PERFECT DAYSのレビュー・感想・評価
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何度も見返したくなる
説明過多な作品が多い中で必要最小限の情報提示で充分に想像できる演出が心地良い。平山というひとりの人間のドキュメンタリーのようでもあるしロードムービーのような趣きもある。
特に大きな何かが起こる訳でもない。でもずっと同じ日々が続くこともない。変わらなければいいのにと思っても変わっていく。その変化は些細なものであっても、光と影のようにゆらめきながら反射角を変えながら人生を照らす。木々のこもれびのように感情の機微がそこにはある。
どれだけ正確にルーティンをこなす日々を送っても、完璧な日なんてない。いろんな変化が訪れる。その陰影を噛み締めながら、泣いたり笑ったりしながら過ごしていく。むしろそんな起伏ある人生こそがパーフェクトデイ。
それにしても監督はよほど役所広司が好きなんだろうなぁ。愛が溢れている。それにしっかり応えている演技もさすが。
この先、何度も見返したくなる映画。
朴訥なトイレ清掃人を描いた木偏の映画
カセットテープを取り出すから『これはどれぐらい昔の話だろう?』と思っているところに、スカイツリーが楔(くさび)を打ち込んできて、『そうきましたか、それも想定内』と踏ん張っていましたが、激渋銭湯に古めかしい雨合羽と追い打ちは激しい。
しかし時代遅れの古い物に囲まれているからといって古風な人というわけではありません。朴訥な人です。そう「朴訥」という言葉がぴったりです。
そういえば朴という字は木偏。
調べてみますと(ChatGPTのコピペです)
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「朴訥(ぼくとつ)」の「朴」は、木の一種である「ボク」または「クス」を指します。この木は比較的地味で質素な印象があります。そのため、「朴訥」は、物事や性格が飾り気がなく、素朴で質素な様子を表現する言葉となっています。
朴訥な性格は、装飾がなく控えめで真摯な態度を指し、無駄な飾りがない、素朴で地道な性格を表す言葉として使われています。この言葉は、単に地味であるだけでなく、その素朴さや真摯さに美点を見出すという意味合いも含まれています。
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ですって。
平山さんの生活をみて、このように過ごしていたら日々なにが変わるだろうかと考えたら、部屋に並べているあの鉢の木の成長と、古本の冊数と写真の缶ぐらい。静止物の代名詞みたいものが逆に変化の焦点となっている妙が、いつしか思考の沼にはまっている自身を自覚させられて、『一日を生きた中身は、なにから作られて、なにに宿り、なにに刻まれるのでしょうか』と、途方もないところへと誘(いざな)われます。
便器を磨いていても、すなわち自身の日々を磨いているようで、「何をするか」ではなく「どう迎え入れるか」、自身の内側が大切なんだとルーチンなシーンごとに反芻しました。
幸田文の「木 (新潮文庫)」、読んでみようかなと図書館を当たりましたら、蔵書100万を超す図書館でも蔵書してませんでした。日の当たってないところに目をつけてくれました。さすがです。
そう見えるだけ。
孤独は自分には合わないかも
日常を見る
やっと見る事ができました。役所さん含め全ての登場人物の過去や理由を語られる事なく、ただ、日常を切取り、良いこともあれば、悪いこともあり、時々ドラマティックな日常を丁寧に描かれていた。不思議と2時間飽きずに見れた。最後の涙の意味は僕にはわからないが、芝居に釣られ感動させられる。
静かな日々
boring days
役所広司や三浦友和、柄本時生などが出ているので何とか観ていられた。
何回歯磨きするんだろう、何回缶コーヒー買うんだろう。
フィルムの現像にあんなにしょっちゅう支払うならデジカメやスマホが買える。
コスパもダイパも悪い暮らしが延々と繰り返されて。
朝日のあたる家など、時おりかかるカセットテープの曲だけが変化を呼び起こすような似たような毎日。
本人が満足しているので悪くは無いんだけど、いらちな関西人には倍速どころか3倍速でちょうどいい。
久しぶりに長く感じた映画だった。
日本の生活は丁寧に描けていて違和感はなかったが、姪っ子や妹の麻生祐未とハグするシーンは違和感を感じた。
日本人はあの状況でハグしないけどなあ。
姪っ子が海に行こうって言ったらいつかはいつか今日は今日、じゃなくて今すぐ海に行けよ!たった今だよ。
そういうパッションのある映画が観たいよ。
海で姪っ子と水の掛け合いするよ。それが人生じゃないの?なんて退屈なんだろうか。
俳優の演技の上手さだけが印象に残った。
同じトイレを扱うなら、黒木華と池松壮亮のせかいのおきくは、排泄物の汚いところもとことん描いた上で、人々の様々な感情が楽しめたなあと思いながら鑑賞していた。
あと、田中泯さん出すならもっと見せ場を。曲に合わせて踊らせてあげて!もったいない。
死にゆく他人さんの三浦友和にハイボールやピース奢って影踏みする暇があったら、もうボケてしまった父親の見舞いぐらい行け!
