PERFECT DAYSのレビュー・感想・評価
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うーん、いまひとつスッキリしない。
ヴィム・ベンダースが描く外国のシーンはなんかオシャレで好きです。
が、日本人なので今回の作品はいまひとつスッキリしませんでした。
作品の合間に定期的に流れる夢なのか木漏れ日なのかよく分からない映像。
神社から持ち帰った苗に毎朝水をかけてるけど、苗がそんなに成長してないリアリティの無さ。
缶コーヒーのプルタブを開けるのが早すぎるとこ。
三浦友和が河川敷に突然現れて「私は癌です」と告白した後、平山と影踏み遊びをする不自然さ。
ニコを迎えに来た妹を平山が唐突に抱きしめるシーンはそこはあえて抱きしめない方がよりリアリティがあったのではなかろうか?
と、つらつら細かいことを挙げて批判してきましたが、全体としては良作だと思います。
飲み屋の大将の仕草や古本屋の女性店主のコメントは思わずほっこりさせられました。
音楽と東京の風景も良かったです。
あと、最後に一言だけ。
トイレ掃除する時、マスク着用は必須ではなかろうか?
え?「お前はいろいろうるさい」って😆
木漏れ日のような光と影の素晴らしさ
トイレ清掃員の日常を描いたヒューマンドラマ。どこにでもいるような平凡な男の日常の姿だけで引き込まれるのは主演の役所広司に魅力に尽きるのではないでしょうか。木漏れ日のような光と影にの素晴らしさを表現している良作です。
2023-210
光と影にこだわったカメラワークと何気ない日常を映画として描く監督の力量
トイレ清掃員の日常という、一見地味なテーマも、監督の力量でこんな素晴らしい作品になるんだなーというのが率直な感想。
まず、光や影、日常の何気ない風景の中のきらめきというか、美しい瞬間を、役者の演技とともに切り取るカメラワークが素晴らしい。
何気ないけど、相当考えて撮ってるんだろうなと思わせられる。ヴィム・ヴェンダースが東京を撮ると、こうなるんだ、という目線で見るのも面白かった(余談ですが、首都高の走行シーンって、海外の監督は好きですよね‥)
ただカメラワークだけじゃなく、ストーリーも良かった。
近所のおばちゃんの竹ぼうきの音で毎朝目を覚まし、トイレ清掃の仕事をしながら、趣味の読書や写真、そして音楽、銭湯、行きつけの飲み屋に通う日々。
孤独だけど、ちゃんと生きる楽しみを持っている主人公と、それに関わる人達。トイレ清掃の仕事の後輩、姪っ子
、そして妹との関わり。
なぜ今のトイレ清掃の仕事に行き着いたのか、その根本に、父との確執があった事を匂わせるシーンがあって、涙が‥
ほとんどセリフの無い役所さんの演技が素晴らしい。
誰が相手か最後までわからないけど、トイレの鏡の隙間に挟まれた紙の上で日々、○×の陣取りゲーム?が繰り広げられていくという、サイドストーリー的な要素も良かったし、
それと飲み屋のママ役が石川さゆりと、豪華!ママの生歌が聞けるなら、そりゃ通っちゃうよね〜。
見ていて暖かい気持ちになれる良い映画でした。
「完璧な1日」の再発見
役所広司さんがカンヌで主演男優賞に輝いたことで、年の瀬から新年にかけて国内で最も注目を集めている作品と言えるのでは。
役所さんの本作での芝居に関しては、他にもたくさんその凄さを見せる作品があるので、日本の映画ファンにとっては「?」と感じるところもあるかもしれません。ただ、ラストで見せる悲喜交々の表情を同時に見せる芝居には唸らせられます。このシーンが海外でも評判になっていたようです。
