劇場公開日 2025年2月14日

「「歴史」に埋もれた女性に命を与える」ファイアーブランド ヘンリー8世最後の妻 talismanさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0「歴史」に埋もれた女性に命を与える

2025年2月16日
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鑑賞方法:映画館

怖い

興奮

知的

歴史といったら戦争や革命の様な「大きな」出来事と男性権力者を追うことだった。美術史も音楽史も文学史も映画史も男性中心だ。でも多くの才気溢れる素晴らしい女性が沢山いたことはもうかなり以前からテーマになっている。でもまだまだだと思う。とりわけビッグな男性権力者の周囲に沢山いたはずの女性は男性の「ビッグ」さに隠れてしまい見えなくなってしまう。ヘンリー8世はその最たる「ビッグ」人物の一人だろう。

最後の妻は殺されなかったということだったのでは!?とフライヤーから得た情報があったのにどうなるんやー!と最後までドキドキした。

特徴的に刈り込まれた庭園の木々、イギリスの荒野、屋内の光と影、衣装の布の質感、豪華な宝飾品、食事、犬や鳥、ひそひそと或いは大声で話す、歌う、踊る、全てのシーンが美術館で目にする絵画の一枚一枚のようだった。

ジュード・ロウ、ヘアメイクに加えてよくあんな巨体に!目で彼だとちょっとわかった位だった。自分のスペアを生む存在が妻の役割、ガンガンと人を殺す恐ろしく怖いヘンリー8世でありつつも、女好きでなんとなくキュートで寂しがりでキャサリンを本当に愛していたヘンリー8世が見え隠れしたのはジュード・ロウだからだと思う。アリシア・ヴィキャンデルはイギリスの寒々しい空気の中で無表情に近い顔であることが殆どでまさに当時の肖像画風、コスチュームものにとても合っていた。

キャサリンは知的で賢く優しく子供たちにも使用人にも愛された。聖書の言葉と自分の間には何も介入させないというルターの考えを自分のものにしてその考えを隠さず皆と分かち合い、親友の伝道師アンを支援した。古典語も当然のごとくできたキャサリンは聖書の英訳に励み娘にも翻訳や書くことを教え自分も著書を出している。ヘンリー8世は当時まだマイナー言語だった英語の地位を高めて重要言語にした人、と言われるが、この映画を見ると、貢献したのは異端とされたアンやキャサリンやエリザベスなどの知性溢れる女性達なのではないかと思わざるを得ない。事実とフィクションの線引きがわからなくなってくる。でもどこかで人間の真実に触れている作品だと思う。

talisman
映画LOVEさんのコメント
2025年2月19日

コメントや共感有難うございます、tariさんのレビューで観たいと思いまして…今日観に行ってきます。

映画LOVE
ノーキッキングさんのコメント
2025年2月18日

今日観たのですが、読んだ話と大分違いますね。まあ伝統的に“歴史を作ってしまう”国なので、しょうがないのかも。シェイクスピアなんかでも市井の戯作者ではなく貴族だったという説。shake(振る)+spear(槍)というペンネームで貴族にしか絶対分からない事を書いているのが根拠らしい。ジュード・ロウがぶよぶよケツなんかだして……レビューにならなかったです。

ノーキッキング