PERFECT DAYSのレビュー・感想・評価
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リアルじゃないけど、どこかリアルな映画。
観る前に、オチの無い、観てスッキッリするタイプの映画では無いことは感じていたので、がっかりすることも無く、伏線回収を期待すること無く、映像の良さや演技の上手さ、この監督の巧さに集中しながら飽きることなく観れました。面白かった。
前半、平山さんの毎日のルーティンを何度も観せられるんだけど、それがなんでかわからないけど、良くて。
あれ家の鍵閉めないのって、オートロック方式?地味に気になりました。
後半にいくにつれて、、おやっ?っていうシーンがいくつかあって。それが観終わった後に、「あれはなんだったろう……」ってなる。
例えば、姪っ子と自転車に乗ってるけど、2台も自転車あったの?とか、お互いに好意を持ってそうだった飲み屋の女将さんと男が抱き合っているのを目撃した後に平山さんが川でお酒飲んでるところにその男が現れ元夫で余命も短いから会いにきたんだと告げられるとか、、。ちょっとリアルなようで、リアルからズレている。希望的観測をこめた平山さんの妄想??とか思ったり。
本当は妹や姪っ子に会いたいけど会えないのがリアルなのかなと思ったり。
あと、毎晩見ているぼんやりした白黒の夢とか。窓のカーテンを全開で寝ているとろとか。随所随所に、「ただ淡々と毎日を自分なりに楽しんで生きている男」以外の要素が散りばめられていて、何かあって精神的に不安定になったような訳あり過去とか、そんな人生の影を抱えながら生きている様子を勝手に感じさせられる。
あとから考えると、平山さんの表情が全て語っているような気もして。
本当に役所広司さんの演技力が凄くて、本人ですよね、平山さんていますよねって、思うくらい。
観終わった後に、残ったのは、ほんのちょっとだけ恐いというか、狂気じゃないけど、もっとあったかいでもちょっと重い何か。あの日々のルーティンは平山さんの心の平穏を守るためなのかもしれない。
最近はこういう映画より明るくても暗くてもわかりやすい映画をよく観るし、こういう映画は好きじゃない時もあるけれど、この後に残った感じ、なんか分からないけど嫌いじゃないという。
論理的には考察できない感じ。やっぱり監督のヴィム・ヴェンダースさんと俳優さんの上手さが凄いなぁと思う映画でした。
トイレ清掃員の行き方に共感
古びたアパート、でも部屋の中はきれいに整頓された様子から主人公の几帳面さが感じ取れます。公園で見つけた植物を盆栽として育て、毎朝霧吹きで水をやることを怠らない。
朝は食事を取らず、缶コーヒーだけ飲んでトイレ清掃に車で出かける。
車の中では1960年代、70年代の懐メロをカセットテープで聴く。個人的に印象に残ったのは、オーティス・レディングのドックオブベイとアニマルズの朝日のあたる家だった。
昼は公園でサンドイッチを食べ、見上げた樹木の木漏れ日をオリンパスのフィルムカメラで撮る。隣のベンチには同じようにサンドイッチを食べるOL風の女性もいて顔見知りとなるが、特に会話はしない。
夜は地下街の定食屋でお酒と一緒に食べる。アパートにはお風呂がないので銭湯に行く。寝る前には読書する。
休日は自転車に乗って仕事着等をコインランドリーへ洗いに行く。その間、石川さゆり似のママがいるスナックに寄る。古本屋に行って本を買う。店主のおばさんは必ずその本について一言コメントする。カメラ屋にフィルムカメラの写真を受け取りに行き、同時にフィルムを買って帰る。家に帰ってその写真を整理する。気に入らない写真は捨て、気に入ったもののみ残して、アルミケースに入れて押し入れにしまう。押入れにはいくつものアルミケースがきちんと並べられていて、ここでも彼の几帳面さが伺える。
子供を見ると顔が微笑んだり、姪に優しい面がある一方、施設に入居している父親とは何があったかはわからないが、うまくいってないようで、妹が頼んでも会いに行こうとはしない頑固な面もある。
毎日が同じことの繰り返し。でもそのことの尊さを学びました。
平凡で何気ない毎日だけどそれでいて素晴らしき日々
現代プロラタの最高傑作
大切なものを見つめなおす機会になる。変わらないなんてバカはことはない。
同じ1日は存在しないし、同じ木漏れ日は2度とない。そんな日常の中にいるからこそ、変わらない静かな日を慈しむことを忘れてはいないか。また、誠実な人間は他者から信頼される。じぶんからもとめることはせず、話しかけることすらなくとも、同僚からも姪からも思い人の前夫からも即座に信頼される。それは誠実に生きてきた人間が獲得する年輪でありオーラである。平山は自分のロールモデルになった。
毎朝空を見上げたくなった
東京でアパート暮らし、早起きしてトイレ掃除の日々。綺麗な映画セット用トイレだけ撮影されいたけど、実際の現場、もっと強烈に不衛生でしょ?