主人公の平山は渋谷の公衆トイレの掃除が仕事。仕事のある日は決まった時間に起き、決まったルーティンで仕事に出かけ、仕事後の銭湯から夕食、寝る前の読書まで、ほぼ決まった毎日を送り、休日も掃除や洗濯、買い物など毎週ほとんど変わらない生活を送っている。そんな男の日常の中に、”PERFECT DAYS (=完璧な日々)の要素がいくつも描き出されていきます。
まるで「こんな幸せもあるよね」と語られているようで、ストレス社会に生きる人や、生活に刺激が無いと感じている人たちに救いを与えてくれているようです。
恥ずかしながらヴィム・ヴェンダース監督の作品は『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』しか観たことがなく、監督がそうした「救い」を描くことを意図していたのかもわかりませんが、「何もないような日常こそが完璧な一日なのでは」というメッセージを感じずにはいられませんでした。
あと魅力的だったのは主人公が毎朝の出勤中にカセットテープで聴く音楽。60-70年代の洋楽が中心で、本当にうまい選曲。特にアニマルズやパティ・スミス、ルー・リードがフィーチャーされ、個人的には大好物です。ヴィム・ヴェンダース監督によると、主人公の平山が聴く可能性のなさそうな曲は排除すべく、かなり入念に曲選びをしたとのことですが、やはりマニアックな曲もあり「いや、多分聴いていないでしょ」と突っ込めそうなところもありましたが、いずれにしてもサントラは買いです。
海外でも話題になっている作品ということで、本作でロケ地となった渋谷区内の公衆トイレはロケ地巡りの聖地にもなるかもしれませんね。ただ、登場するのは"The Tokyo Toilet"のプロジェクトで設置されたおしゃれな公衆トイレばかりなので、海外の方には日本の公衆トイレが全てこんなにキレイなトイレであると勘違いもされそう(海外に比べれば比較的どこもキレイではありますが)。本当はもっと一般的なトイレが出てきた方が作品をリアルに感じられたのかもしれません(本作は元々同プロジェクトがきっかけで生まれた作品なので、仕方ないところもあったのかなとは思います)。
他にもなぜ、現代ではを描いた本作を4:3で撮ったのかなど細かい疑問もありますが、とにかく印象に残る、観て良かった作品でした。
生きること自体アナログだ
仕事納めの日にTOHOで
終業と同時に年末最後の挨拶もそこそこに
18:05開始の回に滑り込み
鑑賞ポイントが6個たまってロハが嬉しい
ヴィムベンダース監督の作品は
大昔に観た夢の涯てまでも以来
人が寝ている時に視る夢を映像にするといった話
東京国際映画祭に絡んでいて
当時ノリノリだった監督で期待されたものの
酷評されて興行的にも大コケしたような記憶
で本作は結論としては今年観た中では上位に入る良作
アナログ男の真骨頂
序盤に繰り返される男の日常
(平日)
・外の道路を掃くほうきの音で目を覚ます
・歯を磨く
・髭を剃り整える
・霧吹きで盆栽に水をやる
・仕事着に着替える
・玄関でカギと小銭を持って外に出る
・空を見上げる
・自販機で缶コーヒーを買う
・車に乗り込む前に蓋を開けて乗ったらグビリ
・車でカセットを聞く
・仕事のトイレ掃除を真面目にやる
・昼休みに神社のベンチでサンドイッチと牛乳
・木漏れ日をオリンパスのフイルムカメラで撮る
・ときどき新芽を盆栽用に持ち帰る
・銭湯に行く
・駅地下の一杯飲み屋で酎ハイとつまみ
・床に着いて文庫本を読みふけって眠る
(休日)
・作業着をコインランドリーで洗う
・古本屋で1冊100円の文庫本を買う
・DPE店で写真を受け取りフイルムを出し
代わりのフイルムを1本買いカメラに装填する
・出来上がった写真を観て気に入ったものだけ缶に入れて