運転しながら泣き笑いしてる場合じゃねーぞ。父親死んじゃうぞ、過去に何があったか知らないが。
まあ、君の生き方、10点満点で言ったら1点ですかね。
良くできた日常映像化作品とは思うが…。
人生の広大な山や深い谷、豊穣の地も荒れ野も歩いてきた(っぽい)静かに前向きな男の、平坦かつ深イイ毎日をほぼそのまま(と言うか監督の見せたい部分の繰り返しとその僅かな変調幅)映し出した定点ロードムービー‥
あれ?俺凄いな、高遠な映像詩作品を説明し切ってしまったぞ。でも決して単純とか浅いと言いたいわけでなく、本作は極めて静かながら均整の取れた映像進行と物語進行が美しく?、昨夜寝不足にも関わらず見ていて全然眠くなりませんでした。役所さんの演技所作は(台詞あんまり無い中で)自然で、助演の皆さんも上手いです。さゆりちゃん(子供の頃ファンだったので、すみません)が出てきて歌い出したのにはビックリしましたが、上手くまとめてました。
でも、よく知る東京の市井の風景と入ったこともある公衆トイレをかのWim Wenders監督が話の舞台として撮ったのだから、芸術的な特別感と親しみとが混じって映画を超楽しめるかと期待していましたが、やはりそうでもなかった。新しいと古いが混在の東京風景にしろ時代最新のトイレや面白いがフツーの日本人たちの詩的映像にしろ、監督の狙い通りに楽しめるのは、専ら日本(人・文化)をちょっと〜かなり知っている知的外国人さん達であり、本作品はそんな方達(だけ)向けの「平凡だが美しく深い日常描写映画」ではないでしょうか。私などには日常過ぎ・普通過ぎ・深すぎであまり味わえませんでした。
きっと、場所に特異的な映画はそういったものなのでしょう。私は昔、Sofia Coppola監督の「Lost in Translation」を観て退屈かつなんか東京が馬鹿にされてるだけの映画のように感じ極低評価でした。
今改めて考えると、そんな私が本作監督の「Paris,Texas」をなんか良く分からないが高評価していたのは私が日本人であり、東京は物珍しくなくとも米国テキサス州の未知の風景は新奇で楽しめたという部分が大半(あとは主演女優の美しさ→好みの違い)だったのかな〜
などと本作と全く関係ない思索をしてしまった次第です。
まあそんな訳?で本作は良く出来てはいるので、芸術的感受性や哲人度が高い方(皮肉ではありません自虐です)、海外または日本国内でも東京を異境の地と感じている方には良作たり得ると思います。些か支離滅裂失礼しました。
良い視点
東京のトイレに注目することと、
光と影の影のほうに注目することが
印象的だった。
最初はわかりやすいはなしだなって
あまり響かなかったけど、
姪との再会とか、
癌の男などのシーンで、
すごく涙溢れてしまった。
平凡な日々でも、
1人でも愉しくても、やはり感情を揺さぶらしてくれるのは、
人と人との関わり、繋がり、コミュニケーションなのではないか。
としみじみと。
ルーリードの"パーフェクトデイ"の曲が流れたタイミングが、女の子にチュウされたあとだったところも、すきだったな。浮き足立ってる主人公を彷彿させた。
この映画に感動するのって、つまりは禅とかBuddhaの精神が自分に流れてるからかなと思う。
上流側が何となく日本の下流はこんな感じかな?で作った感じ 全てが綺...
救われました
若い頃から、どんなに酷い状況でも孤独よりはマシだと思っていました。また、人間はただ生きるためには生きられず、どうしても付加価値を求めてしまうのだという一種の諦念を持っていました。
歳を取って孤独であることには賛否両論あると思いますが、この映画はそれだけに収まりません。朝、玄関を出て空を見上げる主人公の嬉しそうな表情がそんな議論を吹き飛ばしてくれます。
自分が今、生きていることへの感謝の気持ち、それを絶えず感じて一日一日を生きている主人公の様が、孤独の淋しさや強がり、どうしても付加価値を抱いてしまう悲しい素性を綺麗に掃除してくれます。
何故ならそれは、人間が己の想像力で獲得した他の誰のものでもない、己自身の叡智だからです。
歳をとり、こころも錆びつき、未来に恐怖しかなかった私の感覚もまた、きっちり掃除してもらいました。感謝しかないです。
美しすぎて胸いっぱい
観たい気持ち半分、観て悲しい気持ちになったら嫌だなぁと避ける気持ち半分で、遅れて今頃観た。後悔しかない。もっと早く観ればよかった!