綺麗な木とトイレ
単純な内容…特別なことは起こらない。いや、特別なことをしているのにそう感じないだけだし、単純そうに見えて、複雑なのだ。自分で何を言ってるのだろう。矛盾ではなくて、見る角度によって異なるというだけで、下手に言葉にしないほうがマシかもしれない。
一般庶民の日常をピックアップしていて、風呂で過ごす姿も、眠っている夢の中までも覗き見する。しつこく何日も、休日まで密着取材。
映画の主人公のいつものルーティンを覚えてしまう。
いつになったら映画が始まるのだろうと思いながら結局最後までプロローグのような、最初からエピローグだったのかもしれない。
劇中の登場人物よりも、つい観ている鑑賞者側のほうが雄弁になってしまいそうになる。黙って観てるだけでは退屈だから、それもあるが、コミュニケーションが愛しくなるとも言える。そして、本当の主人公は鑑賞者である自分のほうだということに氣付くのであった。
4対3のサイズでも、じゅうぶん良い映像だったし、東京のロケ地も、じゅうぶんファンタジー世界のように美しく素敵であり、見応えがあった。
孤独じゃないひとりぼっち
ず~っと昔 NHKの新大型時代劇で武蔵を演じた時から役所広司のファン。
渡辺 謙 に先を越された感があってもやもやしていたのだけれど、大きな賞をいただいて本当に良かった。
静かなドキュメンタリーのような作品。
カセットから流れる楽曲に90%心奪われる 人生に何があったんだろう
孤独だと思えば何も見えない
ひとりぼっちでも 見るものすべてが愛おしいのは孤独じゃない
だから この主人公は孤独じゃない と強く感じる
ただ この作品 役所広司が演じてるから 共感できる部分があるけど
普通の年相応のおっさんだったら わたし どうかな
素晴らしきルーティン
ここまで感情移入出来た映画は久しぶりでした。
まず音楽趣味が合いすぎる、それだけで私はこの2時間が
至福でした。ロードムービーを若い頃カッコ付けで見ていました、分かったようなことを語ってました、そしてロードムービー程退屈な物はないと言ってた時もあります。
でも今またこの映画が刺さってしまいました。
私自身が職種は違えど似たようなルーティンの深夜勤をしているからでしょう。ただ私は1人ではなく家族がいます。家族が居るとここまで好きには出来ません、少し憧れながらも実際にはきつそうだし、色んな感情が揺れ動き、正に最後の主人公の表情をなぞるように見ました。
主人公の過去等がほぼわからないのがいいです。勝手に想像出来る余白がたっぷりあるので。
心静かに過ごせる場所や時間を手に入れるにはそれ相当の犠牲が必要なのだ。
路地を履き清める箒の音に目覚め布団を畳む。歯を磨き顔を洗う。そして夜明け前の空気を吸いこむ。まるで産まれたての赤ん坊のようの笑みが浮かぶ。しかし初老の域を歩きはじめたばかりの男。さあ、映画を始めるぞ!そんなことを言いたげな眼差しは晩秋の風の匂いのように少し悲しげだ。スカイツリーを間近で見上げることが出来るのは押上かな?イマジネーションが亀よりは優れた僕にもわかった。場所がらにこれ程似合うアパートはないだろうと思わせるところ憎い。どぶさらいのあとの消毒液が臭ってきそうだった。こんな風にこの映画は始まりそして静かに終わる。日々のやるべき事が決まっている暮らしには穏やかな空気が流れ誰も近づけない。好きなものは一体何か、好きな場所はどこなのか、好きな人は誰なのか、しかもどれもコレも必要で最小限。多くを抱えたりしない。そんな心情がどれほどの豊かさを人に与えてくれるかを教えてくれた。そんな暮らしを手に入れるためにどれほど辛酸をなめたのかはわからない。そんな謎を解き明かさないまま映画は終わる。中途半端さが許されるのは役者のせいなんだろう。
巨匠復活
帰る日常のある人の強さ、靭さ
主演・役所広司。
監督は『ベルリン・天使の詩』のヴィム・ヴェンダース。
【ストーリー】
東京の下町に独り住む、無口で実直な初老男の平山。
公衆トイレの清掃人の彼は、毎日変わり映えのしない仕事を、道具を自作するなどして、熱心に取り組んでいる。
一見変哲のない日々には、だけどさざ波のように心震わせる出来事が起きていて、小さく、ときに大きく、平山の日常を動揺させる。
音楽は平山が自分の車でかけるテープ、居酒屋でママの歌う演歌といった、生活に密着した自然なものだけ。
起伏のないストーリーですが、カット割りのリズムがよいので退屈はしません。
音も都会の自然音を多用して、シーンの味わいを強めてくれます。
音楽のセレクトもセンスいいですね。
シャレてて滋味のある、古いロックやポップス。
平山の歩んできた道のりを、わずかずつ見せてくれる感じで。
役所広司の笑顔も、純粋でいい。
この歳でこんな笑い顔ができる俳優という存在の、偉大さに心が震えます。
わき役で好きなのは、本屋のおばさんかなあ。
幸田文とパトリシア・ハイスミスを、一言でピュッと評するあの語り口がいい。
解決しようのない人生のさざ波が、くり返し平山を動揺させ、そしてそれをただ日常をすごすことで受容れる。
完璧ではない一日また一日を、完璧にするための平坦な作業。
ルーティーンを黙々とこなす人の、これが強さなのだなと教えてくれます。
とても美しい映画です。
きれいで退屈な映画
この映画から何かを感じ取れるほどの賢さや感受性?みたいなものを自分は持ち合わせてなかった。
植物を愛し、読書を欠かさない実直で育ちの良いおじさんが、トイレ掃除に勤しむ日常。
こういう職業を描く時に、元はエリートだった事を匂わせるのって、ステレオタイプと言えるのではないか。
それはいいとして
いくら良い人でも、挨拶しない人は好きじゃないな。(出来ない人ではなく、しない人、する時はする)
役所広司は素敵だし、映像もきれいだけど
出てくるトイレは今時の東京のオシャレなトイレで
汚れも、落ちてるゴミも、掃除するのに躊躇しないレベルのもの。
自分が接客業時代に経験した、ぶちまけられたゲロや大便、脱ぎ捨てられたパンツはもとより、「便所の落書き」すら出てこない。
ロマンチック?な〇×ゲームが始まる始末。
きれいな人が、きれいな人向けに作った映画であって、自分のような汚れてしまった人にはおすすめできない。
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