残りは破り捨てる
・小料理屋で女将と話しながら一杯飲る
こういうのが幸せだよなぁとしみじみ共感
そういうルーティンが乱れる
・同僚に金を貸す
・姪が家出してきて自分のアパートに泊まる
・同僚が突然辞める
・同僚の後任が来る
・麻生祐未とか三浦友和
それによって生じる心の揺らぎも拒否しない
全編に流れるアナログ愛
スクリーン画面の縦横比が3:4のブラウン管仕様だし
カセットテープとかフイルムカメラとか
いまの世の中でアナログでいることは実は結構贅沢で金もかかる
DPE店で2~3千円くらい出していた
主人公が就いた仕事がトイレ清掃であることもアナログだ
デジタルだなんだといってもものを食べて排泄する行為はなくならない
生きること自体アナログだ
普通はトイレ清掃人に浴びせられる心無い言動や蔑視を殊更クローズアップして
怒りや憐みを喚起する表現をしそうなものだがそうならない
主人公は穏やかに微笑む
主人公が目覚める前に視る夢のような映像は
不穏なようで実はそうでもないような
夢の涯てへのセルフオマージュのような気がした
実は名家の跡取りでオヤジと仲違いして家を出たような過去を示唆
結婚しているのか 子どもはいるのか
最後の涙の意味もよく分からなかった
分からなさ加減も気にならない 色んな人の解釈を聞いてみたい
エンドロールの最後に木漏れ日についての説明が出てくる
二度と同じものは見れないと あぁなるほど
余白が多いいい映画だ これから気づくことがまだあるかもしれない
(ここから映画と無関係の記録)
終了後はドンキで第③ビール2本を買い込み駅のベンチでグビリ
屋根があり風がしのげて大層気分よし
家に戻って風呂に入って2次会 仕事納めはいい日になった
優しさ・強さ・孤独・切なさを感じました
日常を大切に思う
少しセンチメンタルで、
でも、いっぱい温かくて、とても優しい気持ち。
起きた時に、木漏れ日を見た時に、空を見上げた時に、
笑顔になれる平山って素敵だ。
そして、ラスト、平山の泣き笑いに尽きると思った。
最初のトイレ清掃から帰ってくる車中のシーンで、
なぜだか泣いちゃいました。
悲しさとは違って、音楽のセンチメンタルさも加わって、
涙中枢を刺激されてしまったみたいで...。
なんで泣いてんねんって、心で自分にツッコミ入れた。
でも、音楽って悲しい曲じゃなくっても、歌詞がわからなくっても、
泣いてしまうことあるよなー。そんな選曲が上手い!!!
サウンドトラックも最高だったなー。
普段は、役所広司さん、顔圧が強すぎて、少し敬遠してしまうんですが...。
カンヌで男優賞を取ったのも納得の平山さんでした。
渋谷のトイレで、押上の道端で、ひょっこり会えるんじゃないかと。
そして、ラストの泣き笑いの顔は、本当に素晴らしかったです!
なんだか、これを打ちながらも、思い出して泣けてきちゃいます。
あのシーンを見ながら、
欲張らずに、一日一日を、その時間時間を大切に思おうっ!て、
そんな気持ちにさせてくれて、なんだか幸せだなーって思った。
あと、ヴィム・ヴェンダースさんの影の使い方や、
光の加減や、色味がとても心地好くて好きだなー。
間の取り方とか、セリフの感じとかも、同様に心地よく、
小津安二郎監督を思い出させる部分もありつつ、
監督の作品らしさというか外国っぽさというのかなー、
きちんと主張されていて、さすがのヴィム・ヴェンダース監督!!
ポスターもカッコ良い!色彩感覚が違うのかな…。
また、78歳という年齢に驚いたんですが、年齢なんて関係なく、
才能って枯れるどころか、どんどん、磨かれていくのですね!
まだまだ、これからも監督の作品がたくさん観たいです!!
