昂され、それによって流産してしまう
さらにアンとの関係を示す証拠も見つかり、キャサリンは逮捕されてしまった
だが、ヘンリー8世の病状は次第に悪化し、最期の時が近づこうとしていたのである
どこまで史実を知っているかで評価が分かれる映画で、ラストの「アレ」は物議を醸しそうだなあと思った
彼は55歳で亡くなっていて、肥満によるものと、馬上槍試合における負傷の悪化とされているが、「アレ」は結構斬新な解釈のような気がする
訳もなく殺すなら、訳もなく殺されることもあるわけで、キャサリンは生き残るための「覚悟」を持っていた
ヘンリー8世がそれを持ち合わせていたかはわからないが、有無を言わせずと言うところもあって、その瞬間を「アレ」にしちちゃうのは中々「覚悟」があるなあと思った
いずれにせよ、暴君極まれりと言う感じで、忠誠を尽くす方がすごいなあと思うものの、権力にしがみついていた方がお得な時代だったのかもしれない
その後、彼の娘たちが結構なことをやらかしているので血は争えないと思うのだが、そのあたりは別の映画で確認しても良いと思う
華奢に見えるキャサリンに「アレ」ができるのかは置いておいて、人はその気になれば何でもできるんだなあと思った