映画は木漏れ日を愛する男、ヒラヤマの部屋の朝から始まる。
修行僧の部屋か、監獄か、と思うほど禁欲的な何もない部屋。手狭な和室にあるのは必要最低限の家具と本とカセットテープレコーダーだけ。
暗い中、ボロボロのアパートで黙々と仕事の準備をするヒラヤマ。トイレ掃除の道具を満載した軽自動車に乗り込み、カセットテープ(!)をかけ100円の缶コーヒーを飲む。でも不思議と悲壮感がない。
彼は黙々とトイレを掃除する、一生懸命に。やけでもなく、逃げ込む風でもなく、絶望感もなく。
日々巡りあう人々や出来事、天気、空、緑、風を味わい、心から幸せを感じる。彼の周りには不思議な空気が漂う。
個性的な人々が現れ、何か展開するのか?と思うとそうでもない。彼がこの仕事についた経緯も明かされるのかと思いきや、触れられない。伏線のようで伏線でもない。彼の生活の様々なシーンが、カレイドスコープのように散りばめられている。
同僚の彼女は、行きがかりでヒラヤマの車に乗り、彼の音楽テープを気に入り盗んでしまう。そして返しにきたという名目で車に乗り込み、頬にキスして去る。せつない。。
音楽の趣味は、意外に人の本質や心のひだまで写したりする。あの見た目、仕事、車、なのにあのテープ!惚れる気持ちもわかる。
そういえば学生時代、男子が好きな曲を集めたテープを渡してくれたりすると、告白されたくらいの起爆力があった(趣味があった時限定)
突然訪ねてきた年頃の姪に、ヒラヤマは、
「家出するなら叔父さんちって決めていた」と言われる。
大人として最高の賛辞ではないか。
ヒラヤマの周りにはいい女が集まってくる。いい香りの花に集まる蝶のように。
繊細でピュアな精神を持つ彼女たちは、もがきながら物質的な世界に生きている。
そんな苦悩はとっくに超越したヒラヤマの潔さ、繊細さ、慈愛の心に女達は打たれる。
地味で、オシャレの片鱗もなく、いわゆる負け組的仕事・住まい、ややコミュ障?
そんな世間のカテゴリーも評価も知りながら、ヒラヤマはその中に生きない、絶望していない。
ヒラヤマは、木漏れ日をモノクロのフィルムカメラでファインダーも覗かず撮るのが趣味。現像後出来を確かめ、NGと思えば破って捨てる。その日の光と風と葉とシャッターの気まぐれによる一期一会。モダンアート⁈ただものではない感が滲み出る。
ヒラヤマのポケットにはいつも古本の文庫本が入っている。TVのない部屋には本がぎっしり。彼の精神性、哲学は静かなあの部屋で本達と培われたのかもしれない。
感情をみせないヒラヤマが、ただ一度あつくなったことがある。姪を迎えに妹が来た時だ。
センスのない社長車の後部座席に座り乗り付ける妹、ヒラヤマの感性と違いすぎる。支配階級の家の出だとわかる。ヒラヤマと父との確執もチラリ。別れの時、ヒラヤマは万感の思いで妹をハグをする。愛していたけど、自ら家族から距離をおいたのだろう。
圧巻は、石川さゆり扮するスナックのママの元旦那(ガンで余命わずか)との川辺のシーン。
「影って重なると濃くなるんですかね」「何もかもわからないまま終わっていくんだなぁ」「あいつをよろしく(×2)」
のしんみりセリフからの、
二人で体の影を重ねてみたり、影ふみしたりのクレイジーなおじさん二人に、涙腺崩壊。
夜明けに仕事に向かうヒラヤマは、いつものようにテープをかけ車を走らせる。
世界を肯定するように一人笑顔をつくる。その目には、おさえてもおさえても涙が溢れる。目だけで語れる役所こうじ、さすが。
静かな映像、ストーリーなのになぜこんなに力強いのか。心を別次元に連れて行かれた。日々溜まっていたモヤモヤやストレスもどこかに吹き飛んでしまった。
2023年の映画のマイベストです!
平山は妖精かな?
鑑賞後思ったこと
最近映画鑑賞後、レビューを書く頻度はめっきり減った 他の用事もあるし、一番はなかなかに自分の理解力が追いつかないことがある。
この映画も約2週前位に鑑賞したが、あのビンダースの作品にしては分かりやすかったものの、「なぜ今?」という思いが勝って書く意欲はわかなかった 結論私は好きな部類の作品ではあるが、どこか今の日本とはかけ離れたこの映画のシチュエーションは心に何かしらのわだかまりとして残ってはいる
好きなシーンは木漏れ日のシーン・パンを食べる神社境内のシーン、そしてなによりラストシーンの運転しながらの表情で人生を現す役所さんの見事な演技です
こんなに好きな作品なのに、ひっかかるのはシンプルに生きるその姿を肯定するようでいて、その背景はないことになってしまっている点。点描だけなら今の日本(あるいはTOKYO)は外国人の方から見たら不思議な素晴らしい光景にみちみちているのかもしれない
だがこのエッセンシャルワーカー達の日々の苦悩は素通りのようだ。柄本くん代わりの安藤さん等の背景を描かない分、目ざわりが良い静謐なシーンが続いていく。ここからも今の日本の真の姿を描いているとは思えない?観光映画と割り切るしかないの?
(追加)
案の定 万博トイレ二億円等報道されましたが、こけおどしの「トイレにびっくり」みたいなセンス・観光利用は止めてほしいです
感じたままが正解なのかもしれない
役所広司の最後のワンシーンが肝。
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