2023年の映画納めに最高の作品に出会えました。
ありがとうございます。
布団を畳む所作だけで心に刺さる映画
東京の公園のトイレ清掃業務を生業とする男の毎日を描く。
朝目覚めからの一連のルーティーンだけで心に刺さるものがあるのは
この映画がはじめて。
布団を畳む所作が美しい。いや、彼のすべての所作が美しい。
住んでいるアパートもはっきり言ってボロだが、
部屋は整然としている。
彼の毎日を淡々と描きながらも、
少しだけいつもの違う、心がゆれる出来事が起きるのだが、
最後は穏やかな形で終わる。
同僚の男にお金を貸したことと、その彼が別の少年に好かれていること。
カセットテープを盗まれながら、返してもらい最後はキス。
突然の姪との同居と、妹との再会。
同僚の突然の退職による多忙なシフトと、翌日のヘルプの女性。
居酒屋女将の元夫の出現と、彼との影踏み。
1つ1つのエピソードが優しい形で終わる。
そして、映画を観て、優しい気持ちになれた。
これかなり好きだわ
同じような毎日にちょっとだけのゆらぎ。平凡な日常を繰り返し見せられているのに、なんでこんなに時間を忘れて観入っているんだろうな?と不思議な気持ちになる映画でした。
それにしても役所さん演じる平山氏のなんて可愛らしい事。やけ酒チューハイ3缶と吸い慣れないタバコ買う姿にキュンとくるわ。
私は家事のマイルールが強すぎて、「起きてすぐ布団をたたんで重ねると湿気が…」とか「顔拭いたタオルがヨレてるの直したい」とか「畳の掃除の大雑把さ…」と、どうでもいいところで気になってしょうがなくなり集中が欠ける事多々あり。
平山氏も私とはまた違う強いマイルールがあるんだろうな。彼の過去に何があったのか具体的にはなんの説明もなかったけれど、生きづらさを抱えてきた人である事はよくわかる。
今年最後の映画をこの作品で締められたのはとても良かった。
贅沢な余白…静かに残る余韻
これは夜に観たい作品。
これを見て、余韻に浸って、ベットに横になって眠りにつきたい、劇場からの帰り道そんな風に感じた。
ヴィム・ヴェンダース監督はこれまでも東京の風景を作品に収めているが、これまでで一番優しく映しているように感じた。(ここまで東京にスポットをあてた作品が初めてだからかもしれない。)
誰にでも秘密や問題を抱えている…だけどそれを解き明かすのではなく、そっと日常を追う。
それがどこか心地よい所以かもしれない。
淡々と続く日常
忘れたくない作品になりました
ヴィム・ヴェンダース監督が東京を舞台に素晴らしい作品を残してくれたことに感動しました。
人生、生活‥それは木漏れ日のようなものなのかもしれません。影で覆い尽くされた日常に一瞬差す光。そこに喜びを感じることこそ、生きていく上で大事なのだというメッセージがあったように思います。
大きな事件もなく、淡々と過ぎて行く日常。お金はないけれど、楽しむ術はたくさんある。この作品を観ていたら、部屋を掃除したくなったし、古本屋に行きたくなりました。
僕らは色々なものを欲張り過ぎているのでしょうね。このシンプルな生活に憧れを持ってしまいました。
それにしても役所広司さんの演技は素晴らしい!凄い!ラストシーンの涙と微笑みのバランスは、今考えてもゾクゾクします。
忘れたくない作品になりました。
期待と不安
ヴィム・ヴェンダースというフィルターを通して見た日本って一体どんなふうに映るんだろう・・・期待と不安に胸膨らませて鑑賞に挑みました。
前半は布団を畳んだり銭湯や相撲のTV中継のシーンが何度も出てきたりして、日本を舞台にした外国人監督の作品によくありがちな、滑稽な日本文化をこばかにしたような映画の類のように思え落胆。正直、一体何を伝えたいのか理解できず不安が的中といった印象。
ところが、中盤以降から派手ではないけれどいくつかの下世話な事件が勃発し始め、無機質だった映像に役所広司さんの豊富で絶妙な表情が散りばめられていきどんどん人間臭さとその温かみが増していきます。個人的には、終盤の三浦友和さんとのからみが圧巻で、生きていることへの哀愁と幸せを改めて気づかせられた気がしました。
結局、私にとっては期待通りというかそれ以上に印象深い作品になりました。それは外国人といった我々と違った視点で我々の日常を表現することによるギャップによるものなのか、もしくはヴェンダースの研ぎ澄まされた感性によるものなのか、今日一度観ただけでは整理しきれていません。多分ずっと気になると思うのでまた時間をおいて観なおしたいと思います。いずれにせよ、まだ観られてない方は肩ひじ張らず平常心で観ていただくことをお勧めします。
木を見るように
おしゃれ映画は このレベルでやって欲しい
オープニングの画でもうやられちゃうね。「参りました」って感じになる。
そこからのカットが全部、工夫が入っていて綺麗。
紫の使い方とか、陰影とか、ほんとすごいね。
ストーリーが動き始めるまで、画の綺麗さでもってっちゃう。
役所広司演じる平山の毎日を淡々と撮ってくの。
日々を淡々と観せてく感じがジム・ジャームッシュ監督の《パターソン》に似てると思ったな。
毎日をきちんと、淡々と過ごす平山に感情移入ができるのは、なんでなんだろうね。
この人が、静かな毎日を送れるといいなと思ってしまう。
そして平山はもてる。近づいた女の人は、例外なく、平山に好意を持っているように見える。
役所広司はうまいね。台詞が少ないこの役を、やり切れる役者さんは、そんなにいないと思う。
ヴェンダースが役所広司を撮った作品と言ってもいいね。
キャスティングも良かった。
石川さゆりにママ役やらせるの凄いね。歌も《天城越え》とかで狙ってこないサラッと感がいい。あとOL役の長井短よかったな。
ちょい役で安藤玉恵とか色んな人出てくるけど、その中に芹澤興人がいて『この面子に入るってすげえな芹澤興人』と思ったよ。
三浦友和とのシーンでは『がん患者に酒すすめちゃ駄目だろ』とか面白いんだよね。
ここからラストにいくのも良かった。
ラストに流れる曲が《PERFECT DAY》なのかな。歌詞が分かったら、もっとくるんだろうなと思ったな。
平山は毎日写真を撮ってて、休みの日に現像出してフィルムを買うんだけど、そのフィルムがHOLGAなの。白黒のHOLGAって、そんな簡単に買えないと思うんだよね。その辺に写真家・ヴェンダースのこだわりがあるのかなって思ったよ。
東京の景色は毎日観てて、そんなに映えるところはないと見過ごすけど、ヴェンダースの手にかかると映えてくるね。敢えて、狙った画を作らなくても、すごい画になってくる。
「どうして日本に住んでる人が、この画を撮れなかったのか」と思ったけど、首都高まわりは1998年にホンマタカシが《東京郊外》で撮ってるから良しとしよう。
おしゃれな画で引っ張りたいなら、ヴェンダースぐらいやって欲しい。でも、無理なの。ヴェンダースは写真家としても一流だから。
ヴェンダースにはかなわないだろうけど、そのレベルを目指して、綺麗な画の映画が出てくるといいな。
善き人 善き生き方
観終わっていつまでも余韻に浸っていたいと思った
日本の善き人の心象をこの監督はどうしてこんなに精緻に普通の日常から描けるのか
日本に親しみがあるとか、日本映画に深い敬意を持っているとか、そのような次元を超えて異国人でありながら凡人には知り得ないこの文化、風土への理解力を示してくれたように思った ただし監督が異国人であることは首都高や東京の街並みの映像が翻訳されて目前に映し出されることで疑いもなく感じ取れるのではあるのだけれど。
その理解力は平山の夕食の店主とのやりとりや銭湯で一人静かに享受する開放感や居酒屋で幸福のうちにいただく酒のうまさの切り取り方に無駄も無理もなく描かれていた
そしてそれは、この国において、正しく美しく生きる善人の姿を等身大で捉えていたように思った
私はNHKの72時間というドキュメントを観てしばしば胸がいっぱいになる
それは正しく生きている方々の日常を垣間見せていただくことで自分の心の在り方を正さなければという衝動に突き動かされるためだ
この映画はフィクションだからこそ純粋に、強く心を揺さぶられたのだと感じた
善き人として生きたいと思う
作家映画というよりブランド映画?
多分今年最後の劇場鑑賞作品ですが、さて何から話しまょうかねと少し迷ってしまう様な作品でした。
ヴィム・ヴェンダース監督って私には初期の名作しか記憶が無くて、どんな監督だったのか?、どんな映画を見て感動したのか?そうした問いかけに対して即答できない監督なので、嫌いではないが自分の中で消化しきれてない監督の一人なのでしょう。
本作も見終わって、嫌いではないし、鑑賞中も色々な事を考えたし、良い映画だとも思いましたが、感想となるとなにを言ってよいのか難しい作品ですね。
例えば、海をずっと眺めている人がいたとするじゃないですか。そういう人の頭の中って百人いれば百通りで、人それぞれに全く違う事を考えているのと同じで、この映画も多分そんな海を眺めている様な作品なんだと思いますよ。
ただし、映画サイトのレビューの高評価を見てしまい意地悪な見方になってしまったのですが、本作ちょっとお洒落過ぎの様な気もしましたし、本当に分かっているのかね?って気分にもなってしまいました。
よく村上春樹の本を出版されたら直ぐに、カバーもせずにこれ見よがしに純喫茶でお茶をしながら読書している2~30代のサラリーマン的な、ちょっと軽薄な感じも重なってきましたからね。
音楽の使い方もカッコイイしお洒落だしねぇ~(笑)
本来、この物語の設定と役者の演技には見る者によって全く違った感情を呼び起こすだけの複雑さを含んでいる筈なのに、通り一遍の絶賛レビューが並んでいるのを見てしまうと、ついそんな疑念を抱いてしまうのです。
私はたまたま主役の役所広司と同学年なので、本作の主人公の平山も同学年と仮定して見ていたのですが、今の自分が平山の境地に達することが出来るのか?を考えると答えは「無理」でしたね。60代後半にあの仕事であのシフトはキツ過ぎて、現実的には90%無理だと思います。あと、この年齢ならではの高齢の親の面倒という宿題があり、平山の様な生き方はかなり例外的なものであることは間違いない。
しかし、平山の生き方(スタイル)に対してこれほどに共感する社会とは、現実の日本人を眺める限り考え難いし、感想なども美化し過ぎの様な気がしました。
作品に共感・感動するのは勝手ですが、実際に彼の様な生き方に誰も憧れていないから今の日本(人)がある訳でしょ。
なので日本人の私にとっては作品そのものよりも、気軽に絶賛する(日本人)鑑賞者に対しての疑念を呼び起こす作品であったようです(苦笑)
まあ、日本好きの外国人監督が作ったのだから、当然日本に対しての敬意やら、自分の感じた日本の特質などを真摯に描こうとしているのは理解出来ましたし、この作品の根底にある哲学的な「幸福とは」についての示唆するモノに対しても賛同できるし、決して反対するものではありませんでしたが…
平山という男の日常
ユナイテッドシネマ浦和にて鑑賞🎥
平山という男の日常を淡々と描いていく映画だが、少しずつ外的要因に影響されて若干の生活パターンの乱れも見られるものの、ひとりの男の生活ドラマが上手く描かれていた。
しかし、渋谷あたりには「変わったトイレが色々ある」ので、外国人などが本作を観ると「日本にはいろんなトイレがあるんだな…」などと思わないだろうか?😄笑
舞台となっているのは、平山の住むスカイツリーが見える下町、平山の働く渋谷のトイレなどであり、いかにも「今」を描いているのだが、平山は車で音楽聴くのに「カセットテープ」!
懐かし過ぎ…🤗
普段の生活での「仕事終わってからの一杯とメシ」・「フィルムカメラ撮影」・「寝る前の読書」などが繰り返して描かれるのは、平山の日常ドキュメンタリーっぽくて良かった。
この映画で平山は家を出る時や昼食の時に空を見上げるが、役所広司は「普段は空は見ません。映画撮影中の天気待ちの時は見る程度」らしい。
このあたりは、ヴェンダース監督の演出なんだろう。
年末ギリギリになったが、今年の日本映画では佳作の部類であった✨
日本ではごく普通の初老男性の日々...
想像するに若い人や海外の方々から見るとこの生き方は物珍しく新しく見えるのかも知れない。還暦をとうに過ぎて年金貰いつつそれでも働き続けている身にとってこの主人公の生き方はいわばデフォルト、多少の差があれ似たり寄ったりの生活、文庫本を古本屋やブックオフで買うか図書館で借りるか、カラオケスナックのママなのか食堂のママなのか、毎日のレモンハイか自宅での一合の酒か、皆とは言わないが誰しもが何らかの埋めきれない喪失や敗北感を抱えつつも音楽、世代的にはロック、で鼓舞しながら生きていく。この映画の救いは姪っ子の存在とスナックママとの微かな希望。なんと言っても役所さんだからどう転んでもモテない訳が無い。そこにまだ希望が有る。さて我々一般初老の男達はどうか?と言うと皆さんそれなりにUpgradeしながら満喫されていますよ、大きな喪失をたとえ抱えながらでも。何故ならそれが生き残って居る自分の宿命で有るから。
全901件中、621~640件目